天狼院通信

アイデアを生むための武器「パーカー・インジェニュイティ」開封の儀《天狼院通信》


僕の職場、通称「ウォールーム」は池袋にあるんですが、池袋にはLOFTも東急ハンズも無印良品も伊東屋もあって、文具好きにはたまらない街でもございます。

もちろん、本屋もまわるのですが、時間ができると、結構な割合で文具屋に向かいます。

ハンズにも行きますし、無印にも、そして、LOFTにも行きます。

いつだったか、もしかして、もう3ヶ月くらい前になるでしょうか。

池袋西武百貨店に入っているLOFTに行くと、PAKERの万年筆が展示してあって、とても惹かれたんですね。

僕は数年前に小さな書店で店長をやっているときに、ちょうど雫井脩介さんの『クローズド・ノート』が角川書店から発売になって、あまりに面白くて、ひとりで狂ったように売りまくっていたんですね。30坪ほどの小さな本屋で、発売日(確か2月だったと思います)から数ヶ月で、ハードカバーの『クローズド・ノート』を200冊以上売りました。角川さんに聞いたところ、その当時は日本一売っていたそうです。

それも、そのはず、映画化が決まるのは、その数年後の話ですから、どの書店もこの本を仕掛けていなかったのです。いうまでもなく、この本は後にベストセラーとなります。

ともあれ、僕はその本で、すっかり万年筆の虜になってしまい、実際に、新宿の京王百貨店さんで、8000円くらいの万年筆を買ったんです。

 

「万年筆は、その人の書く癖によって、筆先が変わってしまうんです。その人の形になっていくんです。だから、人には絶対に貸さないでください」

 

記憶が定かならば、そういったセリフが『クローズド・ノート』の本文にあったように思います。そして、京王百貨店の万年筆売場の人も、同じように言っていたので嬉しくなったのを覚えています。

 

その8000円の万年筆は、今でも筆入れの中に入っているのですが、有り体にいってしまうと、それから数年して僕の万年筆熱は徐々に冷めていっておりました。

ところが、PAKER(パーカー)に、ふたたび魅了されてしまうことになる。

おそらく、恋に落ちるのと、全く同じ心理的メカニズムが作用したのだろうと思います。

 

一目惚れでございました。

 

とくに、Paker 5th、パーカーが生み出した「第5世代のペン」というのが、書き味が異次元でした。

しかし、少々値が張るので、なかなか、買う決断ができないでおりました。

「そうだ、次の仕事を受注したら買おう」

なぞと先送りにしているうちに、一目惚れしてから数ヶ月が経ちました。

その間にも、池袋のLOFTにはいつも通っていて、そこではこのパーカー5thが誰でも試し書きできるようになっているので、いつも、気が済むまで試し書きして、おりました。

最初のうちは、「いかがですか」なんて店員さんに声をかけられていたんですが、いつも通って、試し書きしているのに買わないから、きっと「あ、この人は買わない人だ」と店員さんの頭の中で選別されたのだろうと思います、最近では一切声をかけられなくなりました笑。

ため息が出るほどに、美しいシルエット。

なんでそんなに美しいのだろうかと不思議に思うくらいです。

しかも、実に、なめらかな、異次元の書き心地。

手に馴染み、ほとんど摩擦なく、思ったことが、そのまま「かたち」となって紙面に表れる。

それは、もう甘美といってもいいくらいの体験でした。

 

パーカー・インジェニュイティを買おうと決断した背景には、そんなに大きなきっかけがあったわけではありません。

昔、野口悠紀雄さんが、たしか初代の『超勉強法』において、こんな表現を使われていたと思います。

 

らくだの背骨を折った、最後の一本のわら。

 

長距離を何度も往復してわらを運ぶらくだの背骨が、ある一本のわらを載せられたときに折れてしまう。しかし、それはそれまでの蓄積や他の多くのわらが原因であって、その一本だけが作用して折れたのではないのに、あたかもその一本のわらが決定的な原因なように見えてしまう。

そう、日々、通うことによって、試し書きすることによって、その日は、ある日突然訪れたのでした。

最後の一本のわらを、強いてあげろと言われれば、手紙を書こうと思ったから。または、10月に自作の手帳をデビューさせるので、その手帳には新しいペンで書いてみたいと思ったから。さまざま、挙げようと思えば、挙げられることでしょう。

パンフレットも素晴らしかった。

 

「手にすることが喜びになる」

「伝統とモダンの融合から生まれた、デザインの新境地」

コピーも秀逸。パンフレットだけでも手元に置きたくなります。

「快適に書くためのさまざまな機能がライフワークを支えてくれる」

すばらしいライフワークになるにちがいないと、想像が膨らむのを止めることができなくなります。

 

その日、僕が池袋のLOFTを訪れたとき、万年筆売場にいた若い女性の胸には、ネームプレートの上に「研修中」というプレートが付けられていました。

けれども、その分、笑顔で懇切丁寧に接客してくれて、僕が「青のインクも試してみたいんですが」、「やっぱり細字も試させてくれますか」と様々注文つけるのにも、一切嫌な顔をせずに付き合ってくれました。

買おうとしていると、

「実は10/6からパーカーのフェアがあって、新商品が出るんですが」

と、教えてくれましたが、心配ご無用です。新商品は同じ技術を使った、ちょっとお手頃価格のラインになるようだという話を聞いて、買うものは変わらないなと思ったのです。

途中で、ふと、僕はあることが気になりました。

「あの、そういえば、このインジェニュイティってどういう意味ですか?」

店員さんの目が、一瞬、点になります。

「あ、ちょっとお待ちいただけますか」と先輩スタッフを呼ぼうとしていたので、「あ、大丈夫です」と止めて、パンフレットをめくってみます。きっとパンフレットには書いてあるだろうと思ったのです。

案の定、パンフレットの3ページ目にこうありました。

 

[INGENUITY]:創意あふれるアイデア、発明品

 

ほんのちょっと、僕は鳥肌が立つ思いがしました。まさに、僕はこういう武器を求めていたのです。

 

買って帰ってきて、すぐに開ければいいものの、僕はなぜか、一晩寝かせようと思いました。熟成するはずもないのに笑。

それで、先ほどようやく封を解きました。

ついにオープンです。

インクは黒の細字を中に入れてもらい、青の細字も一緒に買いました。

いや、この葉巻のような太さが、じつにいい。

そして、いよいよ、書いてみます。

握った感じも、しっかりしていて、ずっしりとした重さもあって安定感があります。

第一筆、何を書こうかということは、ちょっと考えればすぐに出てきました。

そう、これからさき、天狼院書店の1店舗目、「東京天狼院」をオープンさせるために必要なアイデアを、このペンが紡ぎだしてくれるに違いありません。

 

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2012-09-27 | Posted in 天狼院通信, 記事

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