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国籍は人を分けるラベルになる


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記事:藤井佑香(ライティング・ゼミ7月開講通信限定コース)
 
 
「あなたは何人(ナニジン)ですか?」
そう聞かれたら、あなたはどう答えるだろうか? 私は、「日本人」と答える。生まれも育ちも日本だし、日本語を母国語として話している。パスポートも日本のものを所持している。日本人であることは、疑いようのない事実のように思える。
 
しかし、この質問に対して色々な答え方があることを知ったのは、大学に進学した時だった。
私が進学したのは、帰国子女が多い大学だった。広島の田舎から上京した私には、彼らの行動や話し方に海外の風を感じ、全てに憧れを抱いた。しかし、同時に混乱もしていた。彼らを日本人と呼んで良いのか分からなくなることが多かったからだ。
 
彼らの経歴は本当に多種多様だった。長期間海外で生活していたのは勿論だが、中には日本語があまり話せなかったり、日本に住んだことが無い学生も居た。彼らを目の前にしていると、日本の学生というよりは、留学生と一緒に居るように感じることもあった。彼らのことを、私はどう捉えれば良いのだろう? 国籍は日本だったとしても、生まれ育ったのが海外なのであれば、外国人として接した方が良いのだろうか。そんなことも思っていた。しかし、彼らと仲良くなればなる程、答えは出なかった。そしてある時、日本人の母親とアメリカ人の父親を持つ友人が、こんなことを言った。
 
「僕には、今までしっくり来る場所が無かったよ。アメリカに行けば僕の顔はアジア人だと言われる。日本に帰って来たら、外人だと言われるんだ。そんな風に育つと、自分がどこの国の人なのか、分からなくなるし、どこにも所属していないんじゃないかと思うこともある」
 
「何人ですか?」という質問に対して、分からないという答えがあること自体、私は知らなかった。生まれも育ちも日本で、同じような経歴の人に囲まれて来た私には、自分の国籍について、悩んだり、違和感を持つ人が居ることさえ想像が出来なかったのだ。
 
このことについて、より深く考えるきっかけになったのは、大学2年生でアメリカに短期留学をした時だ。留学中に履修した授業で、アメリカの日系人について学ぶ機会があった。その中でも最も印象に残ったのは、第二次世界大戦中の日系人強制収容だ。日本では殆ど教えられていないため、私はこの留学でそのことを初めて知った。戦時中、アメリカの日系人達は強制収容所に収監されていた。日本人移民もいたが、殆どはアメリカ国籍を持つ日系人達だ。自分がアメリカ人であり、自らもそう認識しているにも関わらず、日系と言うだけで監視される環境に身を置くことになったのだという。中には、アメリカへの忠誠を示すため、積極的に軍隊に入った人々も居たそうだ。この史実を学ぶと、国籍についてより考えさせられた。例えその国の国籍を持っていたとしても、見た目やルーツなどで判断されてしまう現実がある。そうなると、帰国子女の友人達はどうなるのだろうか。いくら長くその国に住んでいても、日本語ではなく住んでいた国の言語が母国語だったとしても、本人の意思とは別に、彼らは日本人として扱われていたのだろうか。そうだったとしたら、やっぱり私は彼らを日本人だと思えば良いのだろうか。大学入学以来ずっと思ってきただが、より知りたいという想いが強くなった。私は、彼らに事情を説明した上で、彼らが自分を何人だと思っているのか直接聞いてみることにした。
 
彼らの答えは様々だった。アジア人が少ない地域で育ったからこそ、自分を日本人だと強く認識している友人。一方で国籍は日本だが、住んだ期間が短い日本が母国だとしっくり来ないと言う友人。そして、日本とアメリカの二重国籍の友人がこう言った。
 
「俺は自分を、日本人ともアメリカ人だとも思ってないよ。だって俺は俺だから。自分を国籍で認識することはあんまりない。だって、俺が俺である理由は、国籍じゃなくて今まで培ってきた経験が形作っているものだからね。遺伝子レベルでは人間はほぼ一緒なのに、国籍とか人種とか分けることに意味を感じてないなぁ」
 
彼の言葉を聞いて、ハッと気付いた。私はずっと、海外のバックグラウンドも持つ友人達を何人だと思えば良いか悩んで来た。自分なりに彼らを分けることで、接し方を変えようとしてきた。ただ、それは思いやりではなく、国籍というラベルで無理やり分けようとしていただけだと気づいた。〜人という色眼鏡を通して彼らを見ようとしていただけで、彼らのそのままを見ようとしていなかったのかもしれない。彼らが自分で認識している故郷がどこであっても、彼らは彼らなのに。国籍で分ける必要なんて、最初から無かったのだ。そう思うようになってから、帰国子女の友人たちを何人と思えば良いか、なんて全く考えなくなった。国籍なんてどうだって良い。友達は友達であることは変わらない。
 
私たちは、事あるごとに人を分けようとすることがある。国籍だけではない。性別や経歴、見た目……たくさんあるんじゃ無いだろうか。分けることは楽だ。何より分かりやすくなるし、分けること自体がいつも悪い訳ではない。だけど、そこで作り出されるラベルが、無意識の内に人と関わる時の色眼鏡になり、本質的なものを見えなくしてしまうことがあると思う。まずは、それに気づくこと。気づいた上で本質を見ようとすること。私が国籍で「分ける」ことが出来なかった友人たちから、「分けない」ことの大事さを教えてもらった。
 
 
 
 
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2020-10-11 | Posted in メディアグランプリ, 未分類, 記事

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