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マインドフルネスのその先に見えた星


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:岡田ゆり子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「これから8週間、自分のために毎日45分間、マインドフルネスの練習をすることができますか?」
 
アメリカのとある州立大学の医学部に併設されたマインドフルネス・センターにて。オリエンテーション後、講師と個別面接をした際に、最後に受けた質問だった。私は迷うことなく「はい」と答え、これから受講する8週間のマインドフルネス・ストレス軽減プログラムに期待で胸を膨らませた。
 
マインドフルネスとはウィキペディアによると「今、この瞬間の体験に意図的に意識を向け、評価をせずに、とらわれのない状態で、ただ観ること」であり、それを瞑想やその他の行動を通じて行うことである。
 
その効果として、集中力を高めるとか、判断力を養うということが期待されている。GOOGLE等の大手企業の研修などでも取り入れられていることを知り、以前から興味があったため、本を読んでみたり、独学で実践してみたが、今ひとつ効果が掴めなかった。
 
また、私はアメリカに住んでいるため、母国と勝手が違い、自分の言動が正しいのか不安になることがあり、自分に自信が持てず、いつも何らかの緊張とストレスにさらされているような気がしていた。もしマインドフルネスを通じてストレスを軽減できるのならその手法を学んでみたいと思い、このコースを見つけ迷わず申し込んだ。大学の医学部に併設されているマインドフルネス・センターが主催するプログラムで、科学的根拠に基づいた内容であるということもこのコースを選んだ動機の一つだ。
 
このコースでは、8週間、週に一度、大学のキャンパス内のマインドフルネス・センターに通い、半日掛けて瞑想やヨーガ、その他の行動(歩くことや食べること等)をマインドフルネスに実践する。さらに、ストレスを感じている時の自分の体や気持ちを観察したり、それが体に及ぼす影響等を講義で学んだ。
 
自宅では面接で確認されたように、「毎日45分間瞑想する」という宿題が与えられた。音声のガイドに従って様々な瞑想やヨーガを行った。このように、毎日継続して、自分をケアする時間を取ることが極めて重要で、このコースの肝と言える部分だった。また、クラスでも講師が、「まず、自分をケアすること」を繰り返されたので、それを常に念頭においた。
 
家事や子育てや仕事で、時間に追われるように暮らしている私にとって、45分間を自分のために確保するのは簡単ではなかった。また、夜瞑想を行うと、誘導の音声が心地よすぎて眠ってしまいそうになった。だが、瞑想中は眠ってはいけない。瞑想をしているのか睡魔と戦っているのかよくわからない日々が続き、自分のやり方が正しいのか不安になった。
 
瞑想中は、いろいろな考えが浮かんできた。
昨日の失敗、今日の晩ごはんのおかず、仕事のこと、家族のこと……。
雑念だらけの自分が嫌になった。しかし、脳は考えるための器官であり、雑念が浮かぶのは普通のことで、その事実を受け入れることが大事だということを講義で学んだ。また、マインドフルネスに、できた、できない等の評価は一切ないと聞き、気持ちが救われた。
 
将来の不安や後悔などのマイナスな気持ちが渦巻いて落ち着かなかったという経験が誰しもあると思うが、その不安というものは、自分の思考以外の何者でもないということ、また、自分が生み出した思考は、自分しかそれを取り除くことができないということも学んだ。
 
こうして数週間が過ぎて、5週目の週末に、コースの目玉と言える、終日のマインドフルネス・リトリートの日がやって来た。参加者の対象は、秋季にこのプログラムを受講している人達全員だった。同じクラスの人もいたし他のクラスの人もいた。また過去にこのプログラムを卒業生した人も参加していた。全員で200人位は参加していたのではないだろうか。会場はかなり混雑していたが、同じ志で集まっているからか、むしろ快適な空間だった。さらに、通信のプログラムを受講している海外や遠方の受講者もZOOMを使ってリトリートに参加した。同じ時間に世界中の人が一緒にマインドフルネスを行うという事で、霊的な雰囲気にも包まれていた。
 
午前中のプログラムは粛々と進んでいったが、私は正直なところ、瞑想を1日中行うことが想像できず、長い一日になるのではと危惧していた。しかし、実際参加してみると、時間があっという間に流れ、しかも多くの人と一緒にやっていることが功を奏してか、いつも以上に集中して瞑想ができた。
 
午後の部での瞑想時、朝からのプログラムで疲れているはずの体と思考は何故か研ぎ澄まされてきたような気がした。すると、言葉でうまく表すことのできないものが見えてきた。それは、優しくて、それでいて強くて、柔らかな光を放っていた。
 
私が見たものは、雑念まみれだった自分の思考が削ぎ落とされた結果、見えてきた本当の私の姿だったのかもしれない。
 
気がつくと、自分自信を肯定し、満ち足りた気持ちに包まれて、温かな涙が溢れ出ていた。私の心は感謝と喜びの波動で震えていた。ただ、ここに居る。それだけで幸せと感じられた。
 
私は、マインドフルネスを行うことは、宇宙船に乗るようだと思った。目的の星に到着するには時間もかかるし、心身ともに楽ではない。しかし、練習を継続し、軌道に乗ることができれば、自分の中にある唯一の星を客観的に観測することができるかもしれないからだ。ただ、両者で違うのは、宇宙船は選ばれた人しか乗れないのに対して、マインドフルネスは誰もが実践できるということだ。
 
もし、あなたが自分を見失いそうになっていたり、不安に襲われたり、ストレスの軽減法に困っているならば、マインドフルネスを実践することを是非お勧めしたい。継続して実践することで、あなたという宇宙の中で、尊い光を放つ星、つまり、本当のあなたの姿を観る事ができた時、あなたに近づいてくる不安やストレスと言う名の隕石を消す術を身につける事ができるようになっているかもしれない。
 
 
 
 
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2019-10-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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