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優先順位がつけられない人のための「問い」のすすめ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:のぐちまりゑ(ライティング・ゼミ平日コース)

 
 
「まず優先順位をつけ、順位の高いものに時間とエネルギーを注ぎましょう」
 
仕事でもプライベートでも、必ずといっていいほど登場するアドバイスである。
わたしはこの言説に対し、常にこう反応してきた。
 
「それができたら苦労しない!」
 

 
わたしには、モノのあふれた部屋を時間をかけて片づけ、快適な空間にしていった経験がある。
 
というか、人生で充実感と達成感を両方得た、つまり「過程」も「結果」も楽しい! と感じられた出来事が、片づけぐらいなのである。
 
仕事でもプライベートでも、わたしは様々なことが「うまくできない」と感じていた。
 
割り振られた仕事では、優先順位をうまくつけられなくてパンクする。
プライベートでは、やろうと思ったことが多すぎて時間の管理がうまくいかない。
人間関係では、苦手な人との予定を断れない。
 
何を優先順位の一位に持ってくればいいのか全然わからない! という困った感覚なのである。
 
じゃあレストランでメニューを決めるときも優柔不断なの? と訊かれるとそうでもない。
そのとき食べたいものはハッキリしているので即断即決できる。
 
なのに、人生で大きめのウェイトを占めるものごとについては、優先順位をつけられないのである。
緊急度と重要度で作るマトリクスに当てはめるノウハウはあるが、それだけでは解決できない問題だった。
 
ところが、なぜか部屋の片づけだけはうまくいったのである。
ここにヒントがあるはずだ、とわたしは藁にもすがる思いで分析を開始した。
 
気づいたことは「捨てる」必要性である。
 
片づけは「捨てる」行為が何度も発生する。
物理的に手放し、物理的に視界から排除し、物理的に存在をなくす。
 
モノ自体が実際に姿を消し、自分と関係がなくなる現象を目の当たりにすることは、いい意味での「訓練」になっていたのである。
 
わたしは八方美人ならぬ「全方位美人」の傾向があるので、人間相手に限らずモノに対しても、入手した背景まで含めて気を遣っているふしがあった。
「モノにも心」を地で行くような扱いをしていて、子どもの頃のオモチャや絵本すら捨てられなかった。
 
しかし、結婚や引っ越し、猫を飼うなど、モノを減らす必要に迫られれば、いやでも優先順位をつけなければならない。つけなければ引っ越し代は跳ね上がり、部屋は飽和し、生活ができない。
 
「捨てる」必要性を骨の髄まで感じられたのが、片づけなのである。
そして一度でも「捨てても大丈夫」「むしろ捨てた方が快適」とわかれば、徐々にモノを絞り込むことが可能になる。
 
好きなこと。
嫌いなこと。
やりたいこと。
何を大切にしたいか。
 
「捨てる」行為を覚悟し、繰り返し経験することで、これらがだんだんわかるようになった。
普通の大人だったら当然わかっていることも、わたしにはわかっていなかったのである。
 
さらに、今までいかに「全方位美人」で生きてきたかもわかってきた。
 
「全方位美人」は、他者から「低評価を受けないため」に採用された人格だ。
怒られたくない、見捨てられたくない、少しでも良く見られたいという不安が根底にある。
ヒト・コト・モノ、すべてその不安から選択をしてきた。
 
割り振られた仕事に対して「苦手なこの業務で評価されなくても仕方ない」「好きなあの業務は絶対に評価されたい」という濃淡すら全くないから、力の抜きどころがわからない。だからすべて「平等に」全力を尽くしてしまう。
 
プライベートでは、少しでもやりたいと思えたことを手放したくないから、興味を持ったものすべて「平等に」全力を注いでしまう。
 
人間関係では、大切な人に対しても、そんなに大切でない人に対しても「平等に」接してしまっていた。
 
そんな「過剰な平等」ではパンクして当然だ。
 
自分を軸にして、ヒト・コト・モノとの間には誰しも距離感がある。
絵画の遠近法のように、何を近くに置いて、何を遠くに置くかは自分が決めていいことだ。
わたしのようにすべてを同じ距離に置いてしまうと、絵には奥行きがなくなり、過剰な平等によって圧迫されてしまう。
 
「全方位美人」をやめ「えこひいき」に切り替えることで、行動には遠近感が現れる。
では、「えこひいき」する対象を浮かび上がらせるにはどうすればいいのか?
 
わたしの場合は、自分に「問う」ことだった。
 
「本当に好きか?」
「本当に必要か?」
「本当に大切か?」
「本当にやりたいか?」
 
何かと直面するたび自分の直感を疑い、「不安から選択したのでは?」と疑ってみる作業だった。
 
自分を信じることは大切だ。
でも自分を疑ってかかり「問い」を繰り返すことは、それ以上に大切だった。
なぜなら、疑ってようやくむき出しになった自分こそ、信じられる自分だからだ。
 
今は、好きなことや嫌いなことがわかってきたから、やりたいことの優先順位を決められるようになっている。
 
転職活動でも、この仕事は憧れるけどわたしには合っていないから応募はしない、という考え方ができるようになったし、今の経済状況であの人と飲みに行くのは嫌だ、という判断もできるようになった。
 
もしあなたが、仕事やプライベートで優先順位がつけられないなら、まずは机の引き出しやクローゼットを開けてみてはいかがだろうか。
 
目についたモノを手に取り、
 
「これは必要か?」
 
と問いかけてみる。
最初に出てきた答えを注意深く疑い、再び問いかけてみる。
 
「本当の本当に必要? 何のために所有してると思う?」
 
現在の遠近感を疑ってかかる。
あなたの絵は「過剰な平等」で圧迫されていないか。
「えこひいき」したいものは本当はどれなのか。
 
いろんな角度から何度も「問い」を繰り返したあとは、自分に対する理解がきっと深まっている。
深まれば深まるほど、仕事でもプライベートでも優先順位がはっきりとわかるようになる。
 
これからの時間が、奥行きのある心地よい絵になっていくはずだ。
 
 
 
 
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2019-10-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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