男とワインはオールドヴィンテージに限る
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
【10月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:岸本 暢子(ライティング・ゼミ特講)
平成から令和になり、早くも平成生まれの若手ミュージシャンたちが
「俺たちの時代はさ……」
とか溜息まじりに言いかねない予断を許さない状況で、ぜひとも注目してほしいバンドがある。
その名は「JUNGAPOP」。
日本のロックバンドである。
バンド名だけ聞くと知らない人もたくさんいると思う。
でもちょっとだけ耳を傾けてほしい。
ジャニーズもいいし、ビシビシの筋肉を隆起させながら踊るパフォーマー集団も確かに萌える。
人気イケメン俳優がバンド活動するのもいいと思う。
私も若いイケメンはどっちかというと好きよりの大好物である。
みんながそこにときめきまくっているのは重々承知の上で。
ちょっと昭和生まれの主張もさせてほしい。
平成を盛り上げたのは誰だ?と
散々平成を盛り上げてくれたのは誰なんですか?と
そのロックバンドの平均年齢は56.6歳。
年の頃なら、企業の中では部長クラス。
正真正銘の昭和生まれのオジサンである。
ただ単に昭和生まれなオジサンなら周りになんぼでもおるし、私だって匂いとか湿度とかで姿を見なくても5メートル手前から嗅ぎ分けるくらいのセンサーを持ち合わせている。
自分がオジ専かというとそうでもないと自覚している。
でもね、男をワインに例えるならやはり味わい深いのはオールドヴィンテージだと思う。
ワインは熟成が進むほど、カドか取れて丸くなり、味わいは繊細かつ複雑に。
そして余韻がグッと長くなる。
1997年に結成されたこのバンドはまさにオールドヴィンテージそのもので、渋さの中にまろやかさと、エロさとオトナのスパイシー感。
22年物のワインさながら、熟成のバランスが抜群なのだ。
とにかくメンバーそれぞれのスペックがすごい。
平成の音楽シーンを確実に支えてきた錚々たる顔ぶれ。
紅白やレコード大賞はもちろん、シングルの累計売上289.5枚のメガヒットや、日本武道館史上最多の15日連続ライブ決行という記録を持つメンバーもいる。
彼らがプロデュース、サポートしているアーティストを挙げていくともうそれだけでこの場の文字数足りなくなるほど。
アリーナクラス、ドームクラスの会場で何万人、何十万人を散々熱狂させてきた恐ろしいメンバーで構成されている。
そんな彼らが今驚くほど観客とステージの距離が近いライブハウスでライブ活動をしている。
そしてつい先日、「DOUBLE PEACE」(=ダブルピースで「22」)とう題名の東名阪ツアーが開幕した。
会場には「女子」とは言い難いがたしかに「乙女な心」を持つ女たちの熱気と、青春時代をロック少年として生きていたのであろう彼らと同世代と思われる男たちの熱気がうずまく。
私はその会場の最前列中央に座っていた。
友人が気合で獲得したプラチナシートである。
もう全然落ち着かない。
黒のオーダースーツに身を包んだ5人のオジサンがステージに上がるとふわりと良い香りがした。還暦&還暦間近とは思えぬ引き締まった身体にスーツが良く映える。
風を起こすようなダイナミックな動き。
シャツの首元で光る汗。
そして何より彼らが今まで多くの観客たちを熱狂させてきた極上の音。
それぞれのパーツが重なり合った時、色気が爆発してこちらの息が上がる。
大人のセクシーが過剰である。
そしてやっぱり、ステージと観客の距離が近い。
どれくらい近いかというと、サービス精神が行き過ぎて時にはこちらの耳に吐息がかかりそうな距離になることもある。心臓が飛び出そうになるのでちょっとやめてほしい。
いや、もっとやってほしい。
こんな至近距離でこの音の振動を直に感じられるのは贅沢の極み。
彼らが長く続けてきた音楽人生の中で、それぞれが自身のバンドからの脱退や解散、さらに病気、いろんなことを経験している。
自分たちが楽しい事だけやっていくわけにはいかない大人の事情もたくさん知っている。
それぞれが音楽業界のきらびやかな部分と不自由な部分を存分に経験したうえで、どの道を選ぶのか?
いろんな選択肢がある中で、きっとこのバンドは「自分たちのやりたいこと、やりたいペースを守ってゆっくりと歩んでいく」という選択をしたのだろう。
ライブの終盤で、一人のメンバーがライトを浴びながらこう言った。
「バンドは男の友情物語なんだよね」
ええこという!!
昭和の香りと、人間ドラマと、大人の色気と、確かな技術。
ゆるいのかハードなのかわからない絶妙な空気感。
エロさを正々堂々プレゼンしてくる男気に、平成の時代にはない魅力を本能的に感じてしまう。
どうやらやっぱり私は進行性のオジ専症候群にかかっているようだ。
男とワインはオールドヴィンテージに限る。
***
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。
http://tenro-in.com/zemi/97290
天狼院書店「東京天狼院」 〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F 東京天狼院への行き方詳細はこちら
天狼院書店「福岡天狼院」 〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
天狼院書店「京都天狼院」2017.1.27 OPEN 〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
【天狼院書店へのお問い合わせ】
【天狼院公式Facebookページ】 天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。