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タカタカズコの大逆転人生

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:サカ モト(ライティング・ゼミ平日コース)
 
もしも、あなたが今、大好きな人に別れをつげられた。もしくは騙されて棄てられた。浮気をされてしまったなど、恋愛で悲しい思いをしているならば、ぜひここから先の物語を読んで欲しい。反対に恋愛が順調で幸せすぎて困っちゃうという人は、目の前のパートナーに感謝してこのまま“閉じるボタン”をおすことをおすすめする。
 
私は父の跡を継いで小さなビルの大家をやっている。その中のひとつ、あるスナックのマスターの話である。
この男はタカタさん。現在70歳を超えている。そしてこのタカタさんは、今でこそ市民権を得た職業、元ホストをやっていた。うちのビルでスナックを開いたときは、ホストではもう食べられなくなり、その頃に付き合っていた女性が資金を出し、店をオープンしてくれた。
 
タカタさんの器量はというと、それほどでもないが、とにかく女性に優しい。そして声がでっかい。そこにモテポイントはないと思うが、声が大きくて豪快だから、頼れる感じがする。しかしつかまると大変。お金を吸い取られて棄てられる。だから女性問題はたえない。包丁をもった女においかけられ足を刺されてしまい、救急車で運ばれたりもした。
 
そんなタカタさんがある日、結婚した。相手は売れっ子の芸者さん。その人は稼ぐし、タカタさんのお店にお客さんもつれてくる。そしてタカタさんにお金を貢ぐ。うちの家賃も、滞納分をその彼女が一括でバンと払い、しかもこの店の保証人にもなってくれた。今までの女とはケタ違いに、タカタさんにお金を使っている。タカタさんも、どんどん着ているものがよくなり、男っぷりもあがってきた。
 
しかしある時、タカタさんは入院してしまう。そして看護師さんとあっけなくできてしまった。堅い商売の看護師さんは、芸者さんのカズコさんよりも稼がないが、月々きまった収入が入るので、お金をもっている。しかもその頃になると芸者のカズコさんは、寄る年波には勝てず人気も落ち目。タカタさんはカズコさんを簡単に棄てて、看護師さんと結婚した。
 
元奥さんのカズコさんは、タカタさんの元を離れた。と、同時に芸者もやめた。そして同じ街で皿洗いや、掃除のおばさんなどをやって生きていた。遠藤周作の『わたしが棄てた女』の主人公ミツのように、ぼろ雑巾のように棄てられてしまった。
 
そのうちタカタの奥さんは、ガンで亡くなってしまう。彼は金ズルがいなくなり困っていたところに現れたのが、資産家の未亡人が現れた。タカタさんと大喧嘩しつつも、数年間、付き合ったと思う。このおばあさんは、感情の起伏が激しい。だからよくスナックの店先でタカタさんと怒鳴り合っていた。結果、おばあさんもほかの女同様、金を巻き上げられ棄てられそうになった。しかしこのおばあさんは、ほかの女と少し違った。裁判を起こしたりと、派手に騒いでいた。タカタさんも少し疲れ果てていた。
 
そのせいかタカタさんは、ある日倒れた。病院に運ばれたタカタさんは、心臓の手術をした。そしてとても一人で暮らせる状態ではなくなった。かといって、そのおばあさんも年が年なので、自分のことだけで精一杯。タカタさんは、このままだと市のお世話になるしかない。それはイヤだと思ったタカタさんが、最後に頼ったのが元奥さんのカズコさん。
 
カズコさんは、タカタさんに泣きつかれ、面倒をみることにした。そのかわりに、タカタさんのスナックのママとして、カズコさんがお店をやることになった。タカタさんはお店に出してはもらえず、ごみすてや掃除などの雑用を一生懸命やっている。
 
カズコさんは、元芸者さんだったので、客あしらいがうまく、昼間からおじいちゃんたちを集めては昼カラオケのお店をやり、繁盛している。たまにおばあさんが店になってきては「タカタをかえせ」とくだをまく。しかしカズコさんは、笑って相手にしない。タカタさんが反対に「帰れ」と追い払う。カズコさんはわたしを棄てた男を、拾って養っている。
 
カズコさんは、今、とても幸せだと思う。その証拠に左の薬指にはタカタさんとおそろいの指輪がキラリと光っている。そして毎月、振り込まれる家賃の振込人は「タカタカズコ」となっている。私は通帳の「タカタカズコ」を見るたびに、カズコさんは今まで悔しい思いをしてきたが、最後は「勝った!」と笑っているに違いない。
 
人生はギャンブルなのだ。どこで大逆転するかわからない。だからいま、うまくいっていないと思っている人も、くさらず生きていれば最後に笑える人生が待っている……かも知れない。
 
 
 
 
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2019-11-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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