最後の1分まで諦めない人の人生は、やはり違っていた
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:河瀬佳代子(ライティング・ゼミ日曜コース)
「残りあと1分ですか。何か話すことないかな?」
彼女は持ち時間の最後の1分までも、何か有益なことに使えないかと思案していた。
そこに一切の妥協はなく、ただ相手を思う気持ちだけがあった。
職場で、若年層の就職支援のイベントを主催した時のことだ。そこで私は分科会の司会をさせていただいた。4年制大学を卒業して、就職を体験した人をゲストに呼び、在学生がお客様になって、ゲストに直に質問できるというクローズドのシンポジウムだ。
最近は売り手市場と言われているが、それでもいざ就活となると一体自分が何から取り組んだらいいのか、わからない学生もまだまだ多い。いわゆる普通の就職セミナーでは訊きにくいこと、ネットには載っていない就活のコツなど、未だ自分の将来について手探りで考えている在学生にとって、人気のあるイベントだ。
私が司会をした分科会のゲストの方は、進路が決まらないまま大学を卒業し、在宅で資格試験にチャレンジし、見事に突破した人だった。
彼女はこう語った。
「私は、大学在学中に、人と自分を比べてばかりいる負のスパイラルに入ってしまいました。人と自分を比べて、あれができない、これもダメと悲観する日々が大学3年にやってきてしまったところに、所属するゼミの教授から、卒論で自分がやろうとしていたことを真っ向から否定されてしまいました。それもかなりな引き金になって、全く就活に心が向かないまま4年生になってしまいました。
当然のことながら、業界研究や自己分析などはできていないままどんどん時は過ぎ、気がつくと4年の9月になっていました。そこではたと気がつき、今から就職できるところはないか探しました。最終面接まで行った企業もありましたが、内定はいただけませんでした。単純に準備不足だったんです。
どこも就職のあてがないまま、とりあえず卒論だけは頑張ったので卒業はしました。家の手伝いをするので、1年置いて欲しいと親に頼み込みました。そして資格試験を受けようと決心しました。収入がないので、割安なWeb受講の講座を受けて対策をしました」
もし自分がそんな状況に置かれたとしたら、どうだろう。私は考えた。周りはみんな社会人の一歩を踏み出している時に、何にも決まっていない。しかも将来もどうなるかわからない。あてのない試験に一縷の望みをかけて取り組むためには、強い精神力がなければ到底続かないだろう。
学生から質問が出た。
「どうしたら、資格試験の勉強を続けるモチベーションを保てますか?」
「たくさんの試験科目があって、苦手な分野ばかりでした。私がやったことは、1つの科目を15分間勉強し、15分経ったら別の科目に取り掛かることでした。こうすると、たとえその科目が行き詰まりそうでも、15分で変えることができるし、気分転換にもなります。15分で徹底的に取り組む、そしてその15分でやったことをきちんと頭に入れることを心がけていました」
なるほどなあと思った。
例えば高校の45分間や、大学の90分授業というのは、ハッキリ言って飽きる。先生の話も、そんなに長い時間飽きずに聞けることはそうそうないのではないだろうか。人間がちゃんと集中できる時間は、せいぜい15分くらいかもしれないというのは感じていたので、腑に落ちた。徹底して集中することで効率も上がる。
「自分の就活を通じて感じたことは、人と自分を比べないこと、自分に自信を持つこと、そして最後まで諦めないこと。その3つでした。
人と自分を比べて落ち込んでしまうことは誰にだってあるかもしれません。でもそのスパイラルに入ってしまったらなかなか抜け出せない。私は、何故自分がその思考回路になったのかという理由を考えました。結論として、自分がやるべきことをやりきっていないからと悟り、とにかく卒論と、資格試験に取り組もうと決心しました。自分のやるべき方向が定まるように、考えてみることが近道だと思います。そうやって取り組んでいく中で自信もついてくる。誰だって最初から自信なんてないんだから」
彼女のメッセージは力強かった。
「あと1分ありますが、何か皆さんにどうしてもお伝えしたいことはありますか?」
「残りあと1分ですか。何か話すことないかな?」
分科会の持ち時間終了が近くなって、それでも彼女は聴衆の学生たちに、最後まで諦めないことを繰り返し話していた。諦めないこと、それが彼女を希望の道へと繋げたことだった。
最後の1分まで諦めないこと、例えば、アリとキリギリスのアリのような地道な努力だが、「もうできない」とか、「私には無理」と、困難な状態を前にして物事を進めることは簡単なようで難しい。小学校の時によく言われたようなことを、大人になって実践している人がどのくらいいるだろうか。そんな地味なことをコツコツとやったからこそ開ける道がある。就活生のみならず、何歳であっても、粘り強さは物事を成し遂げる土台になる。改めてそれを実感させてくれた、有意義な仕事での出会いだった。
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