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「トレイルラン」が育む強靭な心


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記事:大西 栄樹(ライティング・ゼミ平日コース)
 
「トレイルランニング」という言葉を聞いたことがあるだろうか?
 
一言で言えば、マラソンの山バージョンである。マラソンは市街地など舗装された道を走るが、トレランニング(略してトレラン)は山の中の登山道を走る。
 
海外で特に流行ってきているのだが、マラソン人気の流れもあり、日本でもトレラン人気が増している。トレランの大会は、20kmのレースから160kmや300kmを越えるレースも世界では開催されている。
 
1年半前、私はトレランを始めた。
きっかけは、トレラン専門スポーツ店の初心者向けイベントに行ったことだ。
このトレランを始めたことにより、自分自身が大きく変わったのだ。
 
私の仕事は、会社でのデスクワークが中心で、社内の調整業務など面倒でストレスを感じることも多い。
もともと、私は人のことを気にする性格で、人間関係で疲れるタイプだ。なので、社内の調整など色々気にすることで精神的に疲れ果てることも頻繁にあった。
 
そんな私だが、トレランを始めてから、精神的な疲れが溜まらなくなった。精神的にいい状態が続くと風邪もひかない。その上、走るので体脂肪が5%落ちて、体も引き締まった。
 
トレランは私を変えた魔法のようなスポーツなのだ。
 
トレランは山の中を走るのだが、その感覚はまるで子供の時に運動場や野原を駆け回っていた感覚。
 
「自分の体が軽くて、羽が生えた感じ」
 
「トレランってどんな感じ?」と聞かれた時に私はいつもそう答える。
下り道を駆け下りる時の感覚なのだが、これが何とも言えない気持ち良さがある。
もちろん、山の道は危ない。木の根っこや岩場、段差など様々な障害物があるのだが、基本をしっかりマスターすればそこまで危険ではない。
 
それに、危ないと思っているから、自分の集中力が研ぎ澄まされる。五感をフル活用し、危険を感じるからこそ、「生きている」感覚も味わうことができる。
 
「でも、山を登るのは走って登るのは辛すぎて無理!」
 
トレランを始めるまで私もそう思っていたが、大会にも出てみてわかった。
ほとんどの人は、「上り」は歩いている。走っているのは上位5%のトップ選手だけ。
自分のレベルに合わせて緩い上りだけ走って、急な上りはできるだけ早く歩く。とは言いつつも、やはり辛い。
 
「心臓が飛び出しそう……」
 
頑張って上ると、そんなくらいに疲れる。ただ、走るわけではないので、頑張れば登れる。ここは精神的に頑張れるかどうかが試される。
 
このように、気持ちいい「下り」と、辛い「上り」を繰り返してゴールを目指すのがトレランなのだが、これを大会で経験することで、魔法がかかり、自分に変化をもたらすことができる。
 
大会のことを簡単に説明すると、大会ごとに距離と制限時間が決まっている。例えば、私が初めて出た大会は距離25km、制限時間5時間といった感じだ。
 
トレランがマラソンと違っていいところは、タイムを気にしないところだ。
目標は、あくまで「無事に怪我なく完走」だ。
なぜなら、山の状況は毎日変わるし、同じ大会でもコースが山の状況によって毎年変わる。
だから、完走を目的にして自分ベストを尽くすことだけに集中する。
 
ずっと走り続ける必要もなく、途中で休んだり、食べ物や飲み物など補給食をしっかり食べて、どう完走するかを考えながら走る。体力の消耗が激しいので戦略的に考えることが必要なスポーツなのだ。
 
レース途中は、上りと下りを繰り返すので、苦しい時と楽な時が交互にやってくる。
 
「この上りを上りきったら、次は下りだから頑張ろう」
 
今の辛さを乗り越えたら、楽になるタイミングが来る。そう思って足を動かし続ける。これをレース中に何回と繰り返す。
 
「はぁはぁ、もう足が動かない……」
 
途中でリタイアという言葉も頭をよぎる。それからが自分との戦いだ。辞めるか、まだ頑張るか自分に問いかける。そんな時には、少し休んで飲み物や食べ物を食べてエネルギーを補給する。
 
「あと半分! 頑張りましょう!」
 
参加しているランナーも声をかけてくれる。参加するランナーは競争相手ではなく、同じ目標に向かって頑張る仲間。
 
なぜ、こんな苦しいことをやっているだろう……
そう思った時に、私は気づいた。
 
「あっ、この気持ち、仕事のときと一緒だ」
辛いことがあり、でも少し楽になったりもする。それに、目標がと納期が決まっている。周りの人も助けてくれる。
 
自分の気持ちに向き合い、どうコントロールするか。トレランのレースでは、仕事をしている中での気持ちを見事に再現している。トレランではそこに肉体的な辛さも加わっている。
 
25km、5時間という短いレース時間の中に、仕事の要素が凝縮されている。まるで、仕事での感情コントロールの1000本ノックのようなものだ。
 
こうして苦しみと楽しさを乗り越えて、走り終えた時の達成感。
これはもう言葉で言い表せない。
 
私が1年半の間に走ったレースは、25kmから始まり、35km、40kmと距離が増えていった。その結果、精神的に強くなったと今感じる。気持ちのコントロールがうまくなった。トレランは、私を一皮どころか、三皮くらい剥けさせてくれた。
 
あなたが、そこそこ走れて、精神的な成長を求めているなら、トレランを始めてみてほしい。
マラソンを走った人はなおさらだ。間違いなくマラソンだけでは得られない、成長を得ることができるはずだ。
 
私もまだまだパワーアップできる。来年のうちに100kmに挑戦する予定だ。
 
 
 
 
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2019-12-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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