子供が産まれた話
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記事:岡 志津(ライティング・ゼミ通信限定コース)
先月、子供を産んだ。
38歳にして初めての子である。
これまで、私は子供というものはどちらかというと苦手で、親戚の子や友人の子の扱いに困ることが多かった。
抱き方も分からないし、小さくて壊れそう。
何を考えているのかも分からないし、なんだか怖い。
つまり、子供にどう接していいのか分からないのだ。
そんな私が自分の子をかわいいと思えるのかどうか……。
全く自信がないまま出産当日を迎えた。
「オギャー! オギャー!!」
帝王切開の半身麻酔で意識も朦朧とし、メガネもかけていないのでほとんど何も見えない。
それでも遠くの方から泣き声が聞こえてきた。
子供のことを知らなすぎる私は、産声の大きさがどのくらいなのかも知らなかった。
「なんて大きな声なんだろう」
無知な母親の思いをよそに、我が子はびっくりするほどの元気な声と共に産まれてきた。
手術台の上で看護師さんにメガネをかけてもらい、初対面の時が訪れた。
顔だけ左に向けると小さな赤ちゃんが台に乗せられていた。
「あ、目が二重だ……」
他にも何かあるだろとつっこみたくなるが、これが我が子を初めて見た時の感想であった。
「触ってもいいんですよ」
そう言われ、恐る恐る人差し指で小さい頭を撫でた。
ペトペトペト。
初めて我が子に触れた。
まだ羊水でドロドロしていた頭は、ちゃんと暖かかった……。
ほんの少しの対面だったが、無事産まれてきてくれたことの安堵感と、麻酔の効果と、出産ハイのような状態で、わけのわからない気持ちだった。
翌日が本格的な対面となった。
新生児室から私のいる病室に赤ちゃんが運ばれてきて、ベッドの上で初めて腕に抱いた。
昨日聞いた産声の大きさからは信じられないくらい小さい身体。
真っ白いおくるみに包まれた小さな身体。
2,578グラムの温かな重みを腕に抱いた。
赤ちゃんを抱いた姿を看護師さんが写真に撮ってくれた。
パジャマ姿のぎこちない笑顔の私と、こちらのことは全くおかまいなしで、うとうとしている赤ちゃんの姿がそこにはあった。
抱き方もままならない腕の中で、少しずつ眠りから覚めてきた様子だ。
すると、表情がコロコロと変わっていく。
どの表情も逃すまいと、その度にスマホで写真を撮った。
「あ、今の顔は夫に似てる」
「あれ? 横顔は私かな?」
「なんかオジサンぽいなー」
「ん? おじいちゃんに似てるかも?」
人間のミニチュア版のような小さい赤ちゃんを見ながらそんなことを考えた。
とてつもなく小さいけど、一丁前に爪もあるしまつ毛もある。
すると、私の中に一つの感情が芽生えた。
「……なんか、かわいいな……」
自分でも不思議だった。
子供が苦手だったのにもかかわらず、目の前の赤ちゃんをかわいいと思っている。
接し方はいまいちよく分からなかったが、かわいいと思えないのではないかという私の不安は適中することはなかった。
子供が苦手だった私がかわいいと思えるなんて。
こんなにすぐにかわいいと思えるなんて。
真偽のほどは定かではないが、これってもしかして、恋愛必勝法とかでよくあるミラーリング効果なんじゃないのか?
自分と同じような仕草や表情を行う相手に好感を抱く、というアレである。
夫や自分など、身近な人と似ていることで、ミラーリング効果が発揮され、親近感がわく。
赤ちゃんが恋愛必勝法を使うなんて思いもしなかったが、きっとそれだ。
また、自分の子供がかわいいと思えるかどうかは、人によって色々あるらしい。
産まれてすぐかわいいと思える人、しばらくは思えない人。
「私が守らねば!」という気持ちがすぐに芽生えたり、3ヶ月過ぎた頃に笑いかけてきてくれて初めてじわじわきたり。
それも人それぞれだ。
私の場合、産まれてすぐミラーリング効果でかわいいと思った。
夫なんて、コロナで入院中は面会ができなかったため、写真だけだったのだが「とってもかわいい赤ちゃんだと思う」と、既に親バカぶりを発揮していた。
まあ、どちらにしても不安は適中せず、かわいいと思えて正直なところホッとしている。
母親スイッチ入りまくりタイプの人と比べると、きっと私はかなりドライな方だと思う。
だけど、私なりにかわいいと感じ、愛情を注いでいるのだ。
親になるべく子供に育てられる、とよく聞くが、きっとその通りだ。
最近は接し方もだんだん分かってくるようになってきた。
手をよく動かすようになったとか、足をよくバタバタさせるようになったとか。
日々のちょっとした成長を嬉しいと感じている。
これからも、かわいいと思いながら、私なりに愛情込めて子育てを楽しんでいきたい。
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