ゴミ拾いは宝探し インドア娘の熱血アウトドア活動
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記事:西村 由布(ライティング・ゼミ特講)
「お母さん、明日は早く起こしてね。絶対に行くんだから!」
「はいはい、じゃあ目覚ましなったら起こすからね」
と前の晩から楽しみにしている11才の娘。当日の朝も、
「はい!目覚まし鳴ったよ。どうする、行くの?」と聞くと、シャキンと起き上がってくる。通常の学校の日は、まさかこんな風には行かない。娘が前の日からワクワクして楽しみにしているものは、何でしょう? ディズニーランドか、旅行か、はたまた買い物か。正解はゴミ拾い。……え?と耳を疑うかもしれない。そう、娘はゴミ拾いが大好きなのだ。
コロナ休校期間。娘は学校どころか、出かけることもままならず、外での活動時間はどんどん短くなっていた。しかし、もともと自称「インドア派」を名乗る小学校6年生。本人は全然へっちゃらなのである。逆に、親から無理に出かけさせられることなく、心ゆくまでインドア活動に打ち込むことができ、なんだか喜々としている。「寝たきり小学生になるのではないか!」と危惧した私。
「朝、母と一緒に少し早起きして川沿いを散歩してみるのはどう? すがすがしくて気持ちいいよ。それに朝は人通りも少ないし、三密にならないし。その後家でのんびりしたら?」
しぶしぶ納得した娘。さっそく次の朝、6時半に起こして散歩してみた。しかし、目をつぶり、大人に手を引かれ、どこかに連れられていく小学生。なんだか人さらいになったようで、私が落ち着かない。約束の橋のたもとまできて、
「橋、渡ってみようか」と促すも、
「別にいい」
と来た道を、とんぼも真っ青のスーパーとんぼ返りである。
そんな散歩にチャレンジ3回目の朝。たまたま立ち寄った橋の下が大変なことに。「週末にグループでバーベキューをして、酔っ払ってそのまま帰りました」と言わんばかりのゴミが大量に山積していたのだ。紙皿に割り箸、チューハイの缶が10個以上。お菓子の袋に、食べかけのレトルトご飯のパック。そしてなんとバーベキューコンロまでおいてきぼりだ。ご丁寧に、スーパーの袋やトングまで置いてある。恐らく、緊急事態宣言のため、出かける先がなくなってしまった人たちが、河原に集まって来ているのだろう。そのせいか、歩道もゴミが多かった気がする。
「ちょっとこれはひどいね。少し拾って帰ろうか。今日はちょうど燃えるゴミの日だし。」
と、拾い出した私と娘。少し経って娘を振り返ると、あれだけ開かなかった彼女の目がぱっちり開いている。しかも闘志でメラメラ燃えているのだ!
「こんなに置いていって、許せない!」「よーし、いっぱい拾ってやる!」普段ゆっくりおっとりした彼女からは聞かれない、やる気が満ち溢れたセリフが聞かれた。できればそれは、運動会の朝に聞いてみたい言葉だったのだが。私としては、ごはんやお菓子はカラスや鳩がくるし、川に落ちて腐るから、必要最小限だけ拾って帰ろう、くらいに思っていた。が、そういう訳にも行かなくなった。スーパーの袋は幸い汚れておらず、3枚はあったので、意図せず「燃えるゴミ」「プラごみ」「缶・ボトル」と、徹底した分別までしながら拾うことができてしまった。
その日のキラキラした彼女の表情は忘れられない。缶やペットボトルは大物で、タバコの吸殻は小物。大物を見つけると、まるで宝探しのダイヤを見つけたみたい。小物も集めると、まるで砂金を集めたようにドヤ顔になった。「お母さん、また明日、拾いに行こう。全部拾いきれなかった!」いやいや、1回やっただけでずいぶん母は満足しましたけど。彼女はここからが本番だったらしい。その後数日に分けて、河原のゴミ拾いに行った。最初はしぶしぶ付き合っていた私も、集まっていくゴミの量や河原がキレイになっていく達成感と、心地よい疲労感で朝ごはんがおいしく感じられた。時々すれ違うご隠居さんたちにも「あらあら、ありがとうね」とお礼を言われたり、褒められたり。娘も嬉しそうだ。いつしかゴミ拾いが私たち親子の朝の楽しみになった。バーベキューの残骸はきれいさっぱりなくなった。さすがにコンロは手に負えず、どうしたものかと迷っているうちに、ある日跡形もなくなっていた。
その後ご近所さんを巻き込んだり、腐ったキャベツを丸ごと拾ったりと、波乱万丈なゴミ拾いは数回続いた。しかし、緊急事態宣言が解除され、人々が出歩く場所が増えてからは、河原のゴミは次第に減っていった。やりがいがなくなったのか、娘のゴミ拾いフィーバーは少しずつ鎮火した。ゴミ拾いは学校や子ども会、会社でしぶしぶやるものと思っていた私だが、どうやらゴミ拾いの楽しさを娘に教えられたみたいだ。「はたして、他にも楽しくてゴミ拾いをやる人はいるのだろうか」と疑問に思い検索してみたら、なんとゴミ拾いは最近楽しいものになって来ているようだ。
まずは、スポーツゴミ拾い。おお、隣の駅でやっているのか。チームに分かれて集めたゴミの量と質を競い合う。運動会の団体戦みたいだな。ある団体は「楽しくゴミ拾い」をモットーに、ゴミ拾いとRAPコンサートを融合させたり、お相撲さんと一緒に砂浜をキレイにして相撲大会を開いたり。イベントとして、みんなが参加したくなるような工夫を凝らしているらしい。なんとヨーロッパでは「ゴミ拾い観光」!? わざわざ観光客がお金を払ってゴミを拾うのだとか。よく読んでみると、運河でボートに乗りながら「ゴミ釣り」を楽しんだり、集めたペット素材をリサイクルして、カッコいい家具やスケートボードを作ったり。文字通りゴミ拾いは宝の元探しになる。ゴミ拾い自体も思いの外楽しかったが、日本でも似たような活動が広がれば、ゴミ拾いにみんな競って参加したくなるのかも知れない。
家にこもりがちだったコロナ休校中に、ステキなアウトドア活動ができたね、娘よ。実はゴミ拾いは、れっきとしたアウトドア活動だって気づいてないみたいだけど。 あなたも私もだいぶ日焼けしてるよ。
***
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