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自信がないならフリをしろ


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:三好香菜美(ライティング・ゼミ夏期集中コース)
 
 
「自分に自信がなさすぎるんじゃない?」
 
英語でこう言われたとき、目頭が急に熱くなった。なんだか今までの人生を見抜かれたような気がしたから。
 
大学生のときに休学をして、カナダのバンクーバーに留学をした。留学は、行きたくて行きたくてしょうがない! といったテンションで決めたものではなかった。というのも、わたしの専攻は英語で、同じ学科の生徒はほとんどが留学していた。わたしも行っておかなきゃな……、そんな気持ちで行くことを決めた。
 
軽い気持ちだったとはいえ、わたしの性格のことだ。せっかく高いお金を出して行くんだし、やると決めたからには中途半端に終わらせたくなかった。
 
留学に行くと決めてから数か月の準備期間を経て、ついにわたしは10か月間通うことになる語学学校に到着した。そこではすぐに、クラス分けのための能力テストを受けることになった。その学校では、読み書きを覚えるところから始まるレベル1から、日常会話をするには問題がないと認められるレベル8まで、8つのレベルによってクラスが分けられていたからだ。
 
テストでは、リーディング力、リスニング力、スピーキング力が問われた。英語が専攻ではあったが、一番好きな科目が英語だったからという安直な理由で英語科に入学したわたしには、高校までに学ぶような文法やリスニング力こそ備わっていたものの、スピーキング力には自信が全くなかった。
 
約2時間にも渡る能力テストが終わって、結果が発表された。
 
わたしのレベルは3だった。
 
「レベル3」という言葉の響きが、ものすごく心に引っかかった。スピーキングに自信がないとはいえ、わたしは大学の授業では一番レベルの高いクラスに振り分けられていたからだ。わたしの英語力はそんなものなのか。真ん中のレベルにも達さない程度なのか。
 
入学初日にして、自信は消えてなくなった。
 
上のレベルに上がるには、毎月末に行われるレベルアップテストに合格する必要がある。わたしは10か月間しか通わないから、テストを受けられる機会は10回しかない。単純に計算しても、同じレベルに留まれて2、3回までだ。
 
わたしは「自信の無さの沼」に完全にはまってしまった。
 
次の日、その次の日もスピーキングはできなかった。
 
この単語であっているのだろうか。カナダ人はこんな表現を使うだろうか。先生は理解してくれるだろうか。
 
そんなことを考えながら毎日の授業に取り組んだ。気づけば3か月経っていた。
 
わたしはレベル3のままだった。
 
どうもこの学校、同じレベルに3回留まると自動的にレベルが一つ上がる仕組みになっているらしい。わたしはレベル4に上がった。
 
もうここからはうなぎのぼりにレベルを上げたい。もう同じクラスには留まらない。
 
その気持ちで、放課後も土日も、ほぼ毎日のように日本人じゃない人と英語で会話した。家に帰ってからは、シャドーイング(動画などの音声を追いかけて、何も見ずに文を読むこと)と呼ばれる、スピーキングに効果的と言われる勉強法も試した。
 
迎えたレベル4になってから初めてのテストの日。また落ちた。
 
悔しそうな表情を見せるわたしに、先生はこういった。
 
「自分に自信がなさすぎるんじゃない?」
 
思えばそうだ。わたしは昔から何をするにも自信がなかった。人並、またはそれ以上に努力をしていても、つい他人のことが気になって、「わたしのやりかたは正しいのだろうか」「変に思われたらどうしよう」そんなことばかり考えていた。自分の努力は認めずに。
 
水風船に針を刺したように、今まで抱えていた何かにその言葉が刺さって、涙があふれた。
 
先生は続けてこう言った。
 
「Fake it until you make it(うまくいくまでは、うまくいっているフリをしろ)!」
 
この言葉の意味は、うまくいっているフリをしていると、必ず態度や実力もついてきて、最終的にはうまくいくんだというものだった。
 
この言葉は不思議とわたしの心にすーっと入ってきた。
 
そうか、フリをしてもいいのか。人の目ばっかり気にしていても何の得もないんだな。それは今までの人生観がガラッと変わった瞬間だった。
 
次の日からわたしは、さもネイティブスピーカーかのように振る舞い始めた。すると、なぜか勉強に身が入るようになったし、スピーキング力も上がっていった。
 
そこからはうなぎのぼりにレベル7になった。そこでは少し、知識の面で再度スランプに陥ったが、あの時の先生の言葉を思い返してフリを続けた。
 
卒業式を迎えたとき、わたしはレベル8にいた。
 
中途半端で終わることなく、わたしはやり遂げて日本へ帰国した。
 
あの時のあの言葉は、一生忘れられない大切な言葉になった。あの言葉がわたしに自信をくれた。その自信がくれた成功体験もまた、わたしに自信をくれた。
 
自信の無いわたしとはもうおさらばだ。たとえ今はできていなくたっていい。わたしにはできる。
 
今日もそう思いながら、文章を書く。
 
 
 
 
***
 
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2020-08-15 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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