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怒りに震えたら価値観にたどり着いて金メダルだった話


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:吉田さゆり(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
いくつになっても、自分の事って意外と分かっていないものだ。
それを思い知らされたのは、子供が大学生になってからだった。
 
やれやれ、やっとここまで来た。一安心。もうここから先は子供の将来が気になる事はあっても、私が感情的になる様な事はそうないだろう。それに、私自身子供の頃は弟と取っ組み合いのケンカをしていたとはいえ、大人になって長い月日が過ぎたのだ。色々な経験をしてきた分だけ気持に余裕があるのだから、大抵の事は感情に振り回されず判断出来るはずだ。
そう思っていた。
あの時までは……。
 
きっかけは子供が始めた断捨離だ。
ある日、アクセサリーや旅先で買ったストラップ等、要るものと要らないものを分けているのを見かけた。
私は、捨てるものがあるならちゃんと分別してねと声をかけておいた。
だけど……。
そうです。そうなんです。
 
色んな素材の色んなものが、まとめて燃えないゴミの中に入ってる!
 
それを見つけた瞬間、驚くほどの怒りに襲われた。
思わずそれらをつかみとり
「分けろって言ったろう!」
と怒鳴りながら床にたたきつけてしまった。
 
幸い、割れものはなかったとはいえ、結構な数が散らばっている様は、まるでヒステリーを起こして手近なものにあたった人みたい。いや、実際ヒステリーの様なものか(汗)
怒りで身体が震えている。
 
えぇ!? たったそれだけでそこまで怒る? と思った人もいると思う。
おいおい、気持に余裕があるんじゃなかったの? と思った人もいると思う。
そして、一番そう思ったのは私だ。
 
思い返してみると、以前私が腹を立てた時も似た状況だった。
それは、子供がPC周辺機器から香水のビンまで、燃えないゴミとして一緒に出そうとした時だ。
 
あの時も物凄く腹が立った。震える程や、物にあたる事はなかったけど。
ただ、ブツブツ文句を言いながら燃えるゴミとそうでないものを分けていた。
「ちゃんと、分別して! それとも、ゴミ箱に捨ててやったんだから感謝しなさいとでも思ってるの? 何でお母さんがあなたが出したゴミを分別しなきゃいけないの? お母さんはあなたのメイドか何かかしら?」 確かこんな事を言っていたと思う。
 
そんな事があったのに、また! そう、また! なのだ。
 
怒りって、体操競技みたいだ。
着地の良し悪しで結果が大きく変わる。
下手すると大けがをする事もある。
 
“スーーーーーハーーーーーッ”
こんな気持ちのまま、あの場に留まるのは更に物事を悪化させる気がした。
私は深呼吸し、着地点を求めて部屋に籠った。
 
部屋に籠ってからも、正直、何であんな行動をとったのか、自分で自分に戸惑っていた。
あの突然の怒りは何?
過去に震えがくる程の怒りを覚えたのはいつだったか?
確か子供が産まれる前だ。
じゃあ、過去に怒りに任せて物を投げつけた事があったか?
これは少なくとも記憶にはない。
なのに、それがゴミの分別で起きた?
 
ゴミの分別をしなかったから腹が立った。
状況だけみればそうなる。でも、同じ状況でも、腹の立つ人もいれば、そうじゃない人もいるだろう。
私の場合は震える程の怒りを覚えた。その違いはどこからきたのだ?
今後、同じ状況で同じ様になる自分を見るなんてまっぴらごめんだ。
私は私の中で起こった事の本当の意味を知りたかった。
 
幸いな事に私はこういった時の色々なやり方を知っている。
やり進めていくと、フッと価値観って言葉が浮かんだ。
その瞬間、これだ! と思った。
まるで、パズルのピースみたいに、自分にしっくりはまった。
 
驚いた事に、私にとってゴミの分別は私が思う以上に物凄く大切な価値観だった。
目から鱗だ。
確かに分別するのは当たり前と思っていたけど……。
私にとってはそれ以上に大切な事だったんだ。
 
理由が分かったら、不思議な位すっきりした。
原因が分かると、備える事も対処する事も改善する事も、もちろん、同じ事を繰り返す事も出来るから。
あとは自分がどうなりたいかだ。
念のため、未来に同じ状況が起こった場合を想定し、実際その場に入って体験してみても、あんな怒りはわいてこない。
 
その日の午後。
私はお茶とお菓子を用意して子供を誘い「今日の事だけど……」 と切り出した。
すると、子供が突然「分かってるよ! どうせ、私がお母さんをメイドみたいに使ってるって言いたいんでしょ。私そんな気ないのに!それに、自分では分別したつもりなのに。確かにいっぱいあって面倒だから一緒にしちゃったのもあるけど」 と言い出した。
私はキョトン。
何でいきなりメイド?
あぁ、そうなのか。子供は以前私がブツブツ言った文句をとても気にしていたんだ。
今更ながら美しくない着地だった。
 
「そうか。お母さんが言った事、気にしていたのね。ごめんね。確かに分別してるのあったね。そして、お母さんは何か注意をしようと思ってるんじゃないんだよ。ただ、お母さん自身の話を聞いてほしいだけなの」
そういって、私は、気がついたばかりの自分の事を話しだした。
 
そして、最後に、
「だから、そうすべきと言ってるんじゃない。ただ、自分の事を伝えたかっただけ。○○ちゃんはお母さんと同じ様な経験はない? 今まで生きてきて物凄く腹が立った時、震えがくる程怒りがこみ上げた時、それは自分の大切な何かが奪われたとか傷つけられたと感じた時ではなかった? それは自分の価値観に関わる事ではなかった? 少し考えてみてくれたら嬉しい」
そう伝え、話を終えた。
 
果たして私の今回の着地はこれでよかったのか……。
 
その日以降、何故か子供は部屋の片づけをする頻度が増えた。それに加えて、今まで自分の机に山積みだった洗濯した服を、毎回タンスにしまう様になった。
更に、「お母さん、要らない洋服は資源ゴミでしょう? 出し方はヒモで縛るの? あ、いいや。自分で確認する」 と今まで聞いた事がない発言と行動をとりだした。
 
私の話を子供がどう受け止めたのか、私には分からない。でも、子供の内部で何かが起こったから、行動が変わったのは間違いない。
この着地、私の中では金メダルだ。
 
家族は近いからこそ言わなくても分かってる。分かって欲しいと思いがち。
でも、私は自分の事すら分かってないんだから、自分以外の人の事なんてもっとだ。
あの時伝えなかったら、少なくとも私が怒った原因を子供は誤解したままこの先の人生を生きる事になっただろう。そうなると、当然その後の結果も今とは変わっていた。
着地の仕方は色々だ。自分がどうなりたいか。これからもその時その時、最善を尽くしていこうと思う。
 
 
 
 
***
 
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2020-08-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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