家族とは冷蔵庫のようなもの
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記事:原 珠実(ライティング・ゼミ日曜コース)
冷蔵庫が壊れた。真夏日が続くある日。突然。前触れもなく。いや、気づかなかっただけで、前触れはあったのかもしれない。事実、慌てて駆け込んだ電気屋で店員さんに言われたのは「大体は前触れがあるものなんです。音が大きくなっていたり、異常に熱くなったり。気が付きませんでしたか?」との言葉だった。
よくよく考えてみれば、普段の冷蔵庫を気にかけたことがなかった。いつもそこにあって、開ければ中から冷気が流れ落ち、よく冷えたビールが鎮座している。そういう存在だったはず。それがある日突然、ただの大きな棚になってしまうだなんて、私は考えもしなかった。
冷蔵庫が壊れてしまったので、当たり前だけれども中が冷えない。冷蔵保存の物のほとんがダメになってしまい、廃棄しなければならなくなってしまった。なんでもかんでも冷蔵庫に入れておけば大丈夫だろうと考える節があるため、全てのものを外に出すと驚くほどの量のものが出てきた。
食料品はもちろん、飲み物、調味料そして化粧品。余った王将の餃子のタレに、痛み止めの座薬になぜか安全ピン。中でも驚いたのは、調味料の種類の多さだった。そしてご想像通り、期限切れの物が数多くあった。「おばさんは、なんでも冷蔵庫に入れておけば大丈夫だと思っている」 子どもの頃そう思っていたけれど、気がつけば自分がその年代になっていたのである。
壊れたその日にサービスセンターへ修理の依頼の電話をしたが、お盆中ということもあり修理に来れるのが2週間後とのことで、修理は諦め新しい冷蔵庫を買うことに。だが、電気屋でもお盆中のため配送できるのが10日後という事実を突きつけられたのである。念のため、といくつか回っては見たものの、驚くことに10日後が最短であった……。
さて、生まれてから数十年ほぼ毎日と言っていいほど使用してきたであろう冷蔵庫。突然、10日間それがない生活を送らなければならなくなった。喉が渇いたと思えば冷蔵庫を開け、お腹が空いたと思えば冷蔵庫を開けてきたのに。いつも必ずそこにあって、私の要望を満たし続けてくれていたのに。
一年の中で、一番冷たいものを必要とする夏。しかも今年は、猛暑だ。仕方なく常温の水を飲むが、喉の乾きは癒せても、冷たいものが飲みたいという欲求が満たされない。「そんなこと」 と思われるかもしれないが、小さな欲望を満たすことの大切さを痛感したのだった。
それを開けても、もう冷たい飲み物は入っていない。そう分かっているはずなのに、つい開けてしまう。買い物に行っても、もう冷やしておける術がないと知っているのに、ビールを買ってしまう。習慣とは恐ろしいと思う反面、失ったものの大きさに愕然とする毎日である。
困っていた私に、友人が高性能のクーラーボックスを届けてくれた。炎天下の中でも、なんと2日間氷が解けないという優れもの。そのおかげで、ちょっとしたものならばクーラーボックスに入れて冷やしておけることができるようになった。
買ってきた肉や魚、そして玉子。真夏である今の時期は、少しの時間でもすぐに傷んでしまうので大助かりである。多めに氷を入れておけば、飲み物も冷やしておける。そして、半日ほどなら氷はほとんど解けていないのだ。これは冷蔵庫と変わらないなと、安心したのである。
だがそこで、ふと考えた。クーラーボックスはクーラーボックスであって、冷蔵庫ではない。物を冷やしておくことはできるが、やはり冷蔵庫の代替であって冷蔵庫の代わりになることはできないのだなと。その存在の大きさといい、そして替わりがきかないことといい、何かに似ているなと。そう、家族である。
家族とは、冷蔵庫のようなものであるのではないか。いつも必ずそこにあって、接することがない日はほとんどない。自分にとって必要不可欠なもので、そして心地よい生活を支えてくれている。そしてきれいに使っているつもりでも、気がつかないうちに不要なもの、古くなったものが捨てられずに溜まっている。
冷蔵庫でいえば、古くなった調味料や期限切れの食材だけれども、家族の関係で言えば、言いたくても言えなかったことや、逆に嫌だった言動などがそれに当たるのだろう。それらは、毎日の中では小さなことだけれども、積み重なっていくと思いもよらない量になっている。
そして、小さな異変に気がつかず、そのままにしてしまっていると、ある日突然壊れてしまう。そして、その時にその存在の大きさを痛感するのだ。冷蔵庫は壊れてしまったけれど、家族は壊れることがないように、小さな異変を見逃さないように、そして不要なものは折に触れて処分するようにしていこう。突然壊れて、困らないために。
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