10,000人目の価値
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
「記事:伊藤慎悟(ライティング・ゼミ通信限定コース)」
私は、個人で経営コンサルタントを生業にしています。
12年前に開業してから、毎年300件くらいの経営相談を行っているので、単純計算だと3,600件くらいの経営者の相談に乗ったことになります。同じ経営者の方と繰り返し相談することもあるので、低く見積もっても2,500人くらいの経営者の方と直接相談をしたのだろうと思います。
そんな中で、印象に残る経営者の言葉というのがあります。相談の中で、経営者の方が何気なく話された一言が、その後ずっと脳裏から離れず、その後、何度も思い出すようなイメージです。
私が開業して3年目に県内のある商工会で10回シリーズの経営セミナーの講師をしたことがありました。セミナー後、希望者を対象にした個別相談会があり、そこでお会いした畳屋のベテラン経営者の方の話です。
その経営者は、元々、自分で考えて積極的に行動するようなタイプの方だったので、「この人にアドバイスするようなことあるのかな?」とか思っていた記憶があります。
もう10年近く前のことなので、何を話したか覚えていないのですが、その時、その経営者の方が言った言葉はずっと覚えています。
「あんた、ええなあ。いろんな経営者にたくさん会えて」
その時は、「珍しいこと言われるな」くらいにしか受け止めていなかったと思いますが、その後、「なんで、あの経営者の方は、私にあんなこと言ったのだろう?」と考えるようになりました。
ここからは私の解釈ですが、きっとあの畳屋の経営者は、こんなふうに考えていたのではないかと思いました。
「たくさんの経営者に会うと、いろいろな経営のやり方、考え方が学べる。いい経営者にはいい共通点があるし、そうでない経営者には、そうでない共通点がある。あんたはまだ若い経営コンサルタントだけど、俺よりずっと多くの経営者に会っている。その経験や視点で俺の会社を見てアドバイスすることは出来るだろう」ということを言いたかったのではないかなと思いました。
その時までは、たくさんの経営者に会っていることが、自分の強みになるとは思っていなかったのですが、そのことがあって以来、どんなベテラン経営者に会っても、自分ほど多くの経営者に会っている人はいないと思うことが自信になりました。
話が少し変わるかもしれませんが、「ロジカルシンキング」を学ばれた経験のある方は、「帰納法(きのうほう)」と「演繹法(えんえきほう)」という言葉を聞かれたことがあるのではないかと思います。
私も昔、中小企業診断士の勉強をしている時に学びました。
この畳屋の経営者の話は、「帰納法」と「演繹法」のことではないかと思います。
「帰納法」とは、様々な事実や事例から導き出される傾向をまとめて結論につなげる方法です。複数の具体的事実から同一の傾向を抽出して、結論(推論)に持っていくのが帰納法です。
「演繹法」は、一般的かつ普遍的な事実を前提として、そこから結論を導きだす方法です。
実際の使い方としては、「帰納法」を使って、いくつかの事象から「共通点(一般論)」を導きだし、その「共通点(一般論)」を、「演繹法」を使って、ある事象に当てはめて、結論を導き出します。
私の中には、この12年間で出会った多くの経営者の話から、上手くいく共通点を知識やノウハウとして持っていると思います。その経験から、新しい経営者と出会った時には、自分の持っている知識やノウハウを通して、アドバイスしているのではないかと思います。
分母が大きくなればなるほど、サンプル数も多くなり、伝える内容にも、言葉にも説得力が増していることでしょう。
それは他の職業の方も同じだと思います。
例えばお医者さんだって、最初から良い診察や手術をできる方なんていません。
「1人目より10人目」、「10人目より100人目」、「100人目より1,000人目」、「1,000人目より10,000人目」は、きっと良い診察や手術が出来ているでしょう。
こういうことは販売員の方であろうと、電車やバスの運転手さんであろうと、介護福祉施設で働く人であろうと、プロスポーツ選手であろうと、みんな同じように考えること出来ます。
きっと時間をかければ、なんとなく身についていくことなのでしょうが、もしこの共通点を知識やノウハウにしていくことに早く気づいていたとしたら、人よりも成長のスピードは速くなることはあるかもしれません。
起きた出来事を洗い出し、それがなぜ起きたのかといったことを自分で考えるような習慣です。
よくテレビのドキュメンタリー番組などで、若い人がノートに今日起きた出来事を記録して、夜中に一人で振り返っているようなシーンを観ることがありますが、あんなイメージです。
そんな中から、ある共通点に気づき、実践してみる。
共通点に気づいた時点では、仮説にすぎないので、その仮説を実際にやってみることで、仮説が合っていたかどうかを検証できるといった流れです。
何度やってもその仮説どおりの結果であれば、その共通点は合っているということになり、その経験がその人の知識やノウハウになっていきます。
そう考えると、何も仕事のことだけでなく、私たちは子どもの頃からずっとこの繰り返しです。人生のそのものが仮説検証の繰り返しなのです。
たくさんの経験をして、そこから導き出した共通点から仮説を導き出して、実際に試してみる。仮説が合っていれば知識やノウハウになるし、違っていれば、違っていたことがまた知識やノウハウになり、仮説を改めていけばいいといった流れです。
世の中で「マニュアル」と呼ばれるものは、その会社やお店などの、「こうすれば上手くいく」といった仮説検証をした結果がまとめられたものです。
若い人は、最も確率や効率のいいやり方を教えてほしいと思う人が多いでしょうね。今は、「俺の背中を見て学べ」なんて時代ではないので、教えてくれる上司や先輩たちも、なるべく分かりやすく指導してくれると思います。
でも、それはあなたにとっての1人目にしか過ぎません。あなたが経験した10人目、100人目、1,000人目、10,000人目のほうが、何より尊く価値があるのですよ。
若い人たちにそんな経験をしてほしいと私は思います。
《終わり》
***
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