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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:堀川 亜希子(ライティング・ゼミ7月開講通信限定コース)
 
 
子供の虐待のニュースは、なかなか無くならない。
こうしたニュースに触れるとき、皆さんはどのような反応をしますか?
 
虐待だなんて! 私だったら絶対にその様な酷いことはしない!
人の姿をした悪魔だ! 心はないのか!
頭がおかしいんじゃないの?
 
この様に考える人は決して少なくない、と思います。
しかし、ひょっとしたら中には
 
「虐待そのものはあり得る話だ。何がそうさせたのか。背景は何だったのだろう?」
 
と、自分事として考えてくれる人もいるかもしれない。
身近な問題と考えて、心配してくれる人がもっと増えてくれるといいなあ。
そうすれば、もっと子育てしやすい世の中になるのになあ、と私は思います。
なぜ、このような話をするのかというと……
 
私はかつて4年間に3人の子供を産みました。
幼い二人に加え3人目がお腹の中にいた時のことです。
私は本当に子供を虐待する手前まで行き、もがき苦しんだことがありました。
 
どんな人でも『虐待寸前まで行きかねる状況』が存在する。
 
その事実を身をもって知ってしまった。
だから、虐待の報道を見る度にその背景に何があったのかを考えていかなければ『同じことが起きてしまう』と心配でならないのです。
 
私の子供達が幼い頃はそれこそ、毎日を無事にこなすことで精一杯でした。
毎晩のように、くたびれ果てて家事の途中で子供と友に寝落ち。
深夜に起きては体に鞭を打つように残りの家事をこなす日々。
3人目がお腹にいるため、体はどんどん重たくなり思うように動けない。
当時は『火の粉を振り払うように』やっとの思いで生きていました。
 
おまけに当時、味方なんていないのだと感じていました。
周りの4,50代の年配ベテラン奥様達は
 
「子育てなんて、皆通った道だから大変なんていっても、ねえ」
 
と、子供のことを話しても、そんなことは当たり前とだけあしらわれる。
車で3時間ほど離れたところに住む両親ですら
 
「自分で子供を産んだのだから、何があっても自業自得」
 
相談したところで、到底理解してもらえない。
 
そう。悪いのはすべて私。
子育てが、こうも孤独なものだったとは想像すらしていなかった。
 
いつしか私は暗示にかかるように
 
『自分は精神的に弱くて甘ったれで努力が出来ない母親なのだ』
 
と思い込んでいました。
自ら自分自身を苦しい方へ追い込んでいても、気付くことが出来なかったのです。
 
気がつけば私は住んでいた地域でちょっと有名になっていたようです。
だって、スーパーで買い物に行っても人目をはばかることも出来ず、怒りにまかせて子供達を大声で叱りつけていたのだから。
 
自分が白い目で見られていることくらい、薄々感じていました。
だけど、この自分の『思うように行かない苦しさ』をどうしたらよいのかわからない。
自分がおかしくなっている。
なんとなく、そのことは感じている。
 
苦しい最中、冷めた目で見る人たちに内心このように思っていました。
 
「私がどんなに苦しいか、知るよしもないでしょうね。
どれだけ大変かなんて、あなた方に関係ないもの。
さぞかし頭のおかしい母親に見えるでしょうね」」
 
ただただ、情けなくて惨めな感情が渦巻いていました。
それでも毎朝誓うのです。
 
『今日一日こそは、子供達が楽しかったと思える日にしよう』
 
しかし、それでも子供の安全や周囲に気を配ったりするうちに疲れ果ててしまう。
気がつけばせっかくのお出かけが重く苦しいものになってしまうのでした。
そして、夜になると子供の寝顔を見ながら泣けて泣けて仕方が無かった。
子供に家庭ならではの安心できる環境を与え、豊かな感情を育みたい。
それにもかかわらず『良い母親』になれないことが悲しくて、苦しくて、仕方が無かった。
こうした日々を送るうち
『このままでは子供を虐待してしまう』
と思い詰めるようになっていきました。
 
そんなある日のこと。
ある幼児向けのイベントに参加する機会を得ました。
先生方が子供達と遊んでくれる間に、お母さん方に日頃の疲れを取るためのワークショップを提供してくれるといいます。
見知らぬお母さん方と車座になって座り、軽い体操やストレッチをした後、瞑想のようなワークが始まりました。
先生のリードに従い目を閉じて、呼吸を整えます。
静かな時間が訪れ、先生の声が静かに流れました。
 
「皆様は本当によく日々を頑張っています。今日は自分を褒めてあげてくださいね。
よく頑張っている。よくやっておられますよ。
自分自身を慈しんであげてください」
 
そのとき一瞬、私は心の中で叫んでいました。
 
「いいえ。私は全然だめです!だめな母親なのです!料理も、その他の家事も、ちっとも要領が悪いのです。だから子供も充分遊ばせてあげられていない。充分に愛してあげることも出来ていない!」
 
それでも先生の声は静かに続きました。
 
「本当によくがんばっておられますよ」
 
そしてそっと自分自身を抱きしめるように言われました。
すると!
自分自身の手のひらのぬくもりが肩に伝わり、じんわりと暖かさが全身に巡りました。
気がつけば私の頬は涙で濡れていました。
周りの人はびっくりしたかもしれません。
でも、どうにも涙が止まらない。あれれ、なぜだろう?
 
そしてその時、初めて
 
「ああ。私は頑張っている、と思っていいんだ」
 
と気がついたのです。
 
「『私は苦しい!』って言っていいんだ、認めていいんだ」
 
ようやくそう思えたのです。
私の『心を閉ざしていた氷』が溶けた瞬間でした。
 
その後、私は何とか自分の感情を認め自分を大切にすることができました。
おかげで自分がイライラしているときは
『あ、疲れているな。周りを巻き込まないようにしなくてはいけないな』
と気づくことが出来る様になりました。もちろん、虐待に発展することなく。
 
だから、私は今、街の中で子供を泣かせているお母さん、叱りつけているお母さんがいると思わず近づいてニコニコと声をかけてしまいます。
夫はびっくりして引いておりますが、構いません。
 
だってね。虐待の主な原因は『疲労』だと思うのです。
そこを思いやるだけで、声かけだけでもうんと虐待を減らせるはず。
かつて赤ん坊だった皆さんにお願いです。
周りに叫んでいるお母さんがいたら是非、易しく声をかけてあげてください!
 
 
 
 
***
 
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2020-10-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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