物事はすべて、いいことと悪いことが同時に起こっている
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記事:長谷川順子(ライティング・ゼミ日曜コース)
父は怖かった。
『巨人の星』の星一徹のようなちゃぶ台ひっくり返す勢いで、母をよく怒鳴った。
幸い、ちゃぶ台ではなく椅子用の大きな食卓だったのでひっくり返されることはなかったが、ものは飛んできた。
わたしがこどもの頃、朝起きてまずすることは、父が今日はご機嫌がよいかどうかを伺うことだった。機嫌がよいときと悪いときと、接し方を変えないといけないとわかっていた。
そんな家庭環境で育ったものだから、男性から大きな声で強い口調で言われると心臓が縮みあがり動悸がしてびくびくした。無意識に男性を恐れていた。
けれども、父は一家の大黒柱で、養ってもらっている。父を尊敬していた。今から思えば、尊敬すべきだ、または尊敬しなければいけないと思っていた。本当は、母に毎日罵声を浴びせる父に理不尽さを感じていたのだった。自分でも気づいていない怒り。本当は父が嫌いだったのだろう。複雑な心理だ。
そのことが、私の人生に影響した。
こどものころ、結婚するなら絶対に怒らない人がいいと思っていた。が、好きになる人は怒りっぽく父に似ていた。暴力や暴言を振るわれても、母に比べたらましだと思っていた。
そういうものだと思っていた。いつも怒られたらどうしようという思いにかられていた。
そんな彼とも別れて、自由になった。
と思っていたのに、また身近な先輩に対して、怒られたらどうしようという感情が生じ始めた。
いつも同じパターン。
そんなとき、1冊の本に出合った。
『正負の法則』
ものごとにはすべて、プラスのこととマイナスのことが同時に起こる。
マイナスのことがあればそれと同じ分だけプラスのことがある。
逆にプラスのことがあればそれと同じ分だけマイナスのことがある。
マイナスでしかないと思っているのは、マイナスのことだけに捉われて、プラスのことを
見逃しているだけだというのだ。
必ず両面がある。
その理論をもとに、実際に自分の経験に即してワークをした。
父を最も嫌悪した具体的な出来事を書く。
そして、父の好ましいところを挙げる。
そして、最も嫌悪した父が怒鳴った出来事のその瞬間に目を閉じていってみる。
そのときから今に至るまでに、私にとって利益になったことを20個以上挙げていく。
そんなものはない。
と思っていたが、ファシリテーターと一緒に取り組んでいくと、出てきた。
父が母に対して目をむいて大声で怒鳴って、醤油の瓶を投げつけた。その瞬間にいってみる。
そのことがあったから、母は先回りしてよく気がつくようになった。
そのことがあったから、私は相手の気持ちを推測する力が身についた。
そのことがあったから、空気を読めるようになった。
そのことがあったから、我慢強くなった。
……
などなど、そのことがあってよかったことを探していく。
そして、私自身が、そのこわい父と同じ行動をとった出来事を20個挙げていく。意識していなかったが、私は父と同じような行動をとっていた。私が嫌悪する父の行為、母を怒鳴るという行為を、私自身がしていた。
繰り返し、繰り返し、していた。
母に対してたびたびいらついていた。
父が怒鳴るという行為の正反対の行動をとったとき、どんな不利益があるのかを20個以上挙げていく。
父が怒鳴らずどんなときも優しかったら、規律のない家庭になっていただろう。
私はマナーに興味を示さなかっただろう。
家はいつも散らかっていただろう。
……
今まで思いもしなかったことが出てくる。
こわかった父が優しくしてくれたことを思い出した。
自分にはないと思っていた、父のすぐ怒るという性質が、自分のなかにもあるということを自覚した。
相手の中にみえる特性が、自分のなかにもある。
短所には、それと同じだけの長所がある。
正反対の特性を同じだけ持っている。
そして、そのことに気づいたとき、バランスがとれて、「ありがとう」の思いに満ち溢れる。
愛と感謝に溢れる。
いいところばかりの人もいない。
悪いところばかりの人もいない。
すべての人がいいところも悪いところもある。
起こるできごとも、いいことばかりというのもない。
悪いことばかりというのもない。
いいことと悪いことは必ず両方がセットになっていて、
一見いいことばかりに見えても、それは悪いところが見えていないだけであり、
一見悪いことばかりに見えても、それはいいところが見えていないだけなのだ。
物事はすべて、いいことと悪いことが同時に起こっている。
そして、たいていは主観的に感情をともなってものごとを捉えているので、偏りがある見方をしている。客観的にものごとをみていけば、バランスがとれる。
そもそも、よいも悪いもない。
ただ起こるべきことが起こっているだけ。
塞翁が馬。
こわかった父が、私を力強く守ってくれていたことの認識が薄れていたことに気づいた。
私は父の娘に生まれてきた幸運に感謝した。
もうすぐ、父の命日だ。
日本酒好きだった父と一緒に飲みたいと思った。
***
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