自分の地図を見つけた先にあるもの
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:北林万里奈(ライティング・ゼミ日曜コース)
「もし私の言うことがキツいと思ったら、すぐに言ってね」
会社の先輩にそう言われ、私はうなずきました。
それから一年が経ちますが、先輩の言うことがキツいと思ったことは一度もありません。
自己開示は、地図を書くことに似ています。地図は人と人が心を通わせるための道具です。
親しくなればなるほど、地図がなくてもお互い通じあえるようになりますが、初めての場所では地図がないと不安になるものです。いつの間にか回り道になっていたり、迷子になってしまったりするかもしれません。
あのとき先輩が差し出してくれた地図は、入社したての私を安心させてくれました。
地図には、人を救う力があるのかもしれないと思います。
今日はあなたの役に立つことを願って、ここに一枚の地図を置きます。
私は感情を表に出すことが苦手です。
「何もしてないのに、なんで睨むの?」
そう言われたのは小学校一年生の頃です。仲良くしていたクラスメイトの女の子に言われました。
私は視力が悪く、相手の顔を見るときにじっと目を凝らしてしまう癖がありました。
そのことを説明して、「わざとではないよ」と伝えればよかったのですが、はっきりと敵意をもって睨んでくる彼女にひるんでしまった私。何も言えずに家に帰りました。
それから、彼女とは距離を置くようになった記憶があります。
「わかってもらいたかったけど、どうせわかってもらえないから」というあきらめだけが残りました。
中学校に入ってからは、睨んでいると思われないように努力しました。
笑顔を作って印象をよくしようとしたり、必要以上に明るく振る舞ってみたり、ギャグ漫画やバラエティ番組を研究して「万人にウケる反応」を習得したり。常に周りの気持ちを考え、誰にも嫌われないような行動を心がけました。
地図を差し出すのではなく、自分という存在そのものを作り変えようとしたのです。まるで駅直結のテーマパークであるかのように演出しました。
結果的に、SNSの友達の数は増えました。それでも、心はどこか空っぽでした。
「本当の自分を知ったら、みんな離れていくかもしれない」といつも不安だったのです。「どうせわかってもらえないから」という気持ちではじめたことだから、当然かもしれません。
これは地図なので正確に書きますが、28歳の今までずっと、この努力を続けてきました。限界が訪れたのは、今年の6月。
仕事中に突然、涙が止まらなくなったのです。
「Aさんが困っているから、これはやらないと」「でもBさんも大変そうだったから……」
「上司に相談したいけど、忙しそうだから自分でなんとかしてみよう」
仕事を安請け合いしたり、相談せずに孤軍奮闘したりを重ねるうちに、業務量が膨れ上がってしまったことが原因でした。
はじめは自分の状況が理解できませんでした。
どうしてこの忙しいときに、仕事の手を止めているんだろう。
お客様第一主義を貫いたおかげで、周りに必要とされて、毎日幸せなはずなのに。
自問しても出るのは涙ばかりで、答えが出てきません。
完全に迷路に入り込んでしまった私は、例の先輩に仕事の相談のふりをしたSOSメッセージを送りました。
「一息つかない? コーヒー淹れてくるね」
先輩はちゃんとわかってくれていました。私の悩みを丁寧に聞いたあとで、こう答えてくれたのです。
「ちょっと無理しているんじゃないかなって思っていたの。ねえ、ありのままでいいんだよ。無理して仕事を受けなくていい。おかしいと思ったら、怒っていいの」
そう言ってもらえてはじめて、自分が無理をしているかもしれないこと、そもそも怒るということが滅多にないことに気づきました。やはり原因は、「どうせわかってもらえないから」という気持ちです。
つまり、地図を書くのがとても下手なのです。
先輩に相談した次の日、私は会社を休ませてもらうことにしました。
休んでいる間に自分の地図を見つけてみようと思い立ったのです。
まず、「これ以上の業務は無理です。病気になる前に休みます」と上司に宣言しました。次に、ずっと気になっていたけど、人目を気にしてやれなかったことをやりました。今までずっと暗めの茶色に染めていた髪を、金髪に染めたのです。気持ちも一気に明るくなりました。
翌週、思い切って会社に出向き、イメージチェンジした地図(頭)を差し出してみました。反応は……。
「すごく似合ってる!」
先輩の第一声です。上司からことの顛末も聞いたようで、
「上の人にはっきり言えるなんて、やるじゃない。そういうところ、すごく好きだよ」
と言ってくれました。
先輩はちゃんとわかっていたのです。私の本性が、テーマパークのふりをした、厳しい中華屋の店主だということを。
さらに、わかっていたのは彼女だけではないと、髪を染めた後の周囲の反応から気づかされました。皆、「らしくていいね!」「そっちの方が好き」と好意的だったのです。
地図を見つけた先には、以前の自分には見えなかった世界がありました。
「ありのままの自分」が認められる世界です。
この世界では、いいことばかりではなく、厄介なことも起こります。
地図を書き始めてから、空っぽだった心に突如「喜び」「悲しみ」「希望」「失望」などのいろいろな感情が飛び込んでくるようになり、どう表現すればいいのか日々頭を悩ませなければならないのです。
もう、元の空虚な生活には戻れそうにありません。
あなたもあなたの好きな表現方法で、自分の地図を書いてみてはどうでしょうか。
***
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