10歳から「嫌い」が「嫌い」になった
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記事:いはみどり(ライティング・ゼミ 日曜コース)
「これきら〜い」
同じ班の男の子が言い出した。
目の前にはレーズンパン。
わたしは好きなのになっと思いながら黙々と目の前の給食を食べる。
幼い頃、多かれ少なかれ“好き嫌い”というものがあった人がほとんどだと思う。
わたしの小学校では、食べ物を残すという行為は完全にタブー。
「お残しはゆるしまへんでー!」これが当たり前の世界。
食べられないとお昼休みになってまで完食が小学生の義務だった。
かく言うわたしもピーマンとキノコを食べることが出来なかった。
家の夕食で出てこようものなら、頑として口をつけなかっただろう。
わたしは「嫌い」という言葉に苦手意識がある。
「俺、これ嫌い!」
別の日、またもや同じ班の男の子が好き嫌いをしていた。
ししゃもの頭だ。しっかりと頭の形が残っていて、つぶらな瞳がこちらを見つめている。今回ばかりはその子に同感した。頭を食べるという人間に置き換えるとおぞましいと思える行為と、あの独特な苦味、噛んでも少しだけ口に残る食感は小学生にはハードルが高かった。「あー、わかる。わたしも嫌いなんだよね」そう言葉を発しようとした時、隣に座る別の男の子が口を開いた。
「俺も少し苦手なんだよね〜」
ん?
なんとなく違和感を感じて、わたしはつい言葉を引っ込めてしまった。
意味合いとしてはまったく同じだ。
どちらもししゃもの頭を食べるという行為に拒否反応を示しているはずなのに、わたしの中での感じ方がまったく違った。
まだ幼かったわたしは不思議な引っ掛かりが出来てしまい、それからというものなんとなく「嫌い」という言葉を使わなくなった。
「本当にピーマン嫌いすぎる!」
「ちょっとピーマン苦手なんだ…」
何故だかわからないけど、後者の方が柔らかい気がする。
同じ意味合いなのになんでだろう?
年齢を重ねてからも、その時のエピソードは鮮明に頭の中に残っていた。
ある時改めて考えた。
「嫌いと苦手の違いはなんなんだ?」
1つの自分の中結論として「嫌い」には「拒絶」という意味も含まれている印象を持った。拒絶という言葉を聞くとなんだか少し怖く感じてしまう。
一方「苦手」は「克服する努力をしようとしたけどダメだった」という印象を持つことが出来た。この場合、歩よろうとしているので受け止めようとする想いを感じることが出来るので安心感を感じた。
なんとなくの違いが浮かび上がってきた。
でも何故だろう。
もっと踏み込んだことがあるような気がした。
「ふわふわ言葉を使いましょう」
インターネット上で話題になっていた、幼稚園の女の子が大人の言葉遣いについて物申すマンガがふっと脳裏をよぎった。
わたしは「嫌い」という言葉はイガグリだと思う。
言葉にトゲがあるトゲトゲ言葉だ。触るとなんだか痛そう。
一方、「苦手」は丸っこいおにぎり型と言ったところだろうか。
人は自分に余裕が無くなると、トゲトゲ言葉を発しがちになると思う。
「ちっ、また残業かよ」
「くっそ、なんでウインカー出さないんだよ」
「あー、しぇからしか!」(うるさい:福岡弁)
ただ考えてみてほしい。
そんな時は決まって自分が時間や業務に追われている時なのではないだろうか。
以前、フレンチレストランで働いていたことがある。
そのレストランの料理人の方々は不思議なくらいに仲がよく、和気あいあいと楽しそうに仕事をしている姿が印象的だった。
しかし
繁忙期になると一転。
「おい、まだ出来ねえのか!」
「おせーーーよ!」
ソースをこぼそうものなら
「なぁぁぁにやってるんだ!!!」
わたしはホールスタッフとして「昨日までの仲良しはどこに行ったんだ」っと思いながら眺めていた。それほどまでに余裕がないということはトゲトゲ言葉を発しやすい状況になるということだ。
逆に考えれば、トゲトゲ言葉を使わなかったら余裕があるように振る舞えるかもしれない。恐らく小学生の時代に給食を食べながら感じた違和感は、本能的に余裕のある振る舞いを見つけたんだと思う。
どうせ言葉を発するなら「ふわふわ言葉」を使いたいと思う。
「ありがとう」「ごめんね」「嬉しい」「楽しい」
聞いている人が良い気分になる言葉。
言葉の変換次第でいくらでも出来る。
せっかく一緒にいるなら、ふわふわした優しい気持ちになってもらいたい。
目の前に出てきたチンジャオロース。
「ごめんね、すごく美味しそうなんだけど、ちょっと苦手だから食べられない」
あれ?
なんか違う。
下手だ。
ふわふわ言葉を習得するには訓練が必要みたい。
これからたくさん練習しよ。
***
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