ポジティブハッピー大作戦
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:しげG(ライティング・ゼミ日曜コース)
※この記事は、フィクションです。
「ポジティブシンキングが幸運を招いてくれるんですよ」
テレビ番組で、とあるタレントが話していた。
ホントかなあと思ったが、ちょっと心惹かれるものもあった。
現在30歳ひとり暮らし。
ITシステム販売会社の営業課に勤めている。
引っ込み思案な性格が災いしてか、仕事の成績もパッとしない。
「あなたってホント成長しないよね」
彼女にも愛想をつかされてしまった。
ああこんな人生、何とかならないかなあと思っていたところだ。
そうだ、ポジティブな考え方で何か変わるのか? ちょっと自分で試してみよう。
お試しルールは単純なものにした。
ネガティブな気持ちになったら「ありがとう」と叫ぶ。
本当に叫んでもいいのだが、他人に迷惑をかけたくないので心の中で叫ぶことにする。
英語でサンキューでもいいし、最近勉強し始めた中国語の謝謝でもいいだろう。
とにかくぼやいたり、他人に怒りをぶつけたりしてはいけない。
悲しくても悔しくても面倒でも「ありがとう」と叫ぶ。
臭いものにフタをするように、ポジティブな言葉でネガティブ感情にフタをしてしまおうという作戦だ。
ルールは単純だが計画は壮大だ。
なんたって人生を変えようとしているのだから。
ちょっとダサいが「ポジティブハッピー大作戦」と呼ぶことにした。
今日は日曜日。
よし、さっそく明日から始めよう。
月曜日の朝が来た。
これから長い一週間が始まる。
「ああ、起きたくない。あと5分寝よう」
ブッブー。
いけないいけない、さっそくルール違反だ。
「月曜日の朝でありがとう」
心の中で叫ぶと、不思議とサッと起き上がることができた。
冷蔵庫をのぞいて朝食の材料を探すが、ろくなものがない。
ちぇっ、と舌打ちしそうになるのをグッとこらえてつぶやいた。
「まともな食べ物がなくてありがとう」
今日は駅前のカフェで朝食をとろう。
たしかあそこは、可愛い女性スタッフがいたはずだぞ。
テンションが上がる。
もしかして作戦の効果なのか?
カフェに着いた。
残念ながらお目当てのスタッフはいない。
どうやらお休みのようだが、がっかりしてはいけない。
「あの子がいなくてありがとう」
朝食をとりながら新聞に目を通す。
いつもより集中して記事が読める気がする。
あの子がいたらチラ見の連続で、記事の内容が頭に入らなかったかもしれない。
これも作戦の効果だ。
ポジティブハッピー大作戦、なかなかいいじゃないか。
出勤すると、月曜日恒例の課長呼び出しが待っていた。
先週の金曜日にやっつけ仕事で出した報告書のことだろう。
お目玉に違いない。
おっと、忘れちゃいけない。
「朝から呼び出しありがとう」
案の定、課長はご立腹である。
報告書のことに始まり、営業成績のことまでチクチクと刺してくる。
眉間のシワも「1」から「川」へと画数が増えていく。
いつものわたしなら、きっとこう言い訳するだろう。
「いえ、課長。わたしも他の案件をかかえておりまして。時間がないんですよ」
しかし今日のわたしは違う。
「わかりました課長、ありがとうございます!」
叱られてありがとう、だって?
面食らった様子の課長だったが、すぐに柔和な表情に変わったかと思うとこう返してきた。
「そうか。君も忙しいようだからね。2、3日中にまた出してくれればいいよ」
ポジティブハッピー大作戦、ありがとう。
この作戦は相手にも効果がありそうだ。
その後もしばらく作戦を続けた。
「ありがとう」と叫ぶことも習慣になってきた。
不思議とネガティブ感情に陥らなくなっていくことも実感している。
作戦の手ごたえを感じつつ、取引先へと向かっていた。
今日は大事なプレゼンがある。
プレゼン資料はほぼ徹夜で仕上げた。
小一時間ほど早く着いてしまったので、取引先のとなりにあるカフェで眠気を覚ますことにした。
ホットコーヒーを注文して、入念に準備したプレゼン資料に目を通し始める。
しばらくすると店員がコーヒーを運んできた。
次の瞬間、悪夢のような出来事が起こった。
店員が床に置いてあったわたしのカバンにつまづいたのだ。
コーヒーカップは宙を舞い、体操選手のようにプレゼン資料の上に逆さまに着地した。
目の前が真っ暗になった。
プレゼン資料もコーヒーで真っ黒になった。
がーん。
ショックとともに激しい怒りが沸いてきた。
店員を怒鳴りつけたいという衝動にかられる。
同時に絶望感が押し寄せる。
会社に連絡して印刷したものを届けてもらう?
それじゃ間に合わない。
取引先にこんな事情で印刷して欲しいと頼む?
そんなわけにもいかない。
頭の中はカオス状態だったが、思いもよらない言葉が口から飛び出した。
「ありがとう!」
結構な大声だった。
店員もまわりのお客さんたちも呆気にとられている。
「ちょっと待ちなさい。ありがとう、だって?」
今日のプレゼン先のキーパーソンであるA部長の声だ。
奥の席で、出来事の一部始終を見ていたらしい。
わたしの対応にいたく感心したようだ。
A部長は自分の部下を呼びつけると、わたしの会社から送られるプレゼン資料を印刷するよう手配してくれた。
さらにプレゼンの場では、このカフェでの出来事を披露し称賛してくれた。
「彼は信用できる人間だ」
とわたしに太鼓判まで押してくれたのだ。
プレゼンは大成功。
太鼓判だけでなく契約印も押してくれるという。
ポジティブシンキングは本当に幸運を招いてくれた。
営業成績も上がるだろう。
彼女も戻ってきてくれるかもしれない。
ポジティブハッピー大作戦、本当にありがとう!
「お客さま、お客さま。起きてください。店内が込み合ってまいりましたので……」
はっと目が覚めた。
どうやらカフェでプレゼン資料に目を通しながら、寝落ちしてしまったようだ。
あーあ、夢だったのか。
そんな都合のいい話あるわけないよな。
でもがっかりしちゃいけない。
大切な資料は無事だったのだから。
こんなときこそポジティブにいこう。
「夢でありがとう」
気持ちを切り替えて店をあとにした。
ウトウトしたこともあるのだろうが、気分はすっきりしていた。
人間には「喜怒哀楽」の4つの感情と、それを切り替える2つのスイッチがある。
ネガティブスイッチとポジティブスイッチだ。
ポジティブハッピー大作戦は、ネガティブスイッチが入ろうとしているときに、ポジティブな言葉を発することで、強制的にポジティブスイッチに切り替える作用があるようだ。
一連の出来事がそれを証明している。
さらにこの作戦は、相手のスイッチも切り替えてしまうようだ。
月曜朝の課長との一件がそれだ。
ポジティブハッピー大作戦。
やはり名前はダサいが、少しづつ人生を変えてくれそうだ。
しばらく続けてみることにしよう。
***
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