メディアグランプリ

喜びの創作、創作の喜び


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:津森あずさ(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「とんでもないことでございます」
その正しく美しい日本語を口にしたのは、驚いたことに、某ホテルのフロントの女性外国人スタッフだった。
 
言語は時代とともに変化していく。これはある意味当たり前かつ、仕方のないことで、とりわけ話し言葉で顕著である。
かく言う私も、日常生活の中で、「ウザい」だの、「キモい」などと言ったりする。
だが、一転、書き言葉になると、「ら」抜き言葉が非常に気になるし、話し言葉でも「申し訳ありません」や「とんでもございません」という言い方が気になって仕方なく、自分では使わないようにしている。
 
「申し訳ありません」や「とんでもございません」がなぜ気になるのか。
それは、日本語として不自然だと感じてしまうからだ。
2007年2月に文化庁が打ち出した『敬語の指針』によると、現在では問題ない使い方だとされている。
しかし、もともと「申し訳ない」「とんでもない」という、全体でひとつの形容詞なので、その一部の「ない」の部分だけを「ありません」や「ございません」という丁寧な表現に変えようとする発想に違和感を感じざるを得ないのだ。
 
だから、ネイティブ日本語話者である私たち日本人でさえ正しく使える人が減っているなか、外国人である彼女が正しく使えることに本当にびっくりしたのだ。
もちろん、ホテルのフロント係という彼女の仕事の性質を考えたら、それほど驚くことではないのかもしれない。ホテルの従業員教育の賜物かもしれない。
かといって、このフレーズがすんなりと、そして適切に使えるということが当たり前だとはとても思えない。私は彼女をとても素晴らしいと感じた。
 
彼女の素晴らしさはそれだけではなかった。
彼女の接客態度には、お客様とよいコミュニケーションを取ろうという心遣いが現れていた。
スーツケースを宅配便で送るための手続きをしたのだが、「スーツケースカバーはいかがいたしますか?」「お荷物、確かにお預かりいたしました」等、当たり前かもしれないが、言うべき言葉を省くことなく、きちんと伝えてくれた。こうした言葉を使うことなく、無言で済ませている人が増えている気がする。
 
そして私が最後に「いつも快適に過ごさせていただき、ありがとうございます」と言った時の彼女の返しがまた秀逸だった。とても嬉しそうに顔を綻ばせ、「お褒めの言葉を頂戴し、ありがとうございます。励みにいたします」と言った後に美しいお辞儀をしてくれた。今まで何度もいろんなホテルに宿泊したが、ここまでの言葉を聞いたのは初めてだった。
 
人は何にお金を払うのだろう。
何に感動するのだろう。
 
当たり前のサービスの、そのひとつ先の何か、ではないだろうか。
 
こんな話を聞いた。
ディズニーランドでのことだ。
小さな子供によくあることらしいが、買ってもらったポップコーンをぶちまけてしまった。子供は泣く。そしてそのばらまかれたポップコーンを掃除してもらわなくてはならない。親は「すみません、すみません」と謝る。が、駆けつけたキャスト(スタッフのお兄さんやお姉さん)は、にこやかに「大丈夫ですよ!」と言うだけでなく、こぼしてしまったポップコーンを無料で補充してくれるチケットをくれるそうだ。
泣いていた子供は泣き止むだろうし、親はその「神対応」に感動する。
そりゃ、「また来よう」という気持ちになるのは必然だ。
 
ディズニーリゾートの徹底したサービスはこれ以外もいろいろ知られているが、ディズニーに限らず、先ほどのホテルの例にも共通するのは、「喜びの創作」の意識だと思う。
 
いかに相手に喜んでもらうか。
そのために何ができるか。
 
このことを意識して、それを実践することができた時、双方に喜びが生まれ、それとともに感謝が生まれる。
不思議なことに、喜びを創作した側の方が、受け取った側よりもさらに大きな喜びを感じることになる。喜んでもらって嬉しい、という気持ちになる。
そのくらい、人の喜ぶ姿や笑顔には、大きなパワーがある。
喜びも感謝も循環する。幸せの循環だ。
 
だから、「喜びの創作」ができる人になろう! そう思った。
日常の業務でも、「めんどくさい」と思いながらやるのと、何も考えずに淡々とやるのと、「喜んでもらおう」と思いながらやるのでは、結果はもちろん、相手に与える印象は雲泥の差になるだろう。
ディズニーのキャストの神対応に感動した親御さんのように、そしてホテルのフロントの女性外国人スタッフの美しく正しい日本語に感動した私のように。
 
こうして『ファン』は作られていく。
「喜びの創作」ができる人は、「創作の喜び」を感じることができる。
そこからさらに創作されるものには、限りがない。
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00


■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」

〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168


■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」

〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325


■天狼院書店「シアターカフェ天狼院」

〒170-0013 東京都豊島区東池袋1丁目8-1 WACCA池袋 4F
営業時間:
平日 11:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
電話:03−6812−1984


2020-11-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事