働くのはメスだけ? オスは野たれ死に? ミツバチの生態の不思議
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記事:てしがわらひろこ(ライティング・ゼミ集中コース)
「働き蜂」がオスなのかメスなのか、それとも両方なのか、ご存知だろうか。
『ミツバチと人間』という本がある。この本を読むまで、ミツバチの世界がこんなにも魅力的だとは思ってもみなかった。ミツバチには「刺されたら痛い」というイメージしかなく、遭遇したらなるべく遠くへ逃げなければならない恐ろしい昆虫だとしか感じていなかった。
今から40年前、1980年に発行されたこの本は、ある一人の養蜂家が自費出版をしたものだ。養蜂家の名前は渡辺 孝。岐阜県で父親が創業した養蜂場を経営し、ミツバチの研究者としても活躍した人物である。ある知人に「科学的で文学的で、社会観が変わるかも」と紹介され、私はこの本を手に取った。
『ミツバチと人間』には、ミツバチの社会性からハチミツと文学の関係や、人間とのかかわりまで、エビデンスの確立されたていねいな解説がされている。地方の一養蜂家が書いたとは思えない、豊富な知識量にまず驚かされる。
一見すると、昔ながらのギシっとした活字がしきつめられた読みにくそうな本だが、次から次へと解き明かされるミツバチたちの不思議なストーリーに、どんどん惹きこまれていった。ページをめくるごとに、まったく思ってもみなかったような新しい情報が飛び込んでくる。「早く誰かに伝えなきゃ!」と焦る気持ちまで覚えた。
ハチミツは、ミツバチが集めてきたもの。
これは誰でも知っていることだろう。私にもそれくらいの知識はあった。
この本に書かれていることから、ひとつクイズを出してみたい。
ティースプーン1杯のハチミツを集めるのに、ミツバチはどれくらいの時間をかけているだろうか。ティースプーン1杯、ヨーグルトやパンケーキにかけるには少し少ないかなといった量だろうか。
ミツバチが一日に集められる花蜜の量から計算すると、ティースプーン1杯分を集めるには、なんと66日かかるのだそうだ。飛行距離にして約1万km、訪れる花の数は6万個以上。
しかし、ミツバチの寿命は30日しかないという。ということは、そのティースプーン1杯のハチミツは、「一匹のミツバチが一生涯かかってもとうてい集めきれないほどの量」なのである。人間に例えるとしたら、一生分の年収の約2倍、といったところだろうか。
私はこの章を読んだあと、ビンの口まわりに垂れたハチミツを拭き取って捨てていたことをひどく反省した。人間の資産価値で例えると、ボーナス10年分くらいを捨てていたことになるのではないか。
私たちは肉や魚を食べるときは、「命をいただいている」ということを意識することもあるが、ハチミツに関してはどうだろう。ミツバチが命がけで貯めてきたハチミツを分けてもらっているという感覚は、これまでにはない新しい気づきだった。
さらに驚いたネタを少し紹介したい。
働き蜂は、一匹残らずすべて「メス」なのだそうだ。「働く=オス」という固定概念があり、私はずっとオスが働き蜂だと思っていた。
私たちがふだん目にしている、花の蜜を吸っているミツバチはすべてメスであり、オスは一匹もいない。外に出て働いているのはメス蜂だけなのである。おそらく、私たちがオス蜂を目にする機会は、ほとんどないのではないだろう。
ではなぜ、オスは花の蜜を吸わないのか? 食べ物はどうしているのか? 何をして一生を過ごしているのか?
その詳細は本書に委ねるとして、ここでオス蜂の最期だけを伝えてしまうと、もれなく「野たれ死に」という運命が待っているそうだ。自然界の仕組みはなんとも残酷である。
ミツバチ社会の男女の役割を知って、私は人間の社会に思いを馳せずにはいられなかった。「男女平等の社会」が問われ続けている現代。ミツバチの社会を「なるほど」と捉えるのか「そんなバカな」と捉えるのか、おもしろい議論が生まれそうな気がする。
そのほかにも、驚いた情報はまだまだたくさんある。
ミツバチの巣は、なぜ六角形なのか?
「ハネムーン」の言葉の由来は?
自然界に赤い花が少ない理由は?
女王蜂の寿命が働き蜂の40倍なのはなぜ?
エジプトのミイラと一緒に見つかったハチミツがまだ食べられる?
いつも身近にいるミツバチについて、そもそも考えたこともなかったような疑問がどんどん投げかけられ、爽快で明確なスピードで「そうだったのか!」というスッキリ感が味わえる読後感。自己啓発や社会課題の解決には直接つながらないけれど、こういうおもしろさが人生を豊かにするのかもしれないな、と少し心がほぐされる一冊である。
それにしても、オス蜂の運命とは……。
私が男性だったら、どんな気持ちで受け止めるのだろう。しばらく考え込んでしまうかもしれない。まずは働き者の夫に話してみて、感想を聞いてみようと思う。
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