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夫の靴下がそこらに落ちていてもイライラしなくなる哲学


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記事:てしがわらひろこ(ライティング・ゼミ集中コース)
 
 
「またこんなところに脱ぎっぱなしにして……」
夫を持つ女性なら、誰しも一度は口にしたことがあるセリフではないだろうか。
 
あくまで一般論として読んでいただきたいのだが、夫という役割を持つ人は、脱いだ靴下や服をそのあたりにパッと置いていくことが多いものだ。ソファの上、ベッドの上、時には玄関先なんてことも。
毎日部屋をきれいに整えようとがんばっている妻にとっては迷惑この上ない。言っても言っても直らない。そして片付けるのはまた私……。
 
結婚生活には楽しいことがたくさんあるが、やはりそればかりではない。毎日のちょっとした「イラッ」はコツコツと積み上がり、放置しておくとある日突然爆発することがある。これは危険だ。
そんなイライラを一掃することができるたった一つの方法を、私は15年の結婚生活のなかで見つけ出してきた。
 
その方法はいたってシンプル。
「家事は全部自分でやる」ということ。ただそれだけだ。
 
「ちょっと待って、私も仕事をしているのに家事は全部やるなんて不公平!」
と思う方も多いだろう。私も結婚して数年はそう思っていた。私と夫とで家事の分担を決めて、なるべく労力が平等になるようにしていた。もちろん、それでうまくいく家庭はそれがベストだと思う。
 
ただし、分担を決めると必ず生じるのが「ちゃんとやっていないじゃないか!」という不満。
人は誰しもやり忘れたり、サボったり、手を抜いたりしてしまうもの。時にはうっかりしてしまうことがあるのはわかっている。しかし、こと夫が相手となるとなぜかそうは合点できず、やっていない家事を見つけてはイライラしなくてはならない。
「今日、ゴミ出しやってないよね(イライラ)」
「あ! 忘れてた!昨日の夜まで覚えたのになあ」
「……(イライラ)」
こういったやり取りをするだけでも精神にとって負担となる。
それならもう、分担なんてしないほうがいい。全て自分でやってしまえば、少なくとも「やってくれなかったことを責める」という苦行からは解放される。
労力を平等にすることよりも、平坦な気持ちで過ごせるほうが心地よいのではないか。
そんな極論とも言える決断を、私はしたのだった。
 
しばらくすると変化が起きた。
たしかに、自分の家事の負担は増える。でもその分、限られた時間でいかに多くの家事をこなすか、段取りを工夫して考えられるようになった。
一つ一つの家事がササッと終わっていくと、この短時間でこれだけの仕事をこなしたという達成感に満たされる。
それに、もはや家事は自分に一任されている。いい加減にやっても誰にも怒られない。時間が足りなかったらサボってもいい。良い意味で手抜きを覚えることにもつながった。
精神的にも労力的にも、なんだか分担していた頃よりも格段とラクになったのだ。
そして何より、忙しいなか家事をこなしていることに対して夫から「ありがとう」という言葉をもらえる。
 
私のイライラが発生しなくなったことで、家のなかの空気はとても穏やかになった。
家族というのは不思議なもので、誰か一人が負の感情を持っていると、家全体に波及することがある。反対に、いつも穏やかな人がいると、家の雰囲気も明るくはなやかになる。ここ10年ほどは夫ともほとんど喧嘩をすることはなく、ほのぼのと生活できている。
そういえば、祖母が言っていた。「いつもニコニコ、ね」と。それはこういう意味だったのかもしれない。
 
たしかに、家事を全部一人でやるなんて、なんだか損な役回りのような気がする。でも、洗濯物のたたみ方や、食器の洗い方なんて、人生のなかで考えたらすごくどうでもいいことだ。そのどうでもいいことが原因で、大切な人と喧嘩したりイライラしたりするなんて、さらに輪をかけてどうでもいいことなのではないだろうか。そんなことに時間を費やすなんてもったいない。もっと考えないといけないことはたくさんあるはずだ。
 
さらにおもしろい変化があった。この「家事を全部一人でやる」という大改革を通して、思いがけない学びをいくつか得ることができたのだ。
 
まず、相手に変わってもらいたいという願いを持つことは、自分のわがままでしかないということがわかった。
自分と相手は何もかも別人である。相手が自分の思うように変わってくれないことにヤキモキするよりも、自分の考え方や行動を変えるほうがはるかにラクだ。
 
それからもう一つ、人に何かを求めることから解放されると、とても生きやすくなるということがわかった。
「私がこれだけ努力しているのだから、あの人にも何かしてもらいたい」
「なぜあの人は私を助けてくれないのか」
などと他人への要望を抱えるより、自分一人で何事にも対処できるようになったほうが、もっと人生は楽しめる。自分自身の成長にもつながっていく。
 
靴下の脱ぎ捨てから派生した哲学は思いのほか広がりを見せ、私の仕事スキルの向上や、コミュニケーションの課題解決にも結びついていった。
 
そういえばそもそも、家事をしてもらいたいために結婚したわけではなかった。彼の魅力は家事のスキルではなく、他にある。
さて、今日もせっせと靴下を拾い、自己啓発に努めよう。
 
 
 
 
***
 
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2020-11-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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