メディアグランプリ

マンモス菌 vs 好奇心と進化のリレー、あるいは人柱


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:大隈真波(ライティング・ゼミ集中コース)
 
 
のっけから注意事項をお知らせしたい。この記事で触れる「マンモス菌」について、筆者は正しいエビデンスを持っていません。そのため、身体への影響に関しては、触れていませんし、飲用も勧めません。マンモス菌を手に入れる際は、自己責任でお願いいたします。
 
さて、カスピ海ヨーグルトを覚えているだろうか? 粉末状の菌や、カスピ海ヨーグルトの一部に、牛乳を加えることでヨーグルトを作ることができる。少量の菌と牛乳があれば、どんどんヨーグルトを増やしていくことができるのだ。
 
カスピ海ヨーグルトと同じように、気軽に培養することができるマンモス菌をいただいた。
 
マンモス菌。聞いたことがあるだろうか? インパクトのあるパワーワードである。
 
マンモス菌をわたしにくださった方は、「このマンモス菌というのは、どうやら北極で発掘された、マンモスの体内から見つかったらしい」と、適当なことを言っていたが、調べてみたところ「マンモスと同じ時代の地層で見つかったバクテリア菌」、というだけのようだった。
 
マンモス菌にときめきを覚えたわたしのロマンを返してほしい。
 
マンモス菌は、糖分を栄養にして増える。オレンジジュースで培養されたものをいただいたので、ほとんどオレンジジュースにしか見えないそれを、少し飲んでみた。
 
オレンジスカッシュのようにしゅわっとした、炭酸になっている。味は、オレンジそのものとは違う、オレンジ風味の酸味が少し強いような、ちょっと不思議な味だった。
 
そして、飲んだあとは、おなかのなかが、ぽわっと暖かくなった。
 
発酵が進むと、ジュースで培養しているマンモス菌は酢のようになり、やがて低めのアルコールへと変わるのだそうだ。
 
350万年前のバクテリアを家で培養して飲む。想像できないほどの昔の菌を、体内に入れる。不思議である。
 
そして、マンモス菌が350万年という月日を永久凍土のなかで生き残っていた、というのも面白い。途方もなく遠い時代から、現在地球を支配している人間に培養され、いま消費されている。マンモス菌自身、想像だにしなかっただろう。
 
人類は、子孫を残すことで種をつなぐ、命のリレーをしてきた。自分自身の分身を増やし続けていくマンモス菌とは、違う方法で、連綿と続く長い歴史を生き残ってきた。
 
自分のクローンを増やすことで残ったマンモス菌と、交配や記憶や知識の継承によって、心身を少しずつ変化させながら生き残ってきた人類。
 
その生き方は、直線と螺旋の違いを想起させる。
 
そうして、長い間、交わることのなかった人類とマンモス菌というふたつの種が、わたしの胃の中で融合しているのかと思うと、不思議な気持ちになる。じわりとしたお腹のなかの暖かさを感じながら、マンモス菌のように、「しぶとく生きよう」という気持ちになりさえする。
 
眉唾感のあるものなので、今後、マンモス菌が流行することはないだろう。
 
そんなものに、飛びついてしまうわたしは、どうにも面白そうなもの、新しいものや古いもの、身近にないものに惹かれる傾向にある。つまり、好奇心が旺盛なのだ。
 
とはいえ、人類が生き残ってきたのも、きっと好奇心のおかげだ。もちろん、好奇心のために落とされた命は数しれないに違いない。
 
よくもまあ、毒のあるフグなんて食べる気になったなと感心するし、茨城名物納豆も、ねばねばして強烈な匂いを発しているにも関わらず、それを食べ、作り続けてきたことにも感嘆する。
 
だって、考えてみてほしい。納豆が偶然できたとしよう。普通であれば、腐っていると判断して、捨てるだろう。しかし好奇心のためなのか、それしか食べるものがなかったからなのか、食べる。もうその時点でどうかと思うのだが、食べてみて、問題がなかったとする。
 
さあ、その次はどうしようか? 普通、それを作って広めようという気になるだろうか?
 
スーパーやコンビニで納豆のパックを見かけるたびに、よく、いまのいままで、こんな食品が残っているなあ、と思わずにはいられない。発酵食品が身体にいいということがわかったのは、納豆が広まってから随分経ってからのことだろう。
 
ひとりが好奇心を持って食べたとしても、きっと後世に残るものにはならなかった。同じように好奇心をもって食べるひとが、たくさんいたからこそ、納豆は現代にも残っているんだろうな、と思うのだ。
 
もしかしたら、と思う。
 
好奇心からマンモス菌を飲用しているひとは、いまはとても少ない。しかし、何らかのきっかけで、マンモス菌について多くの人が知ることになり、飲用し始めるかもしれない。
 
そうなったとき、マンモス菌は納豆のような食文化の一種として後世に残っていくのかもしれないと考えれば、眉唾っぽいものに関心を持つのも、悪くないのではないか、と思う。
 
もちろん、それはわたしの自己責任だから、わたしになにかあったとき、その問題はわたしが引き受ける。この記事では、マンモス菌の身体への影響などについては触れなかったし、飲用を推奨もしない。ただ、こんな珍しいものがある、と紹介するにとどめている。
 
しつこいようだが、マンモス菌は推奨しない。
 
しかし、好奇心のままに、なにか新しいものを食に取り入れたり、生活のなかで試したりすることが、のちのちの文化をつくるかもしれない。だから、わたしもあなたも、好奇心をなくさずに、生きようじゃないですか。
 
自分の気持を満たすためにとどまらず、それが未来の人類のためになるのかもしれないから。
 
 
 
 
***
 
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2020-11-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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