我が家の次男は師匠
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記事:藤井明子(ライティング・ゼミ日曜コース)
お日さまが上がりだした6時過ぎ、目覚ましに起こされることなく一人で布団からむくっと起き上がる。「おはよう」と声かけると、「おはよう、良く寝た」とすっきりした顔で答える。起きるなり、枕元においてあったお気に入りのおもちゃを手にとり、それから一日が始まる。
我が家の次男の朝の始まりである。
5歳になった次男は、3人兄弟の末っ子である。
私たち夫婦にとって最後の子どもで、長女とは7歳、長男とは4歳年が離れている。
手探りですべてが初めての長女の育児、同じ親から生まれたとは思えないほどに長女とは性格も好みも違う長男の育児を経て、次男が生まれた。
母親歴7年を経て、次男がやってきた。
次男を産むときには、一人でタクシーに乗り産院に向かい、分娩室でお腹につけたモニターのデータが移される画面を見ながら、その時を待つ余裕さえあった。
次男が生まれたのは夜中だったし、まだ幼かった長女と長男は自宅で旦那さんと一緒だったから、私は一人で次男を産んだ。
次男の生まれたての写真は数枚で、私が分娩台の上からなんとかとることができた。
旦那さんが「調子どう?」と電話してきたときには、「え?生まれたよ、今、分娩台の上で抱っこしているよ」と言ったら、とてもびっくりしていた。
そのような感じで、3回目の出産、母親歴7年ともなると、余裕が出てきていた。
次男の育児は、最後の赤ちゃん、最後の1歳児、最後の2歳児、最後の3歳、ともうこれで次はないのだと思うと、いとおしく感じるばかりだ。
保育園の帰り、自転車の後ろの乗りながらのこと。
「ねえ、お母さん、お月さまがぼくのことをみているよ。ずっと、ぼくのことをおいかけてくるよ。僕の事だいすきなのかなー」
またある日には、
「みて、お星さまが僕をいているよ」
「みんな、ぼくについておいでー、お星さま集まっておいで―」
そんな言葉を発し、家に向かって急いで自転車をこいでいる親の私では気づかなかったことに気づかせてくれている。
長女の時のも、長男の時にも、はっとさせられる言葉があったのだと思うのだが、残念ながらあまり覚えていないのである。それくらい日々の育児に必死だったのだ。
さて、話を次男の話に戻そう。
次男に「自分のどんなところが好き?」と聞くと
自信満々の得意げな顔で「全部!」と答える。
そして、「大きくなったら何なりたい?」と聞くと、
「警察官に、仮面ライダーに、お笑い芸人やって、泥棒をつかまえる」と答える。
ある日には、「僕ね、はちさん役にきまったよ。○○君はさる役、○○ちゃんはかにさん役なんだよ」と言い、その日から毎日のようにお遊戯会の劇で歌う歌を声高らかに歌っていた。
リズムが少し早くなる部分は、まだたどたどしい言葉で歌詞を歌うから、それがまたとてもかわいい。意欲的に家でも、保育園でも練習をしていた。本番前日には、「明日は本番だから、たくさんご飯食べて、大きな声を出すんだ」と張り切っていた。いざ、本番当日、朝ごはんはいつも通りに食べた後、しおらしい顔つきで、「僕、ドキドキしちゃうし、お腹が痛いから、保育園お休みしなくちゃいけないかもしれない」と言った。昨日まで張り切っていたのに、本番当日になってお腹が痛いから出たくないなんて、せっかく劇をみるために仕事のお休みをとったのにー、と一瞬頭によぎったのだが、とりあえず劇に出られなくてもいいからと言い、保育園に連れて行った。保育園に預けて、私一人になって本番が始まるのを待った。その時ふと、お休みしたいって言えるなんて、いいな、と思った。やりたくない気持ちを伝えられる、相手がどう思うかとか気にしないで、自分の気持ちを伝えられるって、大人になるとできそうで、とても難しいことではないか。
自分の全部が好きで、なりたいものはなんだってできる! と確信に満ち溢れている。自分の気持ちを伝えられる。
そんな次男の様子をみて、親のできることってほとんどないな、と思う。いや、この5歳のままのわくわくした気持ち、何だってなれる気持ち、自分が自分の全部を好きな気持ち、自分の気持ちを伝えてもいいのだと思う事、それを大切にできるように見守るだけなのかもしれないと思わされる。
ちなみに、お遊戯会本番の次男はというと、はずかしそうに、黄色い帽子をかぶって、舞台に立っていました。セリフも大きな声で言い、「人間っていいな」の歌を一生懸命大きな声で歌う姿をみて、また、一つ成長したのだなと気づいた母でした。
我が家の最後の育児は、教わる事ばかりである。これからもどんなことを教わるのか、楽しみである。
***
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