正解の道はない
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:森嵜真由(チーム天狼院)
名古屋では珍しく雪が降り積もった2020年の大晦日。
サクサクと誰も歩いていない道に足跡をつけながら、私は3年前の大雪の日を思い出していた。
3年前の大雪の日、忘れもしない大雪の日。高校3年生だった私は、そんな大雪の中、センター試験当日を迎えたのである。
当時の私にとっては、天下分け目の戦いも同然だった。
順調に社会の試験を終えて、次は一番得意な国語の試験となった。この試験には限られた時間の中で大量の問題を解くための自分ルールを各々設定している人が多い。例に漏れず、私も自分ルール所有者だ。国語の試験は、現代文と古典の分野に分かれている。古典の分野から問題を解くことと、試験残りの10分は見直しにあてるというのが国語における私のルールだった。
国語の試験が定刻通りに始まり、いつも通り古典分野を先に終え、現代文の中の評論の終わりがけの問題で一瞬アレ? と思ったのが、今思えば始まりだったと思う。
この問題これで良かったんだっけ? 自分なりの解答を出したものの、不安になった。今ココで考え込んだらドツボにはまる気がする、と無理矢理思い直して、ペラリと次の小説の本文を懸命に追った。でも、文章を追っても追っても、なぜか頭に入ってこなかった。何回も読み直して、ようやく内容を理解して、問題を解いていく。いつもなら残り10分弱は見直しに当てるけど、その場でパパッと名前と受験番号を確認して、時間目一杯小説に当てることにした。間に合うのか……いやいや今そんなこと考えるな! と言い聞かせる。今思えば、その思考に陥った時点で、もう遅い。最後の問題に差し掛かったその時、「試験終了、ペンを置いてください」
急速に心拍数が上がった。暖かい室内にも関わらず、ペンを持っていた左手は雪のように冷えていく。やってしまった、と思った。まさか得意な国語で、と思った。最後の問題は、二つ選択肢を選ぶやつだった。つまり、失点も二倍だ。
結論から言うと、私はセンター試験でコケたのである。しかも得意な国語に足を引っ張られる形で。
自己採点をし終えて、絶望した。天下分け目の、当時の私史上一番大切な戦いに負けたのである。志望していた大学は、センター試験の点数が勝敗を分けるくらい重視されていた大学だったから、目標点数に届かない時点で、志望校を変えると前から決めていた。この大学に行けないなら、正直もうどこでも良いと思っていた。
人前であまり泣かない私が、ドン引くくらい泣くものだから、先生が見かねて、進路相談する前に私を呼び出した。もしかして諦めのつかない私を説得するのかなと思った。死ぬほど泣いていたけど、それは現実を受け止めて諦めたからこそだった。
あきらめたらそこで試合終了ですよと安西先生は言ったけれど、試合が終了したら諦めるしかないんですよ、と私は言いたかった。
もう諦めるしかないことはわかってます、と声に出そうとしたものの涙で声が震えて、言葉にすることができなかった。
少しの沈黙の後、先生は、
「選んだ道を正解にするのよ」
と優しく話しだした。正解の道なんて存在しない、と。自分で選んだ道を自分で正解にするんだよ、と。今までの自分にはない考え方だった。負けを正当化する常套句だと当時絶望していた私は思っていた。信頼している先生にそんなことを言わせた自分がみっともなかった。でも、その言葉で救われたのも事実だ。
結局進学したのは、当時の第一志望大学ではない。どこでも良いや、と本気で思っていたが、進路相談を重ねるうちに、高校二年生の時に行ったオープンキャンパスで行った大学の説明会で話していた先輩のプレゼンがめちゃくちゃかっこいいと思ったことを思い出した。自分が持っている経験を快活に話す先輩はキラキラしていた。だから行くのは、その大学にした。
大学生になってもう4年目になる。最初の2年間は、部活に打ち込んだ。面白い人達にたくさん出会った。挑戦したいことは何でもやると決めていたから、留学もした。帰国してからは、自己投資として色んな勉強を始めた。今年は、就職活動が本格化する年である。振り返るには、少し早いけれど、私の大学生活は充実していたと言える。この大学に進学して良かったと今なら自信を持って言える。これを“選んだ道を正解にする”ということなんじゃないかと思う。希望の道を選べる努力は勿論必要である。ただ、どんな道を選んだとしても、それ以降の行動で人生は良くも悪くもどんな風にでも変わるのだろう。
あの日、先生は私の負けを正当化するために、この言葉を言ったのではなかった。センター試験は天下分け目の戦いじゃないし、私は決して負けたわけでない、と伝えようとしていたのである。そのことにようやく気づいた。この先もこの言葉を胸に止めて、道を選んでいきたい。
***
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