僕の幼なじみは注射器
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記事:後藤 修 (ライティング・ゼミ日曜コース)
先月半ばから新型コロナウイルスのワクチン接種が始まった。
はじめは、医療関係者の方から始まって、徐々に一般の方が接種を受ける予定になっている
僕は注射が好きな人でない。人間ドッグで血液検査をする時に注射をされる前に
看護師さんに「宜しくお願いします」と言いながら、顔面がひきつっているのを感じるような怖がりの人だ。今回のコロナワクチン接種も緊張した顔で受けるだろう。
さて、注射を打つときは予告があるものだが、僕は‘予告なし’でいきなり
打たれる注射がある。それは僕の幼なじみだ。幼なじみの言葉はまさに注射器だ。
僕と幼なじみは近所同士だった。幼稚園と小学校、中学校、高校と同じ学校に通っていた。
ここまでは、たまにある話だろうが、僕と彼は中学、高校で同じソフトテニス部
に所属して、中高一貫でテニスのペアを組むという不可思議な関係だった。
だから、彼とは学生生活の大半の時間を過ごした。話題は多岐にわたった。
勉強のこと、恋のこと、部活のこと、そして、生き方のこと。
こういう長い時間を過ごしいると、関係は鷹揚というか横柄なものになるものだ。
特に、僕が彼に電話をして時が顕著だ。彼は電話口で「おう! なんだ?」と言ってから、すぐ電話をガチャリと切る! 僕は(またか……)といつも唖然とするのだ。
こういう腐れ縁でお互いを知りつくしているからこそ、彼の一刺しは激烈だ。
2年前、年末に高校の部活の仲間が居酒屋に集まり、忘年会が開かれた。
毎年の恒例行事で、それぞれが自分の家族や仕事のことを思い思いに話をして盛り上がる。
僕を除いて、メンバーは家族がいるので、必ず「僕が結婚するのか、結婚するなら
いつか?」と話題に上がるのだ。
その時も、いつものような調子でその話題が上がった。話題に合わせるように僕は、婚活をたまにやったりしているけど、なかなか縁がなくて進まないんだとか体が硬くて健康に不安を感じ続けて、なかなか行動できないから消極的になっちゃうんだよねという話を彼らに話していた。
すると、僕の幼なじみが突然、僕に言葉を投げた。
「おまえはいつもそう言ってな、全然変わらないんだよ!!」
さらに彼は言った。
「俺らはもう45歳なんだぞ? もう、次の世代のために何をやってあげるかを考えなきゃいけない世代なんだ。なのに、お前はいつまで、経っても、健康が不安だから行動できないとか言って子供じみすぎている! 俺らも色々抱えながら、背負いながら生きているんだ! いい加減に覚悟を決めて生きていったらどうなんだ!!」
太い太い注射器が僕の体を貫通するようだった。それから、僕には悔しさやら情けなさやら
いろんな感情が湧いてきた。そして、「そうは言っても、健康が不安なら積極的になれないんだよ、なかなか……」
僕は弱々しく言い返した。しばらくその場は沈黙の時間が流れた。
メンバーの1人が僕に「彼はお前の幼なじみだからこそ、お前に厳しく言ってくれんだよ。
心底、おまえが心配だからこそ言える言葉だよ。しかし、お前らの関係はすごいな」
と話した。他のメンバーもそうだ、そうだと声を合わせた。
僕はある程度、納得はしたが腹もたっていたので、幼なじみに「お前は人を思いやる
心がゼロだよ!!」と言い放った。
僕は「くそー悔しい! けど、当たっている……」幼なじみの言葉は芯をついていた。その後に
僕の心に新しい力が宿った。
まさに、注射されて、その後にウイルスを倒す抗体ができるように。
彼に‘劇薬’を打たれた数か月後に、はコーチングと出会う。このセミナーを知った時に
‘これが僕を変える!!’ と確信し、受講。そして、今は近い将来に独立を志している
そして、体の硬直する症状も和らいできて、これからの
活動に明るい兆しが見え始めてきている。
彼の言葉は僕の弱気な虫を退治し強気な僕へ目覚めさせるように機能したのだ。
彼の言葉が猛烈に僕を後押ししてくれた。
幼なじみには、コロナウイルスの影響で、一昨年の年末から会っていない。
幼なじみの痛烈な‘接種’からだいぶ経つが、あの時の僕より堂々と自信を持って
自分のことを話すことが出来ている。
だからコロナウイルスが収束した後、彼に会ったらかける初めの一言は決まっている。
「お前の言葉は本当に腹が立ったわ。まるで、注射器だよ! でも、すごい良薬だったよ。こんなにも変われてさ! 本当にありがとうな」 早く、彼にこんな風に話をしたい。
***
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