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惚れ薬を飲まされて……


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記事:小泉琴子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
私は泣いていた。
夜寝る前に思い出して泣き、朝起きて思い出して泣いた。
 
久しぶりに泣いた、と思った。
前に泣いたのはいつだろうか。全く覚えていない。
ただ悲しくて泣いている、というよりは感動して心あふれて泣いている感じだった。
ネガティブな感情は一切なく、むしろすがすがしさを感じながらも、自然と涙が出てくる。
 
いつもなら、月曜日から仕事が始まるので、その前日の日曜日は23時には寝るようにしているのだが、その日は深夜1時を過ぎても眠れなかった。
生きていることに感謝があふれて、ドキドキと涙が止まらないのだ。
 
それは恋に落ちた、というより惚れ薬を飲まされたようだった。
あまりにも突然で、自分の心の中で何が起きているのかわからない。
落ち着いている早く寝ないと、と考えている自分がいる一方で、涙はなぜか出てくる。
自分でもよくわからない状態だった。
 
この原因の正体は、一冊の小説だった。
タイトルは、『夢をかなえるゾウ』
 
高校生の時からこのシリーズは好きで、愛読していた。
この度、シリーズ第4作目が出版されたと書店で知り、なるべく節約したかった私は図書館に予約を入れていた。
予約を入れてから半年は経っただろうか。すっかりその本のことは忘れていたのだが、先日図書館から、予約した本が確保できたと連絡があったのだった。
 
図書館は、家からあまり近いとは言えない場所にあり、開館時間も限られていることからこれまでは予約をしても、取りに行くことができないことが多かった。
平日は開館時間内に仕事の関係で行くことができないし、休みの日もなにかしら予定が入って開館時間に間に合わないのだ。
 
だが、今回は取りにいかなければ、と思った。
本を確保してくれているのは1週間である。
早速連絡があった週の土曜日に予定を早く切り上げ、図書館で予約した本を受け取ってきた。
そして、夜ご飯もそこそこにその日中に早速読み始めたらこの有り様となってしまったのだ。
 
この本は、シリーズ史上最高だと思う。
これまでは、どちらかというと自己啓発本のような要素も強く、お笑いのエッセンスもあり、楽しむために読むような感じでとらえていた。
実用的なやり方も記載されているので、ビジネス書のように自分なりに行動するための本だった。
たまに、感動的なシーンはあったが泣くなんてことはなかった。
 
今回のシリーズ4は、死がテーマとして描かれているが、私が感動したポイントはそこではなかった。
1つ1つの人生への洞察が、深いのである。
それでいて、お笑いの要素も多くあり、全くネガティブにならない状態で泣くという不思議な状態になっていたのだった。
 
特に後半部分は、私の人生に語りかけられているようだった。
夢を追うということは、今の人生に何か不満があるから憧れるのだ。
だからといって、今の人生をないがしろにしてはいけない。一瞬一瞬が尊い……。
 
忘れかけていたことを思い出させてくれた。
 
読み終わった後は、惚れ薬を飲まされたように世界が違って見えた。
よく恋に落ちると世界がカラフルで色眼鏡をかけたようだ、というがまさにそんな状態だった。
ふわふわと気持ちが不安定なところもありながら、些細なことにも感動できる状態になっていたのだ。
 
もともと、読書は好きで小さいころから数多くの小説を読んでいた。
だが大学の頃くらいからか、小説はあまり読まないようになった。
ものすごく感情移入してしまい、日常生活に支障が出てしまうのだ。
 
やらないといけない課題があっても、本の続きが気になり手につかなくなるのはもちろんのこと、ものすごく感情的になったり、夜に眠れなくなったり、突然悲しくなったり、本の世界に入り込んでしまうのだ。
 
油断していた。
まさか、この本でこんな状態になるとは思っていなかった。
 
自分の人生を振り返る機会は、忙しい日々の中ではなかなかない。
日々やらなければいけないことと、したいことに追われ、大きな時間軸で考える時間は意識的にとらないとなかなか取れない。
 
1月に多くの人は新年の目標を立てていると思うが、どれくらいの人がそれを継続しているのだろうか。
私は、目標の内容はおろか、1月に目標を立てたことさえ今となっては忘れている一人である。
 
ただ、そういったできていない自分にも自己嫌悪に陥らなくて済む色眼鏡を私は今かけられている。
目標に縛られすぎず、今を生きる、そのバランスを模索していきたい。
 
この恋は、いつ冷めるのだろうか。
冷めない恋はないというのだから、また普通の状態に戻る日が来るのだろう。
 
恋は人生を成長させてくれるという。
冷めた後も、この出会いによって自分自身が少しでも成長できていればいいな、と思う。
 
 
 
 
***
 
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2021-03-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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