目指せ、直訳からの脱却! 〜もうひとつ先の英語の学習方法〜
*この記事は、「リーディング・ライティング講座」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
記事:菊田桃子(リーディング・ライティング講座)
英語の学習をしていて、もう一歩先に進みたいとき、次はどうしたらいいだろう。
使える単語やフレーズをさらに増やす。
仕事や語学学校で英語によるコミュニケーションの場を増やす。
さらに思い切って、留学しちゃう。
日常会話レベルの英語はなんとなく使いこなせてきたけど、レベルアップが停滞しているな、と私が感じていた時、英語によるコミュニケーションのレベルを格段にあげた本が2冊ある。
それは英語学習のために出版された本ではない。
それでも、英語の文法書1冊を読み終えたくらいの影響力はあったと思う。
1冊はロラン・バルト(宗 左近訳)による『表徴の帝国』。
『表徴の帝国』はフランスの哲学者、評論家であるロラン・バルトが来日した際、彼の独自の視点から日本の文化を考察し、論じた本である。
日本語訳の本ではあるが、言い回しや言葉が難しく、ここでいう「表徴」とは何か? 等、全てを理解する事は難しい。
しかし、西洋人の視点から日本が語られる事によって、日本に対する私の視点との相違がなんとなく理解出来た。
そして、なんとなくでもその相違を知った事で、物事に対する私の視点が日本人特有のものであるにも関わらず、それをそのまま表現すれば誰にでも伝わると誤解していた事に気が付いたのだ。
英語で話すとき、私の頭の中では、
日本語を英語にしてから会話をしていた。
そうすると、どうしても日本語の直訳となってしまい、その直訳が西洋人には伝わりにくい、ということに気が付けずにいた。
しかし、そこに西洋人的な視点を踏まえて説明すると、話がスムーズに伝わることが多くなったのだ。
日本人として日本で育った私には当たり前の事柄。
違う文化の人から見ると、その当たり前は異国の特殊な文化だったりする。
それに対して、その人の文化から一番近い意味の単語を選んで説明する必要がある。
それがわかったことで、私の英語の表現方法が変わったのだ。
また、英語から日本語の場合も直訳をせずに、日本人の頭にすんなり入ってくる表現を意識して選ぶようになった。
私の英語力向上にとって欠かせないもう1冊は、
谷崎潤一郎による随筆、『陰翳礼讃』である。
書かれているのは英語力向上に直接関係する内容ではないが、この本との出会いのおかげで、異文化の人とのコミュニケーションの幅が広がり、結果的に私の英語力が向上したのだ。
昭和初期に書かれたこの本では、西洋文化が日本の生活に浸透していく中で、伝統的な日本の生活様式や文化が変化していく様子が語られている。
こうした、西洋と東洋の文化の違いについての考察は、日本の文化を説明する時に使えるネタとして大変重宝する。
『陰翳礼讃』でたびたび出てくる
西洋は「光の重なり」を好むのに対して日本の文化は「暗がりの中の鈍い光」に美を求める。
という考え方を前提にして西洋と日本を比較してみると、多くの場面で説明ができ、あてはめゲームのようで面白い。
銀食器や白い陶器に対しての漆器
ルビーやエメラルドに対しての翡翠
清んだコンソメスープに対しての味噌汁
透明のゼリーに対しての羊羹
いくらでも、出てくる。
西洋では、シミひとつない美しさ、純粋さに重きを置く。
その観点からは、日本の“自然そのまま”または“人の手が触れることによって変化した古さ”は野暮ったく、洗練されていないと感じられることもあるという。
しかし、我々日本人はそこに美しさを見出し、大切にしていることを説明すると、立派な文化としてリスペクトの対象となる。
実は、この本に出会う前の私は、その日本の美しさに気づいていなかった。
漆器よりもピカピカの白い食器が好きだったし、味噌汁よりもコンソメスープを選ぶ。日本の伝統的な建造物の内部は薄暗くて、何だか怖かった。
私自身が自分の国の文化をリスペクトしていなかった。
『陰翳礼讃』によって、日本の暗がりとそこにある光の美しさ、それを楽しむ方法を知り、初めて自分の国が持つ奥深さに気づいたのだ。
その気づきは、自分が何者なのか、どんな国の人間なのかを知り、自分の国の文化に誇りを持たせてくれるきっかけとなった。
現在、気軽に海外を行き来できない状態にある中で、海外からのゲストと直接触れ合う機会はほとんどない。
だからこそ、この機会に日本についてもっと深く知ろう! と勉強中だ。
日本文化の深い所に行けば行くほど、英語での直訳が難しくなっていく。
もしかしたら、今後どこかで海外からのゲストに説明する機会があるかもしれない。
その時のために、私はどんな英語表現が合うかを試行錯誤しながらネタ帖に書き溜めている。そしてそれは、今では私の新しい英語勉強方法のひとつとなっているのだ。
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