レタッチ好きのライフワーク
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:園部仁美(ライティング・ゼミ集中コース)
レタッチとは忌み嫌われるものである。
くびれが細すぎ、肌がツルツルで嘘っぽい、足と一緒に背景も伸びている。
見つけた人は鬼の首をとったかのようにSNSに晒す。
でも考えて見てほしい。化粧をすることと同じではないだろうか?
肌を綺麗に見せるためファンデーションをするし、目を大きくするためにマスカラや付けまつげ、アイラインを引く。くびれを作ったり足を長くするのも同じ。スリムにすらっと見えるように、コルセット、ピンヒールを身につけますよね?
レタッチをすることは悪ではないと私は思う。体調が悪くて普段と変わってしまった肌や、ムクミを直すというような被写体側の理由だけではない。レンズで歪んだ被写体を戻す。背景に写りすぎているものを消し、メインを際立たせる。服がカッコよく写るライティングを優先し、モデルの顔の影が濃くなってしまったので影を撮るとか。写真を成立させるために必要なことなのだ。
ではなぜ批判が出るのか?
それは明らかにやりすぎだからだ。
モデルのくびれが折れそうなほど細い。何頭身ですか? と思うほど足が長い。こんな画像を目にしたことが皆さんも一度はあるのではないだろうか?
このやりすぎのイメージがとにかく強い。これを逆手にとって「この写真はノーレタッチです」と言う人もでるくらい、レタッチは悪という風潮になっている。
なぜ私がこんなにレタッチを擁護するのか。
それはレタッチの素晴らしさを知っているから。
写真学校にも行っていない私が、カメラマンを目指しスタジオアシスタントになったのは二十代後半。卒業まで最短でも2年。そこから雑誌や広告カメラマンを目指す子は師匠についてさらに師匠の弟子になり、3〜5年やって運がよければデービュー。弟子時代にお世話になった担当や、そのアシスタントから少しずつ仕事をもらい、カメラマンとして確立していくのが一般的。
この後まだ弟子生活が3年なんて私には到底無理だった。どうしようかと思っていたとき、同行した先輩カメラマンの撮影現場である出来事が起こった。
それは、浴衣撮影でとあるカットが終わり、モデルが別の浴衣に着替えているときだった。撮影した画像をパソコンで見て、急に担当が叫んだ。
「ピアス変え忘れた!」
画像を確認すると、2つ前の浴衣からずっと同じピアスのまま。「ちょっと貸して」と先輩に言われ私はパソコンを渡してほんの数秒後。「これでいかがでしょう?」なんとピアスは綺麗さっぱりなくなっていた。
え! いまの一瞬で?!
担当は平謝りだったが先輩は大丈夫ですよと顔色一つ変えず、その後の撮影もスムーズに終わった。
この一件以来、私はレタッチの魔力にとりつかれたのである。その後運良くその先輩が推薦して下さり、レタッチや撮影をする部署に配属されることになった。
それからは怒涛だった。最初の数カ月で基礎を学ぶと、あとは朝から晩までレタッチ三昧だった。それと同時に先輩の撮影に付き添いサポートをしつつ、後半になるとカメラマンとして単独で現場に行くことも増え始めた。
しかし、ここでの修行は2年間という決まりだった。
今私が所属しているチームから誘いを受けていたからだ。私のわがままを受け入れ、約束通り快く解き放ってくれた先輩には本当に感謝しかない。
こうして私はカメラマンとして独り立ちした。
カメラマンになってからは現場を通してどんどん実践を積んでいった。企業系の撮影をすることが多く、余分な代金もかかることもありレタッチすることはほとんどなくなった。
でも心の底ではこの髪の流れを直してあげたい。しわを薄くしてあげたい。などレタッチをすればもっとよくなるのにと言うモヤモヤがあった。それが溜まりに溜まって爆発しそうになるちょうどそのとき、従姉妹から婚活写真を撮って欲しいと頼まれた。久しぶりにレタッチができると思った私は2つ返事で了承した。
当日はとっても楽しかった。前にカメラマンに撮ってもらったときは「いいのが撮れた!」と言われ、何がいいのかわからないまま押し切られ、満足のいく写真が出来なかったと聞いていたので、撮った写真を2人でしっかり確認しながら進めた。撮ったものを見せると被写体側もどう撮られているのかがわかる。自分は笑っているつもりでも意外と笑っていなかったり、そもそも自分の顔、体型をわかっていないということもある。自分のなかの自分像と、カメラに写る自分は結構違う。普段自分を意識しているモデルでない限りそれは当たり前。だから、画像を確認しながら自分の思っている自分像と実際の写りを擦り合わせ、その上でその人にとってより良い写り方を探していく。これは時間がないとできない。しっかりと向き合って最善を尽くす。私がやりたい撮影はこれだったのだなと思った。
その後使う写真を決めてもらい、レタッチをし、本人のオッケーを確認してから納品した。早速彼女は結婚相談所でその写真を使ってくれているらしい。同じく婚活を苦しんだ身として、少しでも彼女の力になれたならとても嬉しい。陰ながら応援している。
それ以来私はずっと考えていた。
婚活を頑張っている人を応援したい。それに婚活写真だったら私の学んだレタッチが存分に活かせる。でも仕事として行うとレタッチはかなり金額が発生するので、一般の方はなかなか頼まないだろう。金額がネックだった。
それが、全然関係のないテレビの情報番組みを眺めていたとき急にひらめいた。
恩返しにすればいいんだ!
恩返しならお金をもらう必要もない。ちょうど昨年末結婚もし、報告も兼ねてお世話になった方々に何かお返しをしたいと思っていたところだった。仕事でないなら私にとっても無理のないスケジュールで、満足行くものを作れる。1ヶ月に1人なら他の仕事をしながらでも続けられるのではないか。
次々に頭の中に浮かんできてあっという間に考えがまとまった。
私はこれをノートに書き出した。
「1ヶ月に1人だけ、婚活写真を無償で撮る!」
①知り合いもしくは紹介のみ
自分の知っている人、又はその大切な人達に恩返しの一環で。
②1ヶ月に1人まで
レタッチをしっかりやりたいのと、天気によっては延期になるから。現場の下見もしたい。
③撮影は4カット
2箇所でそれぞれバストアップと全身を撮影。
④レタッチは4枚まで
レタッチしたものを確認してもらい、再度修正もあり。
⑤データでの納品
無償なので印刷、CDに焼くのはしない。
⑥実費
スタジオなど料金が発生する場合は実費のみ請求。
うん! これなら体力的にも金銭面的にも無理なくやっていけそう!
60歳までに312回できる! 312人の撮影ができる!
ワクワクしてきた。
来週記念すべき1人目をとる。職場で大変お世話になった方だ。ロケハンはバッチリ。天気も良好。本人が満足行く写真を絶対撮る!
私の一生のライフワークがこれから始まる。
***
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