命の大切さ
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:武川真美(ライティング・ゼミ集中コース)
結婚して、6年目の冬。私たちに春が来た。
やっと子供ができたのだ。
初めてのことで良く分からなかった私は、報告がてらお姉ちゃんに電話で相談した。
そしたら「子宮外妊娠とかの可能性もあるから、早めに病院に行った方がいいよ」と言われた。
その時、ちょっとした違和感を覚えた。
その日は日曜日だったので、夫と休みが合う金曜日に産婦人科に行くことにした。
しかし、木曜日の夜から出血が始まり、痛みが出てきた。
嫌な予感がしたが、朝を待つことにした。
朝になったら、歩けないほどの痛みになっていた。
車で病院に向かったのだが、車の振動も耐えられないほどの痛みだった。
病院で受付を済ませ、血液検査をして、1時間ほど待合室で待った。
やっと診察室に呼ばれると、エコーでの診察が始まった。
診察が終わると、先生から流産の可能性が高いと言われた。
hCGという数値が高いので、妊娠はしているそうだが、赤ちゃんの袋が見えないそうだ。
「安静にして、しばらく様子を見ましょう。また月曜日に来てください」と言われ、家に帰ることになった。
痛み止めをもらえないか聞いたが、痛みを抑えてしまうと悪化したときに自分で気づきにくいという理由でもらうことができなかった。
「痛みが酷くなったら、救急で来てください」とだけ言われた。
地獄だと思った。
急遽、仕事も休まないといけなくなったため、上司に電話をした。
繁忙期だったので、気が引けたが、理由が理由だったので、快諾してくれた。
休みの許可を取ると、ベッドに横になった。
「お願いだから流れないで」と祈る気持ちで丸二日間を過ごした。
その後、痛みが酷くなることはなかったが、状態は変わらなかった。
月曜日に再び病院へ。
検査をすると、hCGの数値がガクンと下がっていた。
それは流産を意味していた。
「今日はこのまま入院してください。明日の朝、手術をします」と言われ、そのまま入院することになった。
両親も心配して駆けつけてくれた。
出産経験のない私は、手術前の必要な処置があった。
それがめちゃくちゃ痛かった。
その痛みに耐えられず診察室で、絶叫した。叫び続けた。
他の看護師さんが手を握りに来てくれるほど、叫んだ。
処置が終わると、腰を曲げてお腹を抱えながら、なんとか歩いて病室に戻った。
夜は、激痛で眠れなかった。
自転車に乗っていたことが良くなかったのだろうか。
力仕事をしたのがよくなかったのだろうか。
そんなことばかりを考え、自分を責め続けた。
次の日、朝10時から手術をした。
静脈麻酔をしたので、意識はなかったが、30分もかからなかった。
終わるとすぐ家に帰ることができた。
妊娠した実感が無いまま、全てが終わった。
何も考えたくない日が続いた。
仕事にはすぐ復帰したが、3日ほど経つと、また出血と痛みに襲われた。
今度は右の腰が痛い。これは絶対におかしい。私はすぐに病院に向かった。
前回の先生とは違う先生に診てもらうことになって、少し不安になった。
検査が終わると、先生にこう言われた。
「子宮外妊娠ですね。今すぐ手術しましょう」
「はっ?子宮外妊娠?いや、私、三日前に流産の手術したばかりなんですけど」
「流産ではなくて、子宮外妊娠だったようです。今回の手術は……」
丁寧に説明してくれたが、右側の卵管を切除しなければならないということしか頭に残らなかった。
急いで夫に連絡をした。
出張が多い夫は、羽田空港にいた。しかし、出発が遅れていたおかげで、電話が繋がり、ぎりぎりのところで、戻って来てくれた。
私は、歩けるのに車いすで病室に運ばれた。
手術の説明を受け、サインをしたり、術前の処理をしたり、私はされるがままだった。
私の腕は血管が出にくい。血液検査の時は、毎回、看護師泣かせだ。
今回もそうだった。点滴の針がなかなか刺さらない。いろいろな看護師さんが、私の両腕に針を刺しまくったが、うまく刺さらず、医師を呼んできた。
医師も何度か挑戦したが無理だった。
「これから手術で緊張しているんだね。針を刺すと血管が収縮してしまう。もうこれ以上刺されるの嫌だよね?痛いだろうけど、手の甲に刺すね」と言われ、手の甲に刺された。
もうどうにでもなれって感じだった。
全ての処置が終わると、手術室へ。
病院に来て、わずか3時間後には手術室にいた。
現実なのか夢なのかよく分からなくなった。
今回の手術は全身麻酔。術後の痛みも伴う。私は、手術よりも目が覚めるのが怖かった。
「武川さん、武川さん」
気が付くと手術は終わっていた。
夫は、私の無事を確認すると帰っていった。
夜中になると、麻酔が切れてきたのか、激しい痛みに襲われた。
呼吸をするだけで痛い。肋骨が折れてるんじゃないかと思うような痛さだった。
看護師さんにさすってもらったり、ホットパックで温めてもらったりして、なんとか眠りにつけた。
次の日からも痛みは続いた。
手術をしたときに、どうしてもお腹に空気が入ってしまうらしく、それがなくなるまで続くと言われた。
肩にも激痛が走っていた。
仰向けで頭を下にした状態で手術をしたため、肩には負担がかかり、痛みが出るとのことだった。
お腹が痛いから横になりたいのに、横になると肩が痛い。
痛み止めとホットパックを併用していたが、なかなかつらい痛みだった。
歩く練習もさせられた。
トイレまで行けたら合格。
たった1日寝ていただけなのに、立っただけでブラックアウトしそうだった。
看護師さんにサポートされながら、なんとかトイレまで行くことができた。
手術したところが開いてしまうのではないかなど不安もあったが、そんなことはなかった。
手術から5日もすると、だいぶ痛みが和らいできて、1週間後には退院できた。
初期の流産は、お母さんの影響ではないと言われている。
それでも自分を責めたし、「なんで私だけ?」という気持ちもあった。
産婦人科はときに残酷で、「おめでとうございます!このあと、母子手帳をもらいに行ってくださいね」なんて光景を目の前で見ることもあった。
それにしても、1週間に2回も手術をした人はなかなかいないだろう。
お姉ちゃんに言われたとき、嫌な予感がしたのは第六感だったのだろうか。
この経験をして、子供が産まれることは本当に奇跡なんだと身をもって体感した。
私を産んでくれた両親にも感謝の気持ちが生まれた。
あれから2年が経つが、私は、今も子供がいない。
でも、命が燃え尽きるまで、強くたくましく生きようと思う。
***
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