メディアグランプリ

2,000文字から始める50の手習い


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:笠原 康夫(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「どう? 遠慮しなくていいからね。情け容赦なくダメ出しして」
妻の前にパソコン画面をそろそろと差し出し、作りかけの文章を見せる。
気の優しい妻はいつもきまって「いいんじゃない。上手くまとまってると思うよ」と褒め言葉ばかり。身内は身内に優しいから、額面通りに受け止めてはいけないと思いつつも、ついつい妻の褒め言葉にほだされて文章を仕上げる。
 
ここ1ヶ月、習慣になりつつある我が家の週末の光景。私がライティングゼミの週1回の課題に奮闘している時のひとコマ。
 
2ヶ月前、仕事帰りに池袋西口近くの書店にふらりと立ち寄った。面白いコンセプトの書店があると噂に聞いていた。ふらっと店内に入ると若い女性店員さんがすっと近寄ってきて、気さくに話しかけてくれた。(どうやら日本一話しかける本屋と自負しているらしい)
確かに普通の書店っぽくないなぁ、と思いつつ、ふと店の奥に目をやると5、6人掛けのソファーとテーブル、大画面モニタ、ホワイトボード。
店員さん曰く、「ここでゼミをやっているんですよ! 」
書店でゼミ? よくよく聞くと来月からライティングゼミも予定しているとか。
本屋でライティング? と自分の中で疑問がどんどん膨らんでいく。
 
その日はゼミの案内チラシを手にして店を後にした。
ただ膨らんだ疑問の裏で、ライティングを学ぶことに対し、漠然とした関心が沸き始めていた。
 
私は、今年50歳を迎えるごく普通のサラリーマン。特別な専門知識や資格も持ち合わせない。ただ毎日の仕事でビジネス文書を読んだり、書いたり、文章には触れている。ビジネス文書を書くことなら仕事をしながら知らず知らず、訓練されているだろうが、ライティングというと全くの未知の世界。
 
数日後、先日の書店との偶然の出会いに後ろ髪を引かれていた私は、気づけばスマホからライティングゼミの申込み手続きをしていた。
こうしてこれから4ヶ月間にわたり、ライティングに関するイロハを学ぶ講座の受講、そして毎週1回の2,000文字の文章を提出が課せられることになった。
 
50の手習いのライティングはこんなゆるい気持ちで始まった。
 
ライティングを始めて数週間経つと、少しずつ、ライティングを学ぶことの意義や価値を感じるようになった。また、自分の中に少しずつ変化が現れ始めた。
 
一つ目は、
週末の緊張感、ワクワク感がたまらないコト。
週1回、課題の提出が求められる。2,000文字程度の文章を書き、提出するが、これが素人にとっては意外にキツイ。
だが、このプレッシャーが生活にメリハリをつけてくれる。自称M(マゾヒスト)の私にはこの「締め切り」が、適度に心地よい。著名作家が「作家は締め切りがないと書かない」と言うが、今の私は作家の疑似体験をしている気分にもなれるのだ。
 
提出した課題は先生が添削してくれて、丁寧なアドバイスがもらえる。そして一定の基準を満たした文章はホームページに掲載してもらえるのだ。
この結果発表が待ち遠しい。宝くじの当選発表とは違って、こちらは自分のガンバリが評価された証。掲載された時はひときわ達成感がある。
 
二つ目は、
口頭では伝え切れないコトをじっくり自分の言葉で自分のペースで余すことなく表現できるコト。
日常の会話では、話したいことはたくさんあっても自分の考えや思ったことを1から10まですべて話す機会はほとんどない。ライティングは、自分で考えた主題や構成に沿って、思いのまま自由に表現できる。自分を出し切ることができるのだ。
 
最後は、
文章との向き合い方が変わったコト。
目に触れるあらゆる文章に敏感に反応するようになった。
朝刊や雑誌のコラムにも不思議と目が向く。書き手の意図や文章の構成などに関心が沸くようになった。今まで見過ごしていた身の回りの文章が身近な教材になった。
 
読み方も変わった。書き手の気持ちや意図を探るように読むようになった。
 
話し方も変わった。気づくと話す際にも話の切り出しから話の山場、話の締めくくりまでも気にして話すようになった。
 
また、課題のネタ探しとして、常に身の回りに対し、アンテナを張るようになった。今までは何気なく素通りしていたような景色や事柄に目が向くようになった。
町を歩いていても、電車の中でも、仕事中でも、お風呂の中でも、トイレの中でも……ふとアイデアが浮かんだらメモを欠かさぬようになった。
 
こうしているうちに、五感も冴えてきた。街路樹の緑がより鮮やかに香るように見えてくる。
鳥の鳴き声も、空を舞う蝶も……
 
こうして世の中の見え方、感じ方が変わってきた。
 
50歳を目前にして、モノ好きで始めたライティング。
せっかくだからこの4ヶ月は、とことん楽しみながら学んでみようかな。
この学びを通じて、自分の伸びしろに期待してみようかな……
 
そんな淡い期待を秘めつつ、この週末もパソコンの画面に向かっている。
てにをは辞典を片手に、2,000文字の文章と格闘している。
 
 
 
 
***

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2021-05-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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