つまらないものを「全米が泣いた」級に変化させる方法とは
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:永松 昭徳(ライティングゼミ・平日コース)
今わたしは、とあるカフェでパソコンを開きこの文章を書いています。
自宅だと、テレビやマンガ本、読みかけの小説、サブスクのドラマや映画、撮りためた録画番組など、誘惑が多すぎるのです。
締め切りも近いし集中したい。
そんな思いでこの店に来ました。
しかし、集中力のないわたしは、すらすらと書けているときはいいんですが、ひとたび文章に詰まってしまうと、「ちょっと気晴らし」をはじめてしまうのです。
スマートフォンを取り出し、何かおもしろい記事はないかなとネットニュースサイトを開いてしまう。
10分後、「休憩終わり。さて書き始めようか」と思ったところに、カバンから通知音が聞こえ、またスマートフォンを取り出してしまう。
返信のやり取りをしていると、いつのまにか30分経過しています。
わたしたちが生きている世界は、選択肢が多過ぎます。
魅力的な誘惑だらけです。
「ちょっといいですか~?」というスマホの通知も不定期にやってきます。
もっと集中力を身に着けたい!と思うのですが、意思の弱いわたしはこのような魅力的な誘惑にはなかなか勝てません。
なんかいい方法はないものか、と考えていたら昔のある場面を思い出しました。
スマートフォンがまだ存在しなかったくらい昔の話です。
わたしは1人でフェリーに乗っていました。
目的地到着まで12時間以上かかる船旅でした。
持ってきた文庫本もんでしまったし、甲板で海を眺めるという贅沢もじゅうぶん満喫したわたしは、とくにやることがなくなってしまいました。
まだまだ先は長い……。
退屈しのぎに、休憩室(パブリックコーナー)に行ってみました。
たたみ部屋に座椅子が置いてある空間には、退屈そうな大人たち15名ほど座っていました。あと5人くらいは座れそうです。
とりあえず席に座ったわたしは、周りを見渡しながら、「さてこれからどうしたものか」と考えていました。
いっそのこと眠れてしまえばいいのに、まだ空は明るくいっこうに眠くなりません。
この部屋は眠れない退屈な大人たちが集まった部屋のようです。
最低でも3回は読み込まれたと思われるしわくちゃに折りたたまれたスポーツ新聞が、斜め前のおじさんの座椅子の横に置かれているのが見えました。
この船旅は、新聞や雑誌だけでつぶせるような短い時間ではありませんでした。
外の景色は、同じ表情の海と空がずっと続いているだけ。
おしゃべりするにしても、周りの人に迷惑になりそうなくらい静かな部屋。
見たこともない幼児向けの安っぽい海外アニメが流れているテレビ。
しかも音量がかなり控えめで、意識をテレビに向けないと耳に入ってきません。
内容は、60歳以上の大人たちが興味を持つはずがないであろう内容でした。
チャンネルはこちらで自由に替えれそうもありません。
とにかくみんなやることがないのです。
そんな限定された空間の中で、やることがなく退屈を感じた人間は、こんなときどんな行動をとるのかご存知でしょうか?
人の脳は、その限られた空間の中で少しでも刺激のあるものを探します。
そして、「しかたなく」のレベルであっても、それに興味をしめすように作られているようです。
この空間で1番刺激のあるものといえば……。
それはテレビでした。
幼児向けのアニメで、絵のクオリティも低く、全然魅力的な絵ではありませんでしたが、15人中15人がそのテレビの方を静かに向いていました。
普段、アニメなんか絶対見ることのないような昭和一桁生まれであろうおじさんも、テレビの画面を見ています。
とりあえず退屈をしのげれば、幼児向けのアニメであろうとなんだってよかったんだと思います。
分かりやすいベタな展開で物語は進んでいきます。
みんな無表情です。
でも、みんな静かに画面を見ています。
しかたなく見てるんだろうなと少し気の毒になりました。
いつのまにかわたしは、そのアニメに入り込んでいたんでしょう、ある場面で、思わずクスっと笑ってしまったのです。
「あ…はずかしい…」と思ったと同時に、部屋の大人たちから一斉に笑い声が漏れていました。
「え!?みんなちゃんと見てたんだ!」
普段は決して見るはずのない幼児向けのアニメを見て、15人の大の大人が一緒に笑ってるというこの滑稽な場面を見て、わたしはさらにクスクスと笑ってしまいました。
「全米が泣いた」ならぬ「全老が笑った」というキャッチコピーをつけたくなるほどのウケ率だったのです。
集中力のないわたしにとっては、この場面に解決の大きなヒントが隠されているように思えました。
やることが1個しかないということは、選択肢がないということ。
人は選択肢をなくせば、否が応でも集中力は上がるのではないか。
わたしは、多くの選択肢の中で集中力をアップすることはいったんあきらめてみることにしよう。
そして、どうしてもやりたいこと何か1個だけを持って、誘惑のない環境に身を投じよう。
「他にやることもないから、しかたなくそれをやりはじめる」くらいの感じではじめればいい。
すると「つまらなく思えたもの」の中から、「面白さ」を感じることができるわけだから。
そして、少しの「我慢時間」を経たあとに現れる、「全人類が笑った」級の面白さの待つ世界へ行ってみたいと思いながら、わたしは文章を書いてみることにします。
***
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