アナザースカイ
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:大野裕子(ライティング・ライブ名古屋会場)
「ゆうこ、日本に帰らないで。私、スーツケースに入って日本へついていく!」
オーストラリアパースの空港で私に抱きつく女の子
出会いは25年前
イースターホリデーの旅行だった。
西オーストラリアパースというところに10週間だけ語学学校に通ったことがある。
その時に、イースターホリデーを利用して友人たちと4泊5日のサファリツアーに参加した。
ツアーにはオーストラリア人の家族2組、インドネシア人、日本人の私たち4人が参加していた。
その旅行で私たちはオーストリア人の9歳の女の子の家族と仲良くなった。
女の子の名前はヴィヴィアン。
ノルウェー人のお父さんとオーストラリア人のお母さんのハーフ。
金髪で水色の瞳をした女の子。
とっても可愛かった。
最年少のツアー参加者だったのでみんなにかわいがられていた。
5日間のツアー中に私たちの会話を聞いて日本語も覚えていった。
特に私たちの習慣に興味を持ち面白がって真似をしていた。
「ありがとう」
「いただきます」
「ごちそうさま」
とお辞儀をしたり手を合わせて挨拶をしたりして和ませてくれた。
話していくと、私たちが通っている学校のすぐ近くに彼女たちが住んでいることがわかった。
「今度、みんなで遊びに来ない?」
とお母さんが誘ってくれた。それをきっかけに私たちは学校帰りによく彼女の家へ立ち寄るようになった。
とっても親切で家族のように接してくれた。
よくパーティーもしてくれた。
一緒に日本料理も作って楽しんだりした。とくにエビの天ぷらが好評だった。
とても楽しい時間が過ぎた。
1年が経ち、私が日本へ帰る時がきた。
こんなに素敵な家族とオーストラリアで出会えた。
空港で劇的なお別れをすることになるとは日本を出るときには予想もしなかった。
「また来るね」と言ってお別れをしたが実際はまたはいつになるかは約束できないものだった。
ハグと涙でお別れをした。
透き通るような青い空
大好きな街から日本へ戻った。
それから彼女の家族とクリスマスカードのやり取りが何年も続いた。
娘の高校受験が終わり、春休みに入ったある日のこと。
「ママ、パースへ行きたい」
「え? どうして?」
「ママはよく晴れた日の空を見上げるとよく「パースの空みたい」っていうでしょ」
「そうだっけ? そんなによく言う?」
「うん」
「パースに友達がいるのでしょ。行ってみたい」
娘からの言葉に驚いた。
私はたくさんパースの思い出を彼女に話していたようだ。
そういえば、まだ娘が保育園くらいの時のこと。
ヴィヴィアンが「スーツケースに入って日本についていく!」と言ったことを話したことがある。
話をきいて娘は突然、
「うわーん」と泣き出した。
「どうしたの?」と聞くと
「だって、悲しくなっちゃったんだもん」と言った。
おばあちゃんが
「それは感動したっていうんだよ」と教えたことがあったのを思い出した。
パースに行くには名古屋からシンガポールまで8時間のフライト。そこからさらに4時間のフライト。
長期の休暇を取ることができるのは5日が限度。現地3泊しかできない。
うーん、どうしよう。今しかない! 行こう!
着陸前、だんだん高度が下がっていく。胸は高鳴る。
オレンジ色の光が見えて陸が近づいてくる。
いよいよ到着だ。
ついにアナザースカイ!
たくさんの思い出が蘇る。
あー、懐かしい。
南十字星が輝いている。
あー、またこの地に来ることができた。
翌日、よく晴れて透き通る青い空だった。
あー、この青さ懐かしい。
あのとき毎日見ていた空だ。
オーストラリアのお母さんが待ち合わせ場所に来てくれた。
「ゆうこ! ほんとにゆうこなの! 変わらないわ。嬉しい」
と興奮気味にハグをしてくれた。
時間は一気に縮まった。昨日のことのようにあの時の自分に戻った。
不思議だが急に懐かしくなくなった。
お母さんは娘を見て
「あなたにそっくりね。あなたの娘にまで会えて嬉しいわ」と言われ、やはり時間が経っていることを実感する。
久々にみんなで通ったあの自宅にお邪魔した。
日本から離れた場所が変わりなく存在している。
リビングも庭もみんなで遊んだプールも。
ヴィヴィアンにも再会した。
9歳だった彼女は30歳になっていた。
少女だった彼女が素敵な女性になっていた。
時は流れている。
思い出話しをしていると、お母さんは友人たちの名前もしっかり覚えていた。
そして、みんなが現在どうしているかを興味深く聞いてくれた。
しばらくして
「ゆうこ、こっちに来て」と別の部屋へ誘導された。
すると色あせた和紙の人形を指さす
「これはゆうこからのプレゼントよ。覚えている?」って
21年前のプレゼントを今も大切にしてくれたのだ。
信じられない!
ほかの友人からのプレゼントも同じように大切に飾ってあった。
「これはヨシから」
「これはちづるから」
誰からのプレゼントかもきちんと覚えてくれていた。
この想いに感動。ほんとに素晴らしい人と出会っていた。
さらに、帰る日にはたくさんのお土産を用意してくれていた。
そして私だけでなく日本にいる友人たちにも渡して欲しいと言って、あのころによくお邪魔したメンバー全員に手紙を用意してくれていた。
なんて素敵なの! 20年以上経ってもこんなに変わらず私たちのことを思ってくれて!
保育園のときの娘のように言葉では表現できない気持ちが溢れてきた。
泣き叫びたかった。
「ありがとう」
かけがえのない家族が異国の地にいることを幸せに思う。
私のアナザースカイ
青い空で繋がっている。
***
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