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意外な店名の真相


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記事:山田THX将治(天狼院書塾)
 
 
「何だ??」
いつも通っている道沿いで、不思議な店名の看板を見た時、私は思わずそう呟いた。
正確には、
「なにっー⁉ ⁉」
と、私は車内で叫んでいた筈だ。車内は私一人だったので、その声はかなり大きかったと記憶している。
 
 
普段から私は、混雑渋滞が常習化している新宿駅前を避け、隣の代々木駅前を走る裏道を利用している。頻度は週に2・3度といった具合だ。
そんなに頻繁に通る道沿いなのに、つい先日のこと、冗談としか思えない店名が書かれた看板を見付けた。小さなその店は、タイ焼きを商っている。私はその店で、タイ焼きを購入したことが無いので、詳しいことは不明だが、店頭で焼いている数種類のタイ焼きを販売しているのだと思う。それ位、小さな店だ。
しかも、そこそこの年月が経っている様だ。店の様子で察しが付く。存在に気が付かなかったのは、ひとえに私の不注意のせいだ。
 
その店の看板と幟(のぼり)には、
『名物・天然鯛焼き』
と、大きな文字で書かれていた。私は思わず、
「何、バカなこと書いているんだ」
と、思った。
“鯛焼き”は誰でも知っている。“天然鯛”は、高級魚の代表的なものだ。もしかしたら、日本のどこかに“天然焼き”なる名物があるかも知れない。しかし、『天然鯛焼き』とは一体何なんだ?
車を走らせながら、私は頭の中で妙なツッコみを考えていた。
 
それにしても、『天然鯛焼き』とは妙な名だ。しかも、御丁寧にも‘たい’が平仮名表記でもカタカナ表記でもなく漢字で書かれているからだ。
これはもしかしたら、これは一個千円を超す様な、超高級タイ焼きかもしれない。
これがもし、“天然たこ焼き”なら幾分か納得し易い。天然で獲れた蛸が入った“たこ焼き”と想像が付くからだ。
ところが、タイ焼きだと事情が違ってくる。なにしろ、タイ焼きの中身は、鯛ではなく小豆を使った餡(あん)か、それに近い甘い物と決まっている。
間違っても、タイ焼きを買って、
「鯛が入ってないじゃないか!」
と、怒る者は居ない。
それはまるで、ウィンナー珈琲を頼んで、
「ソーセージが入っていないじゃないか!」
と、怒るのと同じだからだ。
 
「しかし、待てよ」
私の頭は、立て続けに知恵を絞っていた。
「もしかしたら、餡に使っている小豆が天然なのかもしれない」
と、思考の方向性を変えてみた。
「でも、小豆は農産物なので養殖は無いじゃん」
と、直ぐに、乗りツッコみをした。
しかし、そうなると、『天然鯛焼き』なる看板は、果たしてどんなものなのだろう。私の頭は、混乱状態に陥っていた。
「もしかしたら、『天然鯛焼き』は屋号なのでは?」
「天然な店主が焼いているタイ焼きなのでは?」
「単なるシャレなのでは?」
私の志向は、堂々巡りに為っていた。
よくよく考えてみれば、“鯛焼き”は兎も角“天然”は屋号に使える訳が無いと思ったのだ。
 
 
私は、帰宅すると直ぐに、PCのキーを叩いた。『天然鯛焼き』を検索する為だ。
正解は、呆気ないほど簡単に出て来た。
『天然鯛焼き』の検索ページには、
「『天然鯛焼き』=焼き型を使って一尾一尾焼かれたタイ焼き
『普通のタイ焼き』=5個まとめて焼くことが出来る鉄板で焼かれたたい焼き」
と、あった。
要するに、タイ焼き屋さんの元祖・麻布十番の浪花屋さんの様に、一尾ずつ丁寧に焼かれたタイ焼きが“天然物”で、フードコート等で見掛ける5・6個一遍に焼き上がるタイ焼きが普通のタイ焼きなのだ。
 
検索ページを読み進めると、『天然鯛焼き』の特徴として、皮が薄く中身の餡が透けて見えるとか、尾っぽの部分まで餡が入っているとか書いてあった。加えて『天然鯛焼き』の特徴として、一尾ずつ焼くので“みみ”が付くことは無いとあった。
5・6個一遍に鉄板で焼かれる普通のタイ焼きの様に、皮がはみ出す可能性が無いからだそうだ。
 
それより、検索ページには、
「『天然鯛焼き』は、‘一尾・二尾’と数える。普通のタイ焼きは、‘一個・二個’でよい」
と、あった。
そうか、やはり“天然物”は高級なのだと気が付いた。しかも、通常品とは単位を変えることで、高級感が増すものだとも知った。
 
私は、不思議な看板を眼にした御蔭で、一つ賢くなることが出来た。
これからは、タイ焼きを買う際には、
「これ、天然物かい?」
なんて、粋な江戸っ子を気取ってみましょうか。
 
 
このところめっきり寒くなり、暖かい物で小腹を満たしたくなる季節に為った。
久し振りに麻布十番へ出向いて、『天然鯛焼き』でも買ってこようかと思う。
 
いや、今はそうじゃない。
新しい知恵を授けてくれた、代々木の例のお店で、『天然鯛焼き』を買って帰ろう。
 
 
 
 
***
 
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2021-12-15 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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