京都旅行で別世界へ行ってきた
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:蒲生厚子(11月度ライティング・ゼミ 名古屋会場)
「姐さん、どうしちゃったんですか!?」
Face bookのプロフィール写真を変えた瞬間に、後輩の男性から入ってきたコメント。
あれ?
思っていた反応と違う……
その後も女性からは
「すごく素敵! きれいだね」
「艶っぽくていいよ」
など好意的なコメントが続々。
しかし、男性陣からは
「色っぽいというにはちょっと……」
というような微妙な反応があり、複雑な気持ちになった。
私がプロフィール写真を変えようと思ったきっかけは、友人の女の子たちのプロフィール写真だった。
一人はチャイナ服を着たコスプレ写真。
普段の彼女とは別人のご婦人がそこにはいた。
ちょっと懐かしい雰囲気のペタっとした髪型で、上品に椅子に座っていた。
それは絶世の美人に見えた。拍手喝采!
もう一人は花魁の格好をした、アップの写真。
普段は元気で、アクティブに何にでも挑戦するキャリア女子だ。
でも、そこにはちょっと首をかしげた、陰のある女性がいた。
首筋の白さがぞくっとする色気を醸していた。
「ほう」思わず声にならない息がもれた。
彼女たちの別世界に魅せられてしまった。
コスプレには特に興味はないが、別世界に行ける切符には興味がある。
私は会社の同僚ふたりに声をかけた。
「京都旅行に行って、花魁体験をしよう!」
「おもしろそう」ありがたいことに、すぐにのってきてくれた。
同年代の同僚は大阪支店勤務のOさん。
もうひとりは20代前半のTさんで東京本店勤務。
こうして三拠点から集まり、京都へ行くことになった。
まず、花魁体験をどの業者でやるのかを決めなければならない。
思ったより選択肢は多かった。
値段、内容、口コミ、出来上がり写真、それらを総合的に見て、お互いに提案しあって決めていく。仕事の手順に近い作業で、私たちはワクワクしながら進めていった。
場所が決まったら、次に宿泊場所だ。
宿はTさんがペンションを予約してくれた。
京都でペンション?
一瞬耳を疑ったが、彼女はいつもゲストハウスを利用しているらしく、なるほど、これはいっそうおもしろい体験ができそうだと思った。
こうしていよいよ決行の日がやってきた。
祇園のスタジオは若い子からおばさんまで大勢の女性で溢れかえっていた。
「花魁にしますか? 舞妓、芸妓もあります」
私とOさんは花魁を選び、Tさんは舞妓に決めた。
おばさんふたりに舞妓はないよね。恥の上塗りになる。
「花魁は肩出しとそうでないのがあります」
肩を出すと、色気どころか邪気が漂いそうなので、もちろん普通でお願いした。
最初に、色とりどりの衣装が所狭しと掛けられている部屋に通された。
「まず衣装を決めてください」
あんぐりと口があいてしまうほどの美しさ。
頭の中にはドラマの「仁」で花魁を演じた中谷美紀が浮かんでいた。
女優さんだからとわかってはいるが、少しでもあの世界に近づきたい。
気高く、美しく、凛とした姿で写りたい。
よし、イメージはとらえた!
迷って、迷って、迷ったあげく、着物は黒に電飾模様のような白をちりばめたもの、打掛はピンクのグラデーションで裾に黒の配色がなされたもの、帯は青に銀色の模様が流れるように入っている衣装を手に取った。
洋服で考えたら、ありえない色の組み合わせだが、着物ゆえに許されるあでやかさだ。
相乗効果でお互いを引き立てあう色と柄に唸ってしまう。
メイクでは、生まれて初めてつけまつげというものを付けた。
結婚式のときはきっとまだなかったのだろうか。
目が重たいけど、ぱっちりはっきりしてみえる。
肌も白くて艶々にしてくれたので、真っ赤な唇が浮いてみえない。
鏡に映っているのは自分ではなく、別人さんのようだ。
周りを見回すと、すごい勢いで舞妓さんや芸妓さん、花魁さんが続々と出来上がっている。
その作業の速さ、技術の高さにもびっくりした。
ヘアメイクと着付けが終わって、鏡を見ると中谷美紀とはいかないが、みたことのない花魁さんが立っていた。
「けっこういけてるじゃん」
頭はかつらで重いし、体も動きにくいけど、でも全然いやではない。
むしろ誇らしい気持ちさえ浮かんできて、ほくそ笑んでしまった。
同僚たちも着付けを終えて、集まってきた。
Oさんは白に花を散らした清楚な着物に、青とオレンジを大胆に組み合わせた派手目な打掛を羽織っている。帯もオレンジで、なで肩なシルエットに流れるように着こなしている。優しい顔立ちにきりっとしたメイクがよく映えて、惚れ惚れする。もともと色白でとてもきれいな肌をしているので、首筋も美しい。
とてもとても大阪のおばちゃんには見えない。
Tさんは青を基調としたシンプルな柄で、濃いオレンジの裾が歩くたびに大胆にのぞく着物姿。黄色の帯の上にイエローにオーガンジーをあしらい、若さゆえに着こなせるスタイルになっていた。しかも頭はかつらではなく、ひっつめて逆毛をたてた上に赤いかんざしがささっており、そのよこで顔の大きさほどある白いファーの花と存在を引き立てあっている。若い!
この発想は仁さんの時代にはないでしょう。
完全にイメージを覆された。脱帽である。
撮影は傘をもったり、キセルをもったりして多くのポーズをとった。
ステンドガラスかと見まがう配色の屏風を背景に、しなだれかかる横座りのおきまりポーズも。これは照れがあり、どうしても顔が引きつってしまうのは仕方がない。
そのうちに言われるがままというのにも慣れてきて、ドーパミンの分泌が盛んになってくるのがわかる。おもしろいと思ったころに、撮影は終了した。
撮影が終わって三人で集まってからは、フリーの撮影タイム。
少し離れた場所で自由に写真を撮ってよいというので、お互いに写真を撮りまくった。
とても無邪気な時間で、この時が一番楽しかったかもしれない。
きれいに魅せる自分を作るためというより、特別な時間を体験するためのスタジオだったと思う。全カットを取り込んだCDではなく、最低限のカットを焼いた写真で十分だった。
スマホに残った楽しい想いで写真と、脳裏に残った楽しい会話で十二分に満足だった。
スタジオを後にして、その夜はTさんが調べてくれていた素敵なお店で、小洒落た料理と美味しいお酒を堪能した。別世界にトリップできた2日間。
気をよくして帰ってきて、早速Face bookのプロフィール写真にアップした。
そして冒頭の「姐さん、どうしちゃったんですか!?」という反応。
どうやら別世界は見えている世界と交わらないところにあるらしい。
さすがに頭を冷やした私は、即写真を取り下げた。やれやれ。
でも、心の中にはいつでも別世界に行けるパスポートを忍ばせていたい。
そして、それは生きていく上でとても大切なことだと思っている。
***
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