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「子ども大嫌いオンナでも子どもを産むと変わる」のは本当なのか? 子ども大嫌いだった私のリアルな紆余曲折


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:長谷川徳子(ライティング・ライブ大阪会場)
 
 

「産んだら変わるから、大丈夫! 私も子ども嫌いやったけど、自分の子は違うから!」
 
何度このセリフを聞かされただろうか……。
 
私は、子供が大嫌いだった。赤ちゃんなんて泣くだけの生温かい、しかも扱いにくい生き物でしかなかった。友だちの結婚式には招待状が来るから参加していたが、子供を産んだと聞いて見に行く気になったことなどは、一度もない。
 
しかも、赤ちゃんは、私が子供を嫌っていることを即座に察知した。子どもが大好きな私の父は、どんな人見知りの子どもでも泣かせずに抱っこできるのに、私が笑顔で笑いかけただけでも、「ふ、ふ、ふひぇ~~ん!」と泣きだした。無防備な何もできない感じに全振りしておいて、私の子供嫌いを即座に見抜いているとしたら、赤ちゃんというのは実に危機察知能力が高い、相当の策士だと思っているのは私だけだろうか? と思ったこともあった。
 
赤ちゃんに限らず幼児でも、私を遠巻きに見る感じで距離を取り、自分から近寄ってくることはなかった。上司の家に遊びに行ったときでも、他のスタッフは、子どもたちに誘われて仲良く遊んでいたが、私はその輪に呼ばれることはなかった。
 
そう、当時の私は本当に子どもが嫌いで、子どもも私を嫌いだと思っていた。
 
だから、バリバリのキャリアウーマンだった独身時代、テレビで赤ちゃんを虐待した母親のニュースを見ても、他人事とは思えなかった。
ワイドショーのコメンテーターがええ人ヅラして、「ひどいですね~」と語るのを見るたびに思っていた。
 
夜通し泣いたりするんやろ?
3時間おきとかにミルクとかあげなあかんのやろ?
臭いうんことかの後始末もするんやろ?
言葉、通じへんねんで!
そら、殴りたくもなることもあるで~。
 
虐待してしまう母親の気持ちがめっちゃわかる気がして、彼女たちを責める気持ちには全くなれなかった。
 
そして、なにより、私も虐待母になるのではないかと恐れていた。だから、私には子育てなんて絶対に無理って思っていた。
 
 
そんな私に結婚しようと言ってくれる男性が現れた。私よりかなり年下で子どもに好かれるタイプの男性だった。当時35歳を過ぎていた私は、付き合い始めたときに、言い切った。
「子ども嫌いやし、歳も歳やし産めないと思うから、子ども欲しいんやったら、私とは付き合わないほうがいいよ」
それでも彼は私にプロポーズし、子どもをもたずに共働き2人での生活を続けるというDINKS(ディンクス)生活を送るつもりだった。
 
ところが、結婚式をあげた数カ月後に、きっちり29日周期で来ていたアレがこなくなった。即座に私の頭に「妊娠」という2文字が浮かび、夫に内緒で検査薬を買って調べた。判定窓の中に赤い縦線が表れた。その縦線は「妊娠」を意味した。
最初に思ったのは、「35歳過ぎてても妊娠するんや……」だった。そして、そこから、軽くパニックになった。産休育休の制度ってうちの会社にあるん? 仕事復帰はどうなる?この歳で産んだら、子どもが大学のときに還暦? え? それってまずくない?」
 
夫婦で勤めていた会社は、システム開発関係の会社で、今でいうブラック企業だった。夫の勤めるシステム開発部は納期が迫ると帰宅が深夜から明け方になり、私が勤める営業部は国内出張も多く、週に3日は接待朝帰りが当たり前という会社だった。わずか20名程度の会社で、女性職員も少なく、産休育休をとった社員もいなかった。「子ども産んで働きながら育てるとかできるんか? うちの会社」と思った瞬間に、その言葉に凍りついた。
 
「育てる」って私が?
子ども大嫌いな私が?
虐待のニュース見て、「そら、殴ってまうよな~」って思ってた私が?
自分のことを、絶対虐待母になると思ってる私が?
 
「子どもを育てる」なんて、ほんまにできるん?
ほんまに子ども苦手やし、子どもにも好かれたことないし、子どもを可愛いと思ったこともないし、そんな女が子ども育てられるか? 大丈夫なんか? 今なら、まだなかったことにする方法もあるんちゃうん? いやいや、それはアカンやろ。
 
それまでの人生で向かい合ったことのなかったイベントに遭遇して、頭の中でたくさんのワタシが思い思いに発言していたが、まとめることはできなかった。
 
検査薬のお告げから4日後、結局ノープランのまま、夫に検査薬の結果を伝え、その週の土曜日に一緒に産婦人科に行った。
 
産婦人科では、おめでとうございますと言われた。見せられたエコー写真には、子宮の中に小さなまるが写っているだけだった。私には妊娠したという喜びも実感もまったくなかった。病院からの帰りの車で夫と私の両親に電話で報告した。どちらの親の喜び方も私の想定をはるかに超えていて、子どもを授かるとはそんなに周囲を幸せにするものなのかと驚いた。
 
でも、診察のたびに胎児の姿が変わっていくように、また自分自身の体が変わっていくのと同じように、私も少しずつ変わっていった(のだと思う)。
 
まず、妊娠中、お腹をなでながら話しかけている自分に驚いた。正直に言うなら、初めてそうしている自分に気づいたとき、「こわっ!」と思った。
 
そして、子どもを産んでからは、子どもに嫌われにくくなった。娘が通った保育園で5年間PTA役員として夏祭りの劇やバザーでの出し物担当など、子ども相手の役割をいろいろとお手伝いした。その際にも、誰にも泣かれることはなかった。「◯◯ちゃんのママ~ちょっと~!」と子どもたちから呼ばれて、「はいはい~」と気軽に近寄れるようになった。
 
それでも、正直に言うと、今でも子どもの相手は得意ではない。
 
だが、うちの子はかわいい。ぶっちぎりでカワイイと思っている。ムカつくことを言われたら、そのときはかわいいと思えない。でも、うちの子はカワイイ。「ええ、親ばかです、わかってますけど、それがなにか?」と半ギレで返してしまうぐらいカワイイ。
 
「産んだら変わるから、大丈夫! 私も子ども嫌いやったけど、自分の子は違うから!」
 
子どもが大嫌いだったときに言われ、そのたびにうんざりしていたそのセリフ。
 
子どもを産んで15年になるが、実は一度も誰かに言ったことはない。相手がどう思うか、よくわかっているから。
 
でも、断言できることがある。
「自分の子は違うから!」は本当だった。そして、付け加えることが許されるなら、「しかも、自分の子はめっちゃめちゃカワイイから!」も言いたい。
 
 
 
 
***
 
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2022-02-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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