2月22日にちなんで
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:佐藤 知子(ライティング・ゼミ2月コース)
2月22日。
テレビやラジオからは、軒並み「にゃんにゃんにゃんの日」として、猫にかかわる明るい話題が流れてくる。
2月22日に生まれた犬派の私は、猫の日のイメージがあまりぴんとこない。にゃんにゃんにゃんの日と言われても、どこか他人事のように思えてしまう。
小学生の頃、友達の家の猫を撫でようとして、いきなりキーッと指の間を噛まれたことがある。親交のつもりだったのに何故? あの時のショックと理解できない謎を引きずっているのだと思う。
しかし、嫁ぎ先には猫が5匹いた。たまに遊びに行くと、夫もお義父さんもお義母さんも猫を大変かわいがっていた。今まで猫など飼ったことのない私は、怖いのと、初めて知る猫の生態に驚くことばかり。
冷蔵庫の上から狙いを定めて、お義母さんの肩へぴょーんと飛び移る。ええっ?
ソファの上で何時間でも寝ている。何で起きないの?
たまには愛想してみたくなってそっと撫でてみるが、行ってしまう。そうかと思えば、わざとこちらの足にぶつかるようにしてすりすりと近づいてくる。
これが犬だったら、「おうっ!」と声をかけると単純にしっぽをプリプリ振ってくれて、一緒に飛び上がってわいわいできるのにな。
そして夜。襖を開けると押入れの布団の中に猫が寝ている。カルチャーショック。押入れは人気の無い暗くしんとした所だと思っていた。
夫は布団の中で猫を抱っこしている。暗がりで写メを撮ると、目が黄色く光って浮かび上がっている。これは本当に怖いものだ。
こんな私も月日が流れると、猫とお互い顔見知りの仲になって、何となくそこにいることを認め合えるようになった。黙って私の膝の上に乗ってくれる。頭や喉を撫でると、ゴロゴロゴロしてくれるから、気持ちが通じ合えたつもりでいる。猫に慣れたのだ。仲間に入れた気がしてうれしい。うれしさは自信につながる。
3年前のこと。当時中学生の息子と小学生の娘2人と街に出掛けた。昼食はうどんとおもちのセット、デザートはあんみつのフルコース。腹いっぱいの午後は初めての猫カフェでくつろごう、ということになった。猫カフェと言えば、猫とゆったりと触れ合いながら心癒されるぽかぽかとしたイメージがある。テレビで観たことはあるが、初めての体験である。息子は興味がないと言って別行動に。女子3人組、ドキドキわくわくしながら猫カフェのドアを開けた。
そこには結構お客さんがいて、少し並んで受付をした。「大人の方1名お子様が2名ですね。ご一緒におやつはいかがですか?」とファストフードのように明るく声を掛けていただく。感じのいい応対だけれど、何でも加算だな。と胸の中でつぶやきながら、私は「いいえ、今食べてきたばっかりでおなかいっぱいなので結構です。」と笑顔で断った。時間制の前払いを済ませると猫のいる部屋へ入ることを許された。
猫はあちこちにいて、ソファやかごの中で眠っていたり、クッションの上でくつろいでいた。目の前をサッと通り過ぎる猫もいた。猫に少々慣れた私は「そうよね、猫はきまぐれだから。でも、かわいいのよねー」などと娘と話しながら、さらに奥へと入っていった。それにしても猫は1匹も寄ってこない。猫の方から来ないのならば、こちらから行くべし。二段ベッドの上にたくさん猫がいたので梯子を登ることを提案した。「はずかしい」と娘たちは嫌がったけれど、率先して登っていく母の後についてきた。にゃーん、にゃーん、鳴き真似ををしながら手を伸ばしてみるが、さーっと逃げてしまう。
せっかく来たのにあんまり楽しくないな、という気持ちになってきた。ふと上から周りを見渡すと、他のお客さんはゆったりくつろいだまま猫に何かをあげている。猫はお客さんに近づいていき、可愛らしいしぐさを見せていた。
もしやあれは! 娘たちも気が付いたらしく「ママ、あれは私たちのおやつじゃなくて、猫ちゃんのおやつのことだったんだよ!」
そうだったのか……。「おなかいっぱいなのでいりません」と堂々と断ったのは猫のおやつ。受付の人は、そ、そうですか。とそれ以上は無理には勧めなかった。やっぱり感じのいい人だった。
それにしても猫は、いや生き物は現金なもので、おいしいものをくれない人にはほとんど興味を示さない。制限時間となり外に出た私たちは、現実を見た気がした。息子と合流し、ことのいきさつを説明すると、「ああ、行かなくてよかった」とひと言。息子は文房具店を歩き回り、有意義な時間を過ごしたらしかった。
2022年、2月22日。2が6回連なるのは1222年の鎌倉時代以来800年ぶり、と新聞で知った。次の2122年は100年後。今年はめったにない年だったんだね。この日にちなんで久しぶりに娘たちと猫カフェの思い出話をした。娘は安堵の表情を浮かべて、「あの時おやつを買わなくて本当によかったー。でないと、きっとママが食べちゃってたね。ある意味助かったよ」とほっとしている。
娘よ、心配ありがとう。ママはやっぱりイヌ派なんだよ。
***
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