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結婚という「普通」の呪縛


202*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:飛鳥(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
十年来の親友の結婚式に参列する。これほど感情を動かされるイベントはそう無いだろう。
ウェディングドレスをまとった親友がバージンロードをゆっくりと歩いてくるとき、中学生の頃からの彼女との思い出が蘇る。その先で待っている新郎と目を合わせ、照れたようにはにかむ親友。2人で将来を誓う新郎新婦の後ろ姿を見ていると、将来の幸せを2人で築いていく様が見えてくるようで、目頭が熱くなってしまう。
 
最近の私の周りは結婚ラッシュだ。社会人になって数年、30代も間近に迫ってきたこのタイミングは結婚を決めるのに丁度いいのだろう。コロナ禍の収まってきた今の時期を見計らって結婚式を挙げるカップルも多い。
フェイスブックやインスタグラムで結婚報告が流れてくるのは月に数度。とてもおめでたい事だし、お祝いをしたい気持ちは変わらない。でも、もし祝う気持ちに大小があるとしたら、まだ結婚というイベントが身近ではなかった20代前半に結婚した友人のほうが、より盛大に祝われていた気がしてしまう。
 
年頃の女性にしては珍しいと言われるのだろうか、私に結婚願望は無い。「結婚は刑務所に入るようなものよ」家庭を顧みない父に対する不満があるときに、母はよくそう口にしていた。特に結婚したら夢を諦めて家庭に入らなければならない時代的・環境的背景のあった母にとっては、家庭に縛られるのに窮屈さを感じる時も多かっただろう。
 
勿論そんな母の言葉を真に受けているわけではない。ただ私はかなりマイペースな性格だし一人で過ごすことが好きだ。自分の時間を誰かのために使う余裕も持っていないし、人と暮らすのは向いていないとすら思う。
昔から自分の誕生日にお祝いされるのも恐縮してしまうような人間なので、仮に自分が結婚することはあっても挙式はしないだろうなと思っている。
 
それでもだ。式が終わり家路についたあと、一人で眠りに入ったベッドの中で思い出すのは、ウェディングドレス姿で家族や友人の祝福を浴びる幸せそうな親友の姿。キラキラと輝いている親友とは対照的に、私は一人暗闇のなかにいるようだ。もう一生朝は来ないのではないかと思ってしまう絶望感に似た、そんな気持ちがする。
 
親友が羨ましくて、何となく自分が遅れをとっているように思えるのだ。
そう、人生ゲームで皆が先を進んで、大金を手にしたり家族を増やしたりしているのに自分は大幅に遅れて最下位を走っているときのような、あの感覚。別に気にするようなことじゃないのに。これから逆転の可能性だっていくらでもあるのに。そもそも人生はゲームとは違って勝ち負けではないのに。
 
親友がいつの間にか私の知らない人と一生を添い遂げる決断をしていたことに、自分ひとりだけが取り残されたような気持ちになってしまう。
親友が一人の人と出会い、誠実に向き合って人生を決めていたその時間で、自分は何をしてきたのだろうか。仕事に特段打ち込んできたわけでも、結果を出したわけでもない。恋愛をしてきたわけでもない。
 
あれ、もしかして私、焦ってる?
 
中学生の頃の授業で「将来の自分年表」を書いた。どんな仕事をして何歳までに結婚し、子供は何人欲しい、そんなことを記入していく。私は深く考えずに、「26歳頃までに結婚する」と書いた。あの頃はそれが普通だった。「結婚するのが普通の人生だ」とどこかで考えていた。
普通のレールに乗っていても競争相手はたくさんいて、一生誰かと比較されることになる。
そう気づいたのはそれから数年経ってからだった。それ以降はなるべく人とは比較されない人生を歩みたいと、「普通」ではなく自分なりの幸せを追求したいと、そう思ってきた。かつて人生年表で私が「結婚」と書いた26歳は過ぎ去っていった。
 
これを巷では「こじらせている」というのかもしれない。自分の考え方が変わっているという自覚はある。でも想像以上に私の友人たちは「普通」の道を受け入れ、そこに幸せを見出していた。
 
幸いにも私は周囲に恵まれ、彼らは私にも「幸せになってほしい」と思ってくれているようだ。そこに、結婚という要素も多分に含まれているらしい。「普通」とはそういうものなのだろう。
 
「早く結婚しないと優良物件な男性いなくなるよ」と言われたことがある。未婚者はどこか問題があると言っているようで、なんとも失礼な話だ。
私の周りには30代、40代の未婚者も多いが、別に問題がある人などいない。それどころか自分の好きなことを大切にしていたり、他の人の立場や苦労を慮れるような魅力的な人も多い。それとも、実はそんな私の尊敬している人達も、未婚であるというだけで偏見を持たれているのだろうか。
私だってこのまま歳をとれば非優良物件の烙印を押されてしまうような気がして怖くなった。
 
こんなときは男友達に久々に連絡を取りたくなってしまう。連絡をしたら会ってくれそうな男友達は何人いるだろう。
あれ、もしかして私、身近な男友達の中から将来の結婚相手候補を探そうとしている? そこまでして私結婚したかったんだっけ?
焦るな、焦るな。私の人生は私のもの。誰に評価されるものでもないし、誰にも何も言わせない。私は私のやり方で、どれだけ時間をかけてでも絶対に自分の幸せを見つけてみせる。
 
私は暗闇の中で一人目を閉じ、眠りについた。
 
 
 
 
***
 
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2022-03-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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