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やっぱり、ライティング・ゼミにまんまと嵌められた


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:大江 沙知子(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
今、ひとり部屋にこもって、天狼院ライティング・ゼミを通信受講している。
いつものことながら、ついつい引き込まれて見てしまう。
 
講座の構成、講師の語り口、徐々に解き明かされるライティングの極意――
 
非常によく計算されている。こちらの反応まで、計算され尽くしているとしか思えない。だからこそ、ライティング・ゼミをリアルタイムで受講する限り、オンライン講座にありがちな「飽きる」あるいは「集中力が持たない」という現象とは無縁である。
 
 
しかし、私の胸の内は今、罪悪感でいっぱいだ。
 
その理由は、リビングから聞こえる子どもの声と、時折混ざる「はぁ」というため息にある。扉の向こうでは、夫がひとりで娘に夕食を出してくれている。
 
ライティング・ゼミの講義は月1回、日曜の午後4時から7時半まで。娘をお風呂に入れ、夕食を食べさせる時間帯にドンピシャだ。だから、その仕事を夫に任せきりになることを彼に相談の上でゼミに申し込んだ。彼は「いいよ」と二つ返事で了承してくれたから、これまでの2回の講義ではそれほど気にしていなかった。
 
 
ただ、今日ばかりは事情が異なる。
今日の夫は体調が万全ではない。
 
夫は新型コロナウイルスのワクチン接種3回目を終え、今朝から38度台の熱を出して寝込んでいた。もちろん、私はできるだけそっとしておいてあげようとしたけれど、3歳のパパ大好きっ娘はまるで容赦しない。父親が休む布団に突撃していっては
 
「パパ、パパ、どうして寝てるの?」
「絵本読んで~」
 
と、彼にのしかかるようにしてせがんでいた。
 
熱に浮かされ、疲労にまみれた声ながら要望に応えようとする夫の様子に耐えかねて、私は朝から娘を連れ出した。その甲斐あって、外で存分に遊んだ娘はよく昼寝してくれ、平和な午後を過ごすことができた。成長著しい彼女は、今日の講義の前半が終わる5時半まで、ぶっ続けで眠り続けたほどだ。
 
『本当は起こすべきなのかもしれないけど、今日くらいは親の都合に付き合ってもらおう……』
 
そこで講義の前半が終わるまで娘を寝たいがままにさせ、途中の30分の休み時間に彼女を起こし、お風呂に入れた。
 
私はこうやって、夫に休息時間を与えるべく精一杯努力したつもりだったのだ。私の髪は今でも濡れたままだ。
 
 
しかし、私はここで、ライティング・ゼミの罠にまんまと嵌められた。
お風呂から上がった時、タイミング良く講義の後半戦が始まったのに気づき、イヤホンを着けたのが運の尽きだった。
 
私は引き込まれた。
 
パソコンの前に座ったが最後、立ち上がることができなくなり、こうして画面にかじりついている。途中で切り上げて残りは録画で視聴すれば良いという目論見は、見事に打ち砕かれた。
 
その結果、最後のワークショップの課題まで、リアルタイムで夢中になって取り組んでいる有様である。私はまさに今、ノートにこの記事を書きなぐっている。
 
 
夫の熱が下がっているのかどうかは、分からない。
子どもの世話をお願いできる状態なのかどうかを、確認していない。
1日寝込んだ病人に、元気が有り余る3歳児を世話する無茶をさせてしまっている……。
 
ノートを文字で埋め尽くす傍ら、罪悪感もまた私を埋め尽くしていく。
 
 
ああ、天狼院書店よ、なんということをしてくれたのだ。
 
ライティング・ゼミ、それは麻薬のようなものだ。
一度受講を決めたが最後、逃れられない。
それがライティング・ゼミなのだ。
 
 
「パパ、食べさせてー」
 
娘の声が聞こえる。夫がレトルトカレーでも温めて、娘に食べさせてあげているのだろう。いつもは癒しでしかないその無邪気な声に、今日ばかりはチクリと胸が痛む。
 
「ねえ、みかん食べよう? みかん食べたいな~」
 
娘が重ねて父親にオーダーする。それに応えて、のそりと彼が立ち上がる気配までが扉越しに感じられるようだ。
 
『やめてくれ。もうこれ以上、君の父親を働かせないでくれ』
 
私は呻きつつも、ひたすらペンを走らせる。右手が痛くて仕方ないが、もう止められない。
 
 
書くという行為、これもまた麻薬のようなものだ。
私はすっかり、この麻薬の虜になってしまっていた。
 
15分という時間をこんなに長く感じたのは初めてかもしれない。もっと書きたい、しかし書けば書くほど罪悪感に縛られていく気がする。
 
書くと言う行為の抗いがたい魅力と、夫に対する罪悪感に急き立てられるかのように、私は一層焦ってペンを走らせる。
 
 
「あと5分です」
 
残り時間を告げるスタッフさんの声を聞き、また殴り書きを続けていたノートの隅に到達し、私はようやく手を止めた。震える右手でペンを置く。
 
さて、何文字書いただろうか。
間もなく今日の講義が終了する。
ライティング・ゼミの魔の時間が終わる。
 
この後、リビングに続く扉を開けるのだ。
ライティング・ゼミ受講後特有の充足感が私を包み込む。しかし……
 
この後見る夫の顔が怖くてたまらない。
 
 
 
 
***
 
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2022-04-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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