人生に心の栄養ドリンクを
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:飛鳥(ライティング・ゼミ2月コース)
「何かを成し遂げたいと思ったら、他のものは諦めなさい」
子供の頃から親にそう言われて育ってきた。その言葉通り、テストで良い点を取りたかった私は、テレビを見るのをやめた。大学受験で実力よりも少しレベルの高い大学を目指すにあたって、10年間習っていたピアノをやめた。
その甲斐あってか、私は勉強で苦労したことがない。大学受験も無事合格した。
でも、本当にそれで正しかったのだろうか。私は呪縛に捉われて、もしかしたら大切なものを捨ててしまっていたのかもしれない。そう思うようになったのは、もう良い大人と言える歳になったあとだ。
それは大学4年の就職活動のときだった。私は当時同居していた親に言われるままに、所属していた音楽サークルを引退した。バイトもやめて、節約生活だ。ここまで色々なものを諦めて努力すればきっと上手く行く。私はそう信じていた。
でも、なんとか漕ぎ着けたと思っていた第一志望の会社の最終面接で、面接に呼ばれたのが会社側のミスだったと分かったとき、全てが壊れた。努力してきても、最後は面接すらしてもらえないまま、虫のように追い払われて終わってしまったではないか。今まで他の全てを犠牲にしてきた自分は何だったのだろうか。
身体の内部で、胸のあたりに溜まっていた黒いモヤっとした塊が、気を抜けば暴れ出しそうな気配がする。
全て投げ出したい気分になった。またここから挽回するために、我慢して、我慢して、我慢し続けなければならない。そんな人生なら要らない。
何カ月間も、そんなことを考えていた。その間、ほとんど寝たきりのような生活だったと思う。心の元気がなく、身体がひどく重いのだ。
そんな私を見ていた友人がかけてくれた言葉がある。
「そんなに落ち込んでいるのは、自分の選択に心の底では納得していないからじゃない?」
暗いトンネルに光が差し込んだようだった。
よく考えてみればそうだった。長い人生なのだから、一度失敗をしてもそれが良いほうに向くこともあるし、新しい目標ができることもある。それなのに一度の失敗にこれほど固執してしまうのは、そのために他の全てを犠牲にしてしまったからであるし、他の楽しみを見つけられないからだったのだ。
そして何より、目標のために自分の楽しみを捨てる必要があるのか、と心の底では思っていたのだった。
お金を貰って仕事をしたとしても、8時間も働けばヘトヘトになる。
いくら成し遂げたいことがあったとしても、それだけのための集中力が10時間も12時間も続くわけがない。私が楽しみを捨てて手にした時間で代わりに費やしていたのは、「今回も上手くいかないなんて、自分はダメな人間なんだ」「何で自分はこんなことしているんだろう」などという、反省と言う名の自己嫌悪と後悔だった。
その時間で、自分が楽しいと思うことをやれば良かったではないか。
そう気づいた私は、もう二度と自分の好きな物を諦めたくないと思うようになった。もう大人なのだから、自分のやりたいことを自分で選んで良いのだ。
テレビ、動画、音楽、読書……。スマホ1つあれば、自宅のベッドに寝ころんだままでもこれらを網羅できるなんて良い時代だ。過去に楽しみを捨ててきてしまった私は、再度、ベッドの上から新たな楽しみを見つけ始めた。
特にテレビドラマにはのめり込んだ。自分の経験したことのない仕事や感情を体験できるかのようで、社会勉強の時間にもなっている。昔は勉強に集中するためにテレビ視聴を制限されていたためドラマは娯楽というイメージが強かったが、思わぬところで学びに繋がるかもしれないと気付いた。
そして、ドラマがきっかけでとある俳優のことが好きになった。と思っていたらその俳優は某アイドルグループのメンバーで、今ではそのグループのライブに足を運ぶほどの「推し」になっている。
「辛いことがあった時は今日の楽しかった時間を思い出して、また明日からお互い頑張ろう」そう言ってくれる推しに何度勇気づけられたことだろう。
人生の幸福は、成功とか、就職とか、結婚とか、そういうイベントにあるのではなくて、日々のちょっとした心の充実にあるのかもしれないと考えられるようになった。
不思議なことに、自分の楽しみを大切にする生活を始めたあとでも、そのせいで仕事や資格試験の勉強が疎かになったことはない。むしろ良い気分転換になり、心が満たされるので質の良い仕事や勉強ができる。私にとっては栄養ドリンクのようなものなのだ。
1日は24時間ある。そのうちの1、2時間を自分の幸福度を上げるために費やしたって良いではないか。
あの就職活動からもう何年が経っただろう。時間はかかってしまったけれど、私の心は栄養で満たされ、やっと次の目標に向かって人生を進めていけるような気がしている。
***
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