いつかやりたいことはすぐにでもやってみよう!《週刊READING LIFE Vol.174 大人の友情》
*この記事は、「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライターズ倶楽部」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
2022/06/20/公開
記事:早藤武(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
※本記事に登場する人物や場所はフィクションです。
「へぇ! いいじゃない! 定年後じゃなくてもすぐにやったら良いじゃない!」
僕は反対されると思ったら、友人のタカくんの言葉に思いっきり背中を押されてしまった。
社会人になってから10年ぶりに集まった高校時代の男友達5人でのBBQでのことだった。
お肉を焼きながら、高校を卒業した後にもメールやLINEで少しずつやりとりしていたけれど、直接顔を合わせて話をすると話題は尽きることはなかった。
お互いに苦労もしていて、会社に就職をしてけれども環境が合わずに転職をしたりする人もいれば、家族の面倒を見るために在宅ワークで生計を立てながら自分の会社を設立するために頑張っている人もいた。
学生時代ではお互いに想像もできないような道をそれぞれ歩んでいて、僕もたくさん苦労したと思ったけれども、みんなすごいなと思わされた。
話題も変わって、これからどうしていきたいのかを話すことになった。
僕は現在勤めている会社を定年まで勤めてから資金を貯めて、日本全国を旅しながらキッチンカーで旅をしたいと思っていたのだ。
クラスのお調子者だったタカくんは僕がやりたいことを聞いて、大賛成だと言う反応を返してくれたのはビックリしたけれども、正直嬉しかった。
てっきりいつかできると良いねと言われると思っていたら、まさかすぐにやってみたら良いじゃないと言われるとは思ってはいなかったのだ。
いつかは自分のお店をやってみたいなと思って、行ってみたいところの特集記事が載っている雑誌やお気に入りのカフェを写真付きでメモをしたノート、会社員を定年まで勤めた後にはお店を経営をするだろうと必要な本を買っては合間に勉強してはいた。
そして僕は社会人になる前に、学生時代に夢中になっていた楽器で食べていくことを親や先生から反対されて大学に進んで、会社員の道を歩んで現在まで苦労はしてきているけれども、不満はない。
僕の周りも明日を暮らすのも大変な道を歩ませたくなくて、心配して言ってくれたのだろうと今の僕は理解できる。
「いやいや、すぐにって言ったって僕は会社員での立場があって若手も育ててるところなんだよ?」
「定年まで時間が経ったら、自分が元気でいられるかどうかもわからないじゃないか。何も今すぐに会社を辞めろってことじゃないよ。できるところから準備してみるのはどうなのって話さ! 今までやったことないことをいきなり全部やるって大変だろう?」
タカくんはそう言いながら焼けたお肉と野菜を小皿に盛り付けて、僕に渡してくれた。
確かに言われてみればタカくんの提案はとても魅力的に感じた。
最近、家にいる時間を利用してお店の経営の勉強を本を買ってしているのだけれど、会社員として何年も頑張ってきても知らない知識や考え方でいっぱいだったのだ。
カフェをするにも、僕はいつもお金を払ってお客として飲み物や食べ物を出してもらっている立場なので、実際に誰かに僕が同じことをやろうとしたら、いきなりできるようになるとはすぐには思い浮かばなかった。
そもそもカフェをやってみたいと思ったきっかけは、海外にカバン1つで単身で行ったことがある大学時代の友人からヨーロッパのお店巡りをした時の話を写真を見せながら聞いて良いなと感じたのが始まりだった。
海外を旅したことがない僕にとって、友人の話は異世界を旅して来たような素敵な光景がたくさんあったのだ。
それから本屋さんでカフェを取り上げている雑誌を見かけては、このお店は内装が良いなと手にとって読んだり、ケーキやパフェなどのお菓子が素敵だったり、コーヒーにこだわりがあるお店だったり、気がついたら自宅周辺のカフェを制覇していたくらいにはまっていたのだ。
いつか自分のお店を持てたら面白いだろうなと思うようになったのだ。
しかし、タカくんの魅力的な提案をされた時に真っ先に否定したように僕は今の会社で若手を育てていく立場を任されるようになって、さらには他にも新たにプロジェクトも担当する予定なのだ。
いつかはやってみてみたいと思っていても、会社をすぐに辞めて全力で打ち込めるかと問われると無理だなと感じてしまったのが正直なところだったのだ。
次のお肉と野菜が焼けて来たので、今度は僕が盛り付けてタカくんのテーブルの前に置いた。欲しい飲み物も注いであげて一緒に並べてあげた。
サンキューと受け取って美味しそうにどんどんお皿の上の食材を平らげていく。
美味しそうに食べてくれると盛り付けた甲斐があって嬉しく思った。
ちなみにお調子者のタカくんは、大学を卒業してから最初の会社に就職して3年間は一生懸命働いてからスッパリと会社を辞めて、今まで貯めたお金で日本を離れてワーキングホリデーに応募してオーストラリアに渡っていたのだそうだ。
オーストラリアにいる間は半年間は仕事をして、残りの半年間は遊びながら現地の人たちと交流しながら旅をしていたのだそうだ。
そして日本に帰国してからは次の違う会社に就職し直して、次にやりたいことを探しているという。
そんな経験をしていたタカくんから、すぐにやってみたら良いじゃないと言われると案外すぐにできてしまう気がしてきてしまった。
「タカくん、さっきはすぐにできないと思ってたけど会社にいながら今からでもできることってあるかな?」
「うん? ああ! さっき話してくれたカフェの話だね! いっぱいやれることはあると思うよ。例えば、さっき俺の前にお肉や野菜をきれいに盛り付けて飲み物と一緒に並べてくれただろう? それだけでも立派に接客のおもてなしの練習になっていると思うよ」
さっきやってもらったお返しにと食べ物を盛り付けてあげただけなのに、タカくんは的確にアドバイスをくれた。
「他にも会社の同僚の人たち相手に飲み会とか集まりがあった時とかも良い練習になると思うよ? みんなが喜ぶ食べ物やおやつを用意してあげてさ、飲み物もコーヒーを本格的にドリップで淹れてあげたり、豆から勉強してみて飲んでもらって感想をもらってみるのも良いかもしれないね」
次々にアイデアが出てくるタカくんに驚いて、しかも聞いていて僕もワクワクしてやりたいなと思ってしまうから不思議な感覚だった。
「タカくんその話とっても良いね! 僕が働いている会社の近くに最近できたお店でお手頃価格でお菓子を作っているお店を知ってるから、まずはそのお店から差し入れを買ってきて、コーヒーとかの飲み物も用意できるところからやってみようと思ったよ」
そのお菓子、俺も今度食べたいなとタカくんや他の友人たちも言ってきたので僕は次のBBQの差し入れに持ってくるよと笑顔で返した。
それにしてもなぜタカくんはこんなにアドバイスが次々に出てくるのだろうか?
海外に渡っていた時期もあるから苦労したのだろうか?
「なんでそんなにアドバイスができるかって? うーん、なんでだろうね。でもやってみたいことがあるならすぐにやってみた方が良いって教えてくれた人はオーストラリアにいた時にお世話になっていたオヤジさんから教わったね」
タカくんが海外にいた頃に下宿していたところでお世話をしてくれていた日本人のオヤジさんという人が影響しているようだ。
どんなことを教わったのだろうか?
「オヤジさんは病気で奥さんを亡くしてしまって落ち込んでいた時期があったらしい。夫婦でお店を開こうねって2人で仕事をしてお金を貯めている間に奥さんに不幸があったらしいよ。奥さんが生きている間にもっとやってあげられることがもっと何かあったのではないかって当時たくさん後悔したって言ってた」
みんなはタカくんの話を食い入るように聞いていた。
「オヤジさんは、自分みたいに後からもっと早いうちにやっておけばと後悔しないように、いつかやってみたいなと思えることがあったらできる限りの範囲で良いからチャレンジしてみなさいって俺に言ってくれて、オーストラリアにいる間に思いつく限りのことはさせてもらったよ」
にかっと笑ったタカくんは清々しい良い顔をしているなと感じた。
「だから、俺の目の前でいつか何かをしてみたいって言ってる人がいたらオヤジさんみたいにやってみなよって言ってみようってあの頃に思ってた。今は無理だと思っていても、きっとやれること、これだけはやりたいことってあるはずだから、俺が良いなって思ったら正直にやってみなよって伝えたんだよ」
僕はタカくんの言葉を聞き終わって、改めて背中を押す言葉をかけてくれてありがとうと伝えた。
本当に俺にお礼を言うのはチャレンジして成功できてからにしてくれよと返してきた。
まだ夏の暑い時期は続くので、次の月の週末の予定をみんなで確認して集まることにした。
その時にはチャレンジした結果がどうなったかを発表するタイミングにしようと言う話になったのだ。
こうなったからには僕も口だけではなく、チャレンジして形にしてみんなにまた話せるようにしなくてはと気合が入ってきた。
会社の同僚には下心なく楽しんでもらえるように差し入れを企画したいところだ。
軌道に乗ってきたら、会費をもらってお店を探して食事会やBBQを企画しても良いかもしれない。
先のことを考えてワクワクしてきたら、やってみたいことのアイデアが浮かんで来たので、スマホで次の予定を入れながらアイデアのメモをとった。
「次に会う時には良い結果が聞けそうだね。みんなでお土産話を期待してるからね。あとは美味しいコーヒーを豆から淹れられるようになったらぜひ飲んでみたいから頑張って勉強しておいてね」
どんどんハードルが上がってきている気がするけれども、昔から知っている友人だからこそ遠慮なく失敗できる安心感があるのかもしれない。
あの時、やっておけば良かったと後悔するよりも失敗もあったけれどもやってみて良かったときっと思えるはずだ。
もし失敗してしまっても、成功するまで続けることができたらお互いにあの頃に言ってたことが叶ったねってお祝いすることもできる。
そしたらみんなでお祝いをする時に披露するメニューも今のうちに考えておかないといけないとすでにやりたいことができた後のことを思い描いて、空を見上げた。今度のみんなで集まるBBQの日までとても忙しくなりそうだ。
□ライターズプロフィール
早藤武(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
1984年生まれ東京都出身、城西大学薬学部卒業。
北海道函館市在住の薬局薬剤師。
SDGsアウトサイドイン公認ファシリテーター。
カッコ可愛いを追究するインプットの怪物紳士くじらを名乗り「紳士くじらのブログ」を運営。
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