その選択は、誰のため? 見失った「好き」を見つけ直す方法
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:岡部 みほ(ライティング・ゼミ4月コース)
3億年ぶりにショッピングをした。
3億年は言いすぎた、4年ぶりくらいか。
先日34歳の誕生日を迎えた。
その4日後には息子が4歳になった。
母歴は4年になった。
ここのところの私のファッションスタイルといえば、ジーンズにTシャツ、パーカー、スニーカー。
たまに買う洋服は、子どもたちとおそろいになるように買った無難なボーダーTシャツ。それから、生協のチラシで見つけた、誰にでも似合いそうなデニムのワンピース。
アクセサリー?
子どもに引きちぎられるし動きづらいし、不要!
とにかく動きやすさ、授乳のしやすさ、泥や砂、それからケチャップなんかで汚れても目立たない、汚れてもまぁ気にならない、それが私の洋服の選び方だった。
ある出来事がきっかけで、私はどうしても服を買いに行かなければならなくなった。
というのも、私の母は、20年前くらいから、肌に触れるものは綿100パーセントがいい! とずっと言っていた。幼い頃からの教えだったから、少しの使いづらさはあるものの、疑いもせず、私は綿素材のものを使い続けた。しかし母は現在、ポリエステルのロンTを愛用していることが発覚した。
ずっと信じて疑わなかった”常識”が音を立てて崩れ落ちるのと同時に、私も自分がこれだ! と思える服を自分で探そう、と思い、ショッピングへ繰り出したわけであった。
旦那と子どもたちをおもちゃ売り場に残し、いざショッピング!
3億年自分の好きな洋服を買っていなかったため、よく来ているショッピングモールなのに、店の配置も全くわからない。
ということで、手当たり次第に、それっぽい店に入って行くことにした。
が、危惧していた事態が勃発した。
……選べない。
……わからない。
完全に勘が鈍っている!
薄々気づいてはいたが、子どもありきという条件なしの場合、もはや自分が何を着たいのか、どんな服装が好きなのか、全くわからなくなってしまっていたのだった。
いかん! このままではまたボーダー×ジーンズ生活に逆戻りだ!
なんとか、自分の心の奥底に眠っている「好き」という感覚に耳を傾けてみた……。
そういえば、お店で何か買う時、私はいつも店員さんにアドバイスを求めていたっけ。母や姉がいれば、いいんじゃない? の一言を求めていたっけ。
私は、随分前から、自分で選ぶことを放棄していたんだなぁと回顧する。
今日は誰にも相談せず、自分一人の力で決めよう。
私の第二の人生といっても過言ではない、自分で選ぶ・自分で決める、そんな人生の始まりの第一歩が、ショッピングモールで踏み出されようとしていた。
ものっっっっすごく時間がかかった。
試着もたくさんした。
無難な、今までと似たような服も着てみた。
でも、なんだかしっくりこない。
というか、ワクワクしない。
圏外になりそうな”「好き」アンテナ”の電波をなんとか探しながら、
見る・着る・問う
を繰り返す。
少しづつ、ワクワクを感じるようになってきた。
今までのスタイルとは真逆の感じだ。
『それ買うの?』
『汚れ目立ちそう』
『無難な色がいいんじゃない?』
そんな誰かの声が聞こえてくる。
がんばれ。
負けるな。
自分で決める。
何度も何度も自分に言い聞かせる。
そしてワクワクの向くままに、試着を重ね、これ着たい! と思える服にやっと出会えた。
今まで買ったことのない派手なカラーデニム。
タイトめなトップス。
アクセサリーも、いくつか買った。
試着を終えて元の服に着替えたら、襟はよれていて、のびっぱなしの髪の毛もすごく気になった。
昔はもっと、「好き」に素直だった。
可愛い! と思えば買った。
行きたい! と思えば行った。
結婚して、子どもが生まれて、お金の使い方も時間の使い方も身に着けるものも、自分だけではなく、他者の基準も考慮して選ばなければいけなくなった。
そうして行くうちに、自分の”「好き」アンテナ”はどんどん微弱になり、子どもが喜ぶもの、旦那が好きなもの、誰かがいいと言ったものを選ぶようになっていったのだった。
でもそれは、誰かが悪いわけじゃなくて、自分がラクだからそうしていたんだと思う。
誰かに合わせたら、喜んでもらえることも増えるし、自分もラクではあるのだ。
抜け出そう。
誰かのせいにしたり、誰かがいいと言ったものを選んだりする人生を。
自分の「好き」を感知するアンテナが、圏外になる前に……
きっとこれから失敗もたくさんする。
今まで誰かの基準で決めてもらっていたものを自分で決めるから。
誰かのせいにはできないから。
でも、失敗したっていいじゃないか。
今までしてこなかった失敗を、ここからたくさんしていけば。
もう34年過ぎたこの人生だけど、ここからまた、はじめよう。
”「好き」アンテナ”の感度を、どんどん上げられるように。
自分との対話に時間をかけて、うちなる声を掬っていってあげよう。
「まだかかりそう?」という旦那からのLINEで、人生再起をかけた「好き」探しの旅はいったん終わりを告げた。
子どもたちにはジュースを。旦那にはコーヒーを。
大好きな人たちへの感謝も忘れずに、私の「好き」探しの旅は続いていく……
***
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