あなたは誰に守られていますか
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:布施京(ライティング・ゼミ4月コース)
この世に、守護霊を信じる人はどれくらいいるだろうか。
全く信じていない人も多いのではないだろうか。
かつては、私もそうだった。
あの日のできごとがなければ……
友人の紹介で、守護霊をみてもらうことになったのは、4月の末だった。
天気がよく、環八沿いの約束場所まで20分ほどかけて自転車で向かった。
そこは、美容室を改装したビル1階の貸サロンだった。
受付で奥の小部屋に通された。
簡易ベッド1台、机、椅子2客が置いてある、質素な部屋だった。
少し不安になりながらも、勧められた椅子に座った。
友人からは、守護霊を見てくれるのは男性だと聞いていた。
紫の服を着た占い師的な人を想像していた私は、彼を見て、少し肩透かしを食らった気がした。なぜなら、彼は、Yシャツにスラックス、という服装で、いかにも真面目な会社員風だったからだ。雑談を交えながらの自己紹介は、なんだか営業マンのトークに近かった。
説明が一通り終わると、まず、彼は部屋で結界を張った。
厳かに部屋の真ん中に立ち、「へカス、へカス……」と呪文を唱えて、言われるがままに私もあとをついてその呪文を唱えた。
結界は見えないので、実際に張れているのかはわからない。
他に2つの動作も呪文を唱えながら行い、次は簡易ベッドに横たわり、瞑想状態になる。
「守護霊様が自分の口を通して、話すのよ!」
私に守護霊を見てもらうことを勧めてくれた友人が、こう話していた。
私の目が「?」としていたからだろう。友人は、こう付け加えた。
「私の声で、守護霊様が話すのよ。ホント不思議な体験だったよ!」
正直、そのときは意味がよくわからなかった。
まずは、過去世を遡り、その後、守護霊様と話すという構成だと説明された。
瞑想状態になり、守護霊様が私の声を使って話し出すという。
エナジーチャイムの音叉が心地よく部屋に響き渡る。
「海の底をどんどんゆっくりと降りていきます。深く、深く……」
営業トークとは一転し、彼の太い落ち着いた声がゆっくりと私を深い潜在意識の世界にいざなっていった。
「今、過去へ過去へとさかのぼってきました。3つ数えたら、ある時代のある場所にあなたは立っています。3,2,1(チーン)」
もう一度エナジーチャイムが鳴ったとき、私はエーゲ海を見下ろすギリシャの港に立っていた。1900年頃。そばかすがある赤毛の三つ編みの女の子が、私の前世だという。
「その女の子が人生の中で魂に影響を受けるような最も大きなイベントのところまで移動していきます。3つ数えると、移動します。3,2,1(チーン)」
女の子は大人になっていて、幼なじみとの結婚式をしているところだった。
家族や友人に囲まれて庭園のあるレストランで幸せそうな笑顔をしていた。
「それより以前の前世を見に行きましょう」
もっとより深い潜在意識をさまよい、次の過去世は、日本の四国の浜辺に舞台が移っていた。時代は江戸。一人の漁師がいた。
「その人の瞳の奥を覗いてみましょう。自分の魂にどういう関係があるのかじわじわとわかってきます」
そういわれて、私はその漁師の瞳の奥に入り込むように覗き込んだ。
「その人は、あなたにとってどういう人なのでしょうか」
そう質問されて、私は急に涙声になり答えていた。
「父です。死んだ父です。父はとても釣りが好きでした」
その漁師は、前世の父だった。
私は父が大好きだった。だが、仕事で海外にいて、辛い闘病生活を支えることができなかったことに後ろめたさを感じていた。そんな父にもう一度会えた気がしてうれしかった。
その後、漁師が家に帰ると、家族が待っていた。そこには小さな赤子がいて、それが2つ目の私の前世だった。
「次に音叉が聞こえたら、その赤ちゃんが成長した姿が見えます。何歳になっているでしょうか」
エナジーチャイムが鳴ると、その女の子は17歳になって学校に通っていた。次は、女優になって映画に出演していた。名前は「かよ」といった。
83歳まで生き、家族に囲まれて病院のベッドで息を引き取るまで、幸せな素晴らしい人生を送ったという。
「いよいよ、もっともっと奥深い潜在意識へと入っていき、守護霊様をお呼びしたいと思います」
彼は、守護霊様に話しかけ、これからいくつか質問させていただきたいとお願いした。
すると、私は低い声で短く「はい」と答えた。
その声は、私ではない、守護霊様の声だった。
「今お越しいただいている方は、女性ですか。男性ですか」
「男性」
「京さんを守護してくださっている方でよろしいんですね」
「はい」
「先程の、漁師の方でよろしいでしょうか」
守護霊様は首を振った。そう、私が首を振っていたのだ。
私の意識は、「じゃあ、誰なんだろう? 彼もあてが外れて困っているだろうな……」と頭でそんなことを思った。
「先程見せていただいた過去世で、ギリシャで幸せになるイメージと漁師の家族として赤ちゃんからおばあちゃんになるイメージと2つ見せていただきましたが、京さんはなぜこのイメージを見る必要があったのでしょうか」
守護霊様は、沈黙の後「悩まなくていい」と一言言っただけだった。
他にも仕事や夫や息子との関わり方にアドバイスをいただいた。
でも、口数は少なかった。
守護霊様とお別れし、かよさんに変わってもらうことになった。
エナジーチャイムが鳴ると、私の口からかよさんがしゃべり出した。
女性らしい話し方で、先程の守護霊様の話し方とは明らかに違っていた。
「先程の守護霊様は、京さんにとってどんな方だったんですか」
彼がそう問いかけた瞬間、かよさんは嗚咽しだした。
ベッドに横たわっている私の目からは涙がポロポロと流れ落ちていた。
「そうか、そうだったのか」私の意識は納得した。
守護霊様は、44歳という若さで死んでしまった元恋人だったのだ。
嗚咽しているのは、かよさんではない、私自身だったのかもしれない。
「その方は、かよさんの時代にもご縁のある方だったんでしょうか」
そう問いかけられると、かよさんは声をつまらせ、こう答えた。
「はい……ありました。……その時の……私の夫でした」
前世で、元恋人と私は結婚していた。
その事実に私は少しホッとした。
彼が死んでしまう前、彼から何度かメールをもらっていたが、結婚していた私は返信することができずにいた。そして、訃報を聞き、罪悪感に苛まれ、事あるごとに彼を思い出していた。
一方で、彼を忘れられないことで夫に対する罪悪感も感じていた。
そのことは、以前の課題でも取り上げた。(これも「不倫」と言われてしまうのでしょうか | 天狼院書店 (tenro-in.com))
でも、もう罪悪感を感じなくていい。彼にも夫にも。
だって、彼は私の守護神なのだから。
守護霊様にお礼を言って、このセッションは終わった。
自転車に鍵をつけ、そのまましゃがみこんだ。
「彼だったんだ」
ここへ来た意味を感じていた。
自転車に乗り、店を後にした。
時折吹く強い風を、しっかりと受け止める自分がいた。
「守られている」
そう強く感じた。
***
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