みにくいアヒルの「陰キャ」、ミスコンテストに出場する
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:高橋 さやか(ライティング・ライブ東京会場)
学校の頃は勉強もスポーツも苦手で取り柄のない陰キャだった。
学校に着くと多くの児童は友達を誘って校庭で遊ぶが、引っ込み思案で声をかけるのが苦痛だったため一人で図書室に直行。教室内の本棚にもお世話になった。
一日中誰とも話さない日もあった。
小学校受験をして入った学校は厳格な女子校で幼稚園から進学してきたグループが幅をきかせていた。入学早々女子特有のノリについていけず心を閉ざしてしまったのだ。
また周りの友達よりも背が高く痩せていて病弱だったため顔色が青白く奥二重だった。およそ可愛いとは言えない容姿だった。
背が高いと大人から「かわいい」とは褒められず「大きいね」としか言われないため外見にも自信がなかった。
当然いじめられたこともあった。
口調の強いクラスメートは特に苦手で何か言われても言い返せない。
悔しくて仕方がなかった。
祖母と母はおしゃれが大好きだったため自然に洋服と化粧品に興味を持っていた。小学校高学年になるとファッションや美容に興味を持ち雑誌を買うのが楽しみになった。
雑誌には日本だけではなくパリジェンヌの特集もあって個性を生かしたおしゃれが格好良く暇さえあれば写真を観察し手持ちの洋服の着こなしを考えた。
スタイルがよく見える着こなしのページを読み込み、顔立ちがはっきり見えるメイクの方法は写真を見ながら祖母や母の化粧品を借りてメイクの練習をした。メイクをする年齢ではないのに真剣だった。
また鏡台の香水を試して大人になったらこんなコーディネートにはこの香りと自分なりに考えるようにもなった
不思議なことに学校で過ごしている時の惨めな気持ちを忘れることができた。
そして「おしゃれで綺麗な大人の女性に変身して見返したい」と思った。
中学に上がった頃に転機が訪れた。
父の仕事の関係でヨーロッパに引っ越すことになった。私服通学の日本人学校に通うことになった。自分が変われるチャンスだと思った。
母と一緒にヨーロッパの学校の私服を揃えるのに雑誌で知った原宿から渋谷までの明治通りを一緒に歩いてショッピングをした。リーバイスのデニムと当時流行っていたモカシンやエスニックのシャツを買ってくれた。
今考えると中学生には贅沢だったが袖を通すと新しい学校生活に対して自信が持てたのである。
海外に転校後は髪をしっかりブローして好きな香りのリップクリームをつけてお気に入りの洋服で通学した。
嬉しいことに毎日同じバスに乗るとてもきれいでスタイルがよく男の子からも人気があった隣のクラスの女の子から「大人っぽいファッションと夕方まで崩れないブローの仕方を教えて欲しい」と言われた。
ずっと取り柄がなく外見を褒められたことがなかったから天に昇るように嬉しかった。日本では友人が少なかったのに転校先では他のクラスメートからもおしゃれで大人っぽいと声をかけてくれた。
奥二重は成長とともにぱっちりした幅広の二重に変わり顔立ちに関するコンプレックスは減っていった。
外見に自信がつくと人に会いたくなるように心が変わっていく。高校から大学は華やかな集まりにも積極的に参加するようになった。
普段会わない人に会って会話をすると意外なところを褒めてくれる。自信がつくことによって華が増すように思える。
就職活動は若い時にしかできない人前に出て自分を磨く仕事に絞った。アナウンサーやキャビンアテンダントなどの花形職種ばかり。当時は就職氷河期。今思うと無謀な目標である。
イベントコンパニオンのアルバイトをしながらアナウンス学校に通った。ダメ元でテレビ局のアナウンサーにもエントリーした。
高倍率で箸にも棒にもかからなかったがコンパニオン仲間から思いがけないアドバイスをもらった。
「私の友達もアナウンサーになりたくてエントリーしたけど上手くいかなくて。諦めずにミスコンテストやオーディションを受けたら準ミス東京に選ばれたんだよ。若い時しかできないし色々なオーディションに履歴書を出してみたら?」
この言葉を聞いて納得いくまでやってみようと思った。
万が一書類が通ったら色々な人と会えるし美しい女性から美しくなるためのヒントを得られるかもしれない。受賞はおまけのようなもので参加することに意義があると感じた。
その後オーディションの雑誌を見ては写真と履歴書を出した。写真はコンパニオンのプロフィール書類で使うスタジオでヘアメイクをつけて撮影したものでこの時に写真を撮られるコツを教えてもらった。この時の経験が天狼院の秘めフォトなどでも役に立っている。
ミスコンテストやキャンペーンガール、芸能事務所の所属オーディションなど気になる募集には全て書類を出した。
不思議なことに落ち続けていると凹むことがなくなり「縁がなかった」と割り切って考えられるようになった。
この経験から仕事・恋愛・買い物に至るまで手に入れられなかったものは縁の問題だと考えられるようになった。今の人生にも役立つからそれだけでも得たものだと思う。
あるミスコンテストの国際大会は書類が通って一次審査となった。
会場に着くと普段の生活では出会えないスタイル抜群の美女ばかりだ。審査委員には芸能人がいて驚くばかりだった。前年には朝ドラのヒロインも出場していたらしい。
元々は陰キャだったため足がすくんだ。
一次面接では水着審査と自己PRだった。奇跡的に最終審査まで残った。最終審査はドレスを来て自己PRと審査員からの質疑応答だった。
どちらも出番は短く緊張のあまり声と足が震えたことしか記憶にない。
最後に発表があって「審査委員特別賞」のところで名前を呼ばれた。
幼少時はみにくいアヒルの「陰キャ」だった私がミスコンテストに受賞することができたのだ。
ミスや準ミスではなかったが私の身の丈に合った賞だと思った。もしここで優勝なんかしてしまったら天狗になっていたかもしれない。
最終審査まで受けて感じたのはルックスの優越ではなくコンテストを受けた動機と受賞したらやりたいことなどビジョンをきちんと持っているかを問われていた気がする。私は出ることに必死で明確なビジョンはなかったままだった。
また受付時から控室での態度も見られていたと思う。きれいな女性は周りにも優しいしマナーもきちんとしている。若いうちから内面の美しさは容姿に出るものなのだ。
大学卒業後はミスコンテストの経験を生かし国産自動車ショールームの専属コンパニオンの仕事に就いた。
思春期の夢が叶ったのだ。
その後の人生で出会った美しい人は皆上品で知的で優しく内面が素晴らしかった。
それにしてもみにくいあひるの陰キャだった私はよく頑張ったと思う。そして生まれつき美人にならなくてよかった気がする。元々の容姿が恵まれていたら案外つまらない大人になっていたかも知れない。外見にコンプレックスがある人の気持ちが痛いほど理解できるし、素敵な人はどんな生活をしているかの両方を見ることができた。
意外なところを褒めてくれた人たちにこの場を借りてお礼を言いたい。
一度しか会わなかった人も、ずっと友達でいてくれる人も。みんな本当にありがとう。
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