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隠れて生きたい安全運転派の私が、小劇場に立ったら、出しゃばり「暴走車」になった


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記事:大橋秀喜(ライティング・ゼミ 10月コース)
 
 
「目立たないように、ずっと人の影に隠れて生きたい」。
そう思っていた私は、「小劇場」の舞台に立つようになって、笑いを取れないと気が済まない出しゃばり「暴走車」になっていた。なぜだ。怖すぎる。実は小劇場には、そんな風に人を変える謎の魔力がある。なぜなら小劇場では、観客が「ガソリン」を供給してくれるからだ!
 
人の影に隠れて生きたい、と思ったことはあるだろうか?
授業や講座で、講師から指名されないように、できるだけ自分の前に人がいる場所を確保する。
飲み会や会食で、やたら話しかけられるのを防ぐため、静かな人たちが座ってる席の近くを確保する。
体育や部活のチーム分けで、1人で孤立して目立ってしまうことがないように、あらかじめ仲の良い友人とペアを組む。
などなど。私はずっと「目立っちゃうこと」を極力避けて、人生を「安全運転」で生きてきた。
 
 
そんな私を思いっきり変えたのが、小劇場との出会いだった。小劇場とは小さい劇場のこと。小規模の演劇自体を「小劇場」と呼ぶこともある。私がいわゆる小劇場で、初めて演劇を見たのは大学1年生。全く演劇経験がなかった私は、大学の演劇部がやっていた「新入生歓迎用の特別公演」で、何となく見ていた劇に人生最大の衝撃を受けた!
 
会場は数十人ほどしか入れない、小さなホール。まず役者と観客の距離が近すぎる。そして役者の熱量や、喜怒哀楽の感情が、客席までビンビンと伝わる面白さがある。感動して、迷わずにすぐに入部した。本当は役者に憧れていたが、ずっと人の影に隠れて生きてきた私は勇気を出せず、「裏方とか宣伝とかをやりたいです」と希望を伝えた。
 
大学1年の時、同級生や先輩とコメディの舞台に挑戦した。私は、裏方だった。本番の公演は、ものすごい爆笑の嵐に包まれた。同級生の役者たちが奮闘して、会場の観客たちを大笑いさせた。裏方の私は、そんな盛り上がる客席の後ろで、ただその姿を眺めていた。
 
「なんか、わかんないけれど、悔しいーーーーッ」。それが、率直な思いだった。
 
「もう、恥ずかしがってる場合じゃない」。
私も勇気を出して役者に立候補してみたら、たまたまチャンスがあり、私もコメディの舞台メンバーに混ぜてもらうことになった。そしてさらに勇気を出して、最初に舞台に立った時。自分の演技で客席にいた先輩部員が笑ってくれたことを今でも覚えている。
 
私がボケる、他の役者がツッコむ、すると観客が笑う。何だろう、このゾクゾクするような感覚。笑い声が聞こえるたびに、エネルギーを注入されているというか、ガソリンがどんどん注入されているような感覚なのだ。もっともっと走れよ、とみんなに後押しされているような感覚だったのだ。
 
すると、自信が持てるようになった。
 
小劇場の面白さは、この観客の声が「ダイレクト」に聞こえるぐらいの距離の近さだ。
そういう声が聞こえるから、役者の気持ちを温めたりする。これが遠すぎると、声が身近に感じられなくて、自分ごとにするのが難しい。小劇場の観客の声は「ガソリン」になり、やる気になり、走り続ける原動力になる。私が舞台に立った経験を振り返ると、実は客席で「誰が笑っているのか」って、意外と聞こえてしまうほど、距離が近いこともある。
 
「あ、今日はあの人の笑い声が聞こえるな」と舞台上で気づいちゃうこともあるのだ。
 
逆に、観客との距離が近すぎる弊害も、もちろんある。
客席ですごくダルそうにしている人、呆れたような顔をしている人、もはや寝ている人。実は結構見えている。こういう人をふと見つけてしまうと、一気に私の元気がなくなってしまう。私は心が折れるのが早いので、これらに遭遇するとすぐガス欠になってしまう。
 
舞台に立つ面白さを知ると、隠れて生きようとした陰キャはもう姿を消した。隠れて生きようとしてきた反動で、必死に笑いを取ろうと私が出しゃばりすぎて、注意されるようこともあった。
 
 
ノリノリにさせてくれる、そんな存在の大切さ。
これって、学校や職場でも、どんなことにも当てはまることだよな、と気付く。
例えば、小学校や中学校の教室も、実は「小劇場」だった。生徒がだるそうにしていたり、眠っていたりする授業の先生は、いつも怒ってイライラしている。しかし、生徒が面白がって興味を示したり、積極的に発言したりすると、先生もノリノリで教えてくれていた。あの光景も、生徒たちが先生に少しずつガソリンを入れていたんじゃないかと思う。例えば仕事のプレゼンも、聞き手の人にどんどん興味を持ってもらえたら、嬉しくてどんどんやる気になっちゃう。やる気にあふれて思わず暴走してしまう人もいる。
 
私は会社員として働いて6年目になった。大学卒業後、演劇の舞台にはもうしばらく立っていないが、私を変えてくれた小劇場にはいつも感謝をしている。
 
もしも、あなたが面白い演劇を見る機会があったら、もう思いっきり笑って、その笑い声を思い切り響かせてほしい。きっと、目の前で繰り広げられる演劇は、もっともっと面白くなると思う。
 
 
 
 
***
 
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2023-02-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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