子どもと遊ぶのがつらいあなたへ
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:平沼仁実(ライティング・ゼミ4月コース)
「おかあさん、あそぼー!」
子どもから言われる度、私は正直いつも、少しの抵抗感を感じる。
今、スマホ見てたところなんだけど……。
今、皿洗いやってたところなんだけどな……。
やっていることを中断して、待ったなしで子どものやりたいことに付き合う。
親ならば当然誰もがしていることだ。
むしろそうできないのは、親として失格だ。
そう言われているような気がして、子どもからの遊びの誘いに抵抗感を感じてしまう自分に後ろめたさがあった。
だけど親である私も一人の人間だ。
やりたいこととやるべきことの優先順位を考えながらこなしている時に、突然それを中断させられるのは心地の良いことではない。
しかも自分ではない、誰かの都合で。
やっていたことを中断して子どもと遊び始めても、さっきまでやっていたこと、やりたいこと、やるべきことが気にかかる。
隙をみてはそちらに戻ろうとする気持ちをずっと抱えながら、どこか心ここにあらずで片手間に、子どもの遊びにつき合っていた。
遊んでいる途中で、スマホをちょこちょこのぞく。
突然立ち上がって、皿洗いを再開する。
今思えばそれは、子どもにとって「遊びの世界」を突然中断させられることと同じだ。
しかも自分ではない、誰かの都合で。
世の中にはいろいろな親がいる。
自分のやりたいことを犠牲にしてでも、子どもに尽くす人。
犠牲とか尽くすなんていう考えすらなく、子ども優先の生活を自らすすんで選び、幸せを感じている人。
時々そういう「キラキラママ」に出会うけれど、私にはまぶしすぎて直視することができない。
何年たってもそんな親にはなれなくて、自分のやりたいこと優先で育児をしている。
そんな「落ちこぼれママ」である自分に、いつも劣等感と罪悪感を感じていた。
そんな私の気持ちが伝わっているのか、息子は私よりも夫と遊びたがる。
そのことに若干の寂しさを感じながらも、どこかで助かったと思っている自分がいた。
よく晴れた日曜日の朝。
いつものように夫と遊ぼうとしている息子と、少し疲れた様子の夫。
「おとうさんが、あそんでくれない!」
息子が泣きついてきた。
「公園に行こうか?」
さすがの私も覚悟を決め、息子を外に誘った。
「いく!」
嬉しそうに即答する息子とふたりで家を出た。
歩くこと数分。
いつもよく行く、家から一番近い公園に着いた。
着いた途端、息子が一直線に向かったのは砂場だ。
さっそく家から持ってきた「お砂場セット」からスコップを取り出すと、砂を掘り始めた。
「おみずとってこよう!」
バケツを持って、少し離れた水道まで水を汲みに行く。
いつの間にか息子は、ひとりで蛇口をひねることが出来るようになっていた。
バケツに水を入れて砂場へ戻ると、その水をじゃーっと一気に砂にかけた。
息子は泥をスコップで掘り続けている。
「泥だんご、作ろうかな」
急にそんな考えが思い浮かんだ自分に驚いた。
けれどいざやろうとすると、なんだかためらいを感じる。
手を汚したくない……。
そのためらいを勢いで「えいやっ!」と振り払って、思い切って泥に手を伸ばした。
ひんやりとした冷たさが手のひらに伝わる。
なんだか、気持ちいい。
素手で泥を触るのってこんなに気持ち良かったんだ。
さっきまでのためらいは、もう跡形もなくどこかへ消え去っていた。
すくった泥を両手で握り、丸めていく。
作ったおだんごは、サラサラと崩れてしまった。
今度はもう少し水をかけて作ってみよう。
気が付くと何個もの泥だんごが出来上がっていた。
きれいに並んだ泥だんごを見ていたら、幼い頃のことを思い出した。
幼稚園のジャングルジムの下にしゃがみこんで、泥だんごを作っていたこと。
湿った泥と、乾いた砂。その配分を工夫しながら、より崩れにくいおだんごを目指して何個も何個も夢中になって作ったこと。
作った泥だんごを並べておだんご屋さんを開いたこと。
あの頃と同じように、今まさに童心に帰って泥だんご作りに没頭していた。
その間、自分のやりたいこと、やるべきことなんて1ミリも頭をよぎらなかった。
もちろんスマホをのぞくことも一度もなかった。
心ここにあらずでも、片手間でもなく、目の前の「泥だんご作り」に夢中になっていた。
「ああなんか、楽しいかも!」
ふと時計を見るとお昼の時間が近づいていた。
「そろそろ帰ろうか?」
「うん!」
息子も満足そうな顔をしている。
家までの帰り道、私の気持ちも充実感に満ちていた。
これまでに何度も来ているこの公園で、こんなに楽しく子どもと遊んだのは初めてだ。
受け身でも強制でもなく、自らすすんで目の前の遊びに集中する。
子どもの遊びに付き合うのではなく、子どもと一緒に本気で遊ぶ。
すると奪われた時間は、自ら選んだ時間になる。
劣等感と罪悪感は、充実感に変わる。
週1回週末の1時間だけでもいい。
「この時間だけは」と決め、全力で集中して本気で遊ぶ。
私のような「落ちこぼれママ」でもそれくらいならできる。
さあ週末だ。
本気で遊ぼう!
***
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