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仕事机を選ぶのはやめなさい


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:塚本 牧生(ライティング・ゼミ6月コース)
 
 
在宅勤務になってしたことが二つある。一つは仕事用のイスを見直すことだ。名のあるオフィスチェアはけっこうな値段がする。でも適当なイスを使い続けた時期に腰や首を痛めてそれ以上の治療費を払ったから、それぐらいならイスに投資した方がずっといい。もう一つは仕事机を仕立てることだ。そう、自作するのだ。
 
仕事机を選ぶのはやめなさい。仕事机は作るのだ。
 
机を作るなんて考えたら、ハードルが高いのはよく分かる。でも本気で机選びを始めたら、それだってお財布的にハードルは高いのだ。仕事机に求めるものは人それぞれで、既製品でバッチリなの探すとすごい値段になっちゃって、じゃあフルオーダーかと言うとそれもすごい値段になっちゃう。
 
だから、作るという提案をさせてほしい。大丈夫、不器用で設計力イマイチでDIYのスキルのない僕でもできた。机を探し続けて、お手頃で満足いくものを見つけられずにいるうちに、あれ、これ僕でもなんとかなるぞ、と気づけちゃったのだ。そして作れちゃったのだ。5万円ぐらいで。一生使える机を。ポイントはたった一つ。
 
仕事机はメタルラックで作りなさい。
 
ここで「えー」としかめ面をしたなら、きっとメタルラックと聞いてイメージしたのがあれだからだろう。銀色のポールに、銀色の網棚。では「ルミナス ノワール デスク」と検索してほしい。きっと、ダークブラウンの木目天板に、引出せるスライドシェルフ、つやけしブラックに塗装されたポールの、落ち着いた机が表示されると思う。僕は最初これを見てこう思った。なにこれ、悪くないじゃん。
 
こんな天板があったっけ、と思った。こんな塗装のポールがあったっけ、と思った。足元は棚を入れず、代わりにコの字のバーを使うことで開口部を作っている。こんな部品があったっけ、と思った。あるのだ。DIYショップやセレクトショップでは見かけなかった品ぞろえだけど、メーカー直販サイトでは、そんな塗装のシリーズやそんな部品も売られていた。
 
インダストリアルな雰囲気にはなるけど、いかにもメタルラックという感じではない。部屋になじむ机らしい机が作れるのだ。
 
仕事机への悩みは、いま使っている机では、いつも仕事が捗らないな、という思いから始まった。例えば、ほとんどの仕事がメールやファイルで済むいまでも、たまに書類を印刷して署名押印といった作業がある。まず机の上を片付けて、書類を広げられる場所を作る。そんな時に、こう思う。
 
「おかしいなあ。こういう時のために広い机を使ってるはずなのに、なんでスペースが空いてないんだろう」
 
書類を出したころには、一仕事した気分になってしまう。ハンコ一つ押しただけなのに。もっと厄介なことに、次に同じような作業が必要になると「意外と大仕事なんだよな、メンドクサイな、ちょっと後にしようかな」と溜めこんでしまう。
 
あるいは進行中の仕事それぞれの状況をまとめているとき、ちょっと前の会議資料などを見直したいなと思う。机上の書類をひっくり返すけど出てこない。けっきょく書類棚に取りに行って、その間に集中力が途切れたりする。そんな時に、こう思う。
 
「おかしいなあ。机の上にちょっとだけどすぐ使いそうな書類は置いているのに、なんでいつも遠くに取りに行くことになるんだろう」
 
そんな悩みを裏返すと、僕にとって仕事が捗る机の姿が見えてくる。考えた結果は、ジャングルジムみたいな机だった。
 
まず座ったままで、手が届く「机の上」が広い。横長とか奥行きがあるとかじゃなくて、僕を囲むように机がU字とかL字に広がっているイメージ。「机の上」に書類とかカバンとか文具とかが置かれてない。でもすぐに手を伸ばせる机の下とか上に収納があって、書類とかカバンもたっぷりおいておける。文具は、机の外回りに低いパーティションがあって文具トレーをつけられるとよさそうだ。
 
簡単に絵にしながら考える。四隅というか、L字机だと五隅になるのだけど、そこに高く柱が通る。柱の上方に棚を付ける。棚を板にすると暗くなりそうだから、網棚だ。机の外回りのパーティションも、光を遮らないように、机上20㎝ぐらいのパンチングボード。机の天板の下には、カバンをかけられるハンガーバー。最終的には、真ん中にイスが収まって縦横にポールやプレートが組み合わさった、ケージとかジャングルジムみたいな絵になった。
 
こんなの、売ってない。既製品では、似たようなものも見つからない。オーダーしてしまうと、高くなりすぎる。じゃあ、作るのか? 僕に作れる気はしないけど?
 
そう悩んだときに見つけたのが、メタルラックで作るという選択肢だった。いろんなことが簡単になって、DIYのスキルがない僕でもなんとかなる。切断とか穴あけとか釘打ちとかの「元に戻せない」工程がなくて、組み上げるだけ。不器用でも問題ない。もし失敗したら、バラバラの状態に戻してやり直せるところもいい。設計も、既成のパーツを組み合わせるだけだから、細かい寸法とか強度とか考える必要がないのもいい。
 
「ジャングルジムみたいな机」の絵を、メーカー直販サイトにあるパーツで少しずつ置き換え、設計図らしきものにしていった。必要なパーツを表にして、値段を計算してみた。上で書いた「ルミナス ノワール デスク」などのセット品をベースにしたら値段を抑えられるかもと思った。実際にはこれは使えなかったけど、ワードローブのセット品2台分をベースにすると、5万円ぐらいに収まった。品物が届いてから3時間ほどで、一人で組み上げられた。
 
これを作ってから、1年ぐらい使ってきた。仕事はもうよそでしたくないと思うぐらいに、役立っている。そしてこの机は一生ものだ。
 
そう言えるぐらい頑丈だし便利。でもそれだけじゃない。生活が変わるとき、例えば模様替えをするなら、解体して細いドアや通路を通って別の部屋に移せる。引越しなら、解体して輸送できる。作業スタイルが変わったら、好きに組み替えられる。必要なものが「ジャングルジムみたいな机」じゃなくなったら、例えば普通の机一つと棚一つに分けて使うことだってできる。この机は、僕のこれからの変化にも合わせてくれる。
 
仕事机を選ぶのはやめなさい。もう何年か働いてきた人ならば、仕事スタイルも固まってきて、自分にどんな机が必要か考えられると思う。それは僕に必要だった机とはきっと違うし、多くの人がまあまあだというような既製品ともきっと違うと思う。そうなったら、仕事机は作るのだ。いまの自分にジャストフィットして、一生の仕事に寄り添ってくれる机が、DIYのスキルがなくても5万円ぐらいで作れたりするのだから。
 
 
 
 
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2023-07-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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