大人の本気の学園祭
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:酒井裕司(ライティング・ゼミ6月コース)
「発表会当日まであと2ヶ月です。プログラム構成から、役割分担、集客、さまざまなものの手配、そして当日の運営まで、すべて自分たちで行っていただきます」
なんということだろうか。
プログラム構成を考えることはおろか、集客や当日の運営までもやらなければいけないことになるとは。
とある資格取得のために半年間の講座に通っていた。最終回はこれまで自分たちが学んできたことを5分間にまとめて発表する発表会ということは、講座がスタートする時にも説明があったので認識はしていたものの、すべて自分たちでやらなければならないということは、まったく想定していなかった。
講師からの趣旨説明では、資格を取得して講師として活躍する際には、講座の内容はもちろんのこと、集客、集金、受講後のフォローアップなどなどを自分でやらなければいけないので、そのための練習の場を提供しました、とのこと。
なるほど、そういうことね! と納得はしつつ、上手く言いくるめられたような気もしつつ、やらないことには自分たちの新しい道は開けない、ということであれば、やるだけである。
幸いにして、この講座の参加者は35名ほど、ほぼすべての方が企業経営者や団体の代表などの重職を担っており、意思決定することには慣れている人たちばかりであった。
したがって、前述の趣旨説明から30分後には、リーダーが決まり、必要な役割が洗い出され、翌週から定例ミーティングが設定され(なんと毎週月曜日の朝7時!)、議事録が作成されて共有された。
私も小さい会社を経営する身ではあるが、こんなスピード感あふれる物事の進行は久しぶりだ。最初に抱いた「なんで?」という感情は、「なんか面白いことになってきた!」にすっかり変わっていた。
開催日時は決まっているため、とにもかくにも聴講者を集めなくてはいけない。お知らせする対象は2,000人近くいるものの、一体どれだけの人が呼べるのかは全くの未知数だった。したがって、ひとまず会場参加とオンライン参加、合わせて50名を目標にしましょう、ということで動き出した。
「チラシはどうします?」
「それなら僕がつくりますよ。記載内容だけ誰かまとめてくれませんか?」
デザイン専門誌にも取り上げられるほどの実力を持ったデザイナーが、即座に応える。
「せっかくなら、発表者は全員統一されたデザインフォーマットを使って発表資料をつくると見栄えが良いと思いませんか?」
私が好き勝手な提案をしても、
「良いですね、ではそのデザインテンプレートもつくりますね」
先のデザイナーが応じる。
「申し込みフォームが必要ですが、どうしましょうか?」
「以前にも似たイベントでつくったことがあるので、私がやりますね」
観光コーディネーターとして各地でイベントを手掛けている女性が手を挙げる。
そんな具合に、トントン拍子に準備は進み、1週間後には立派なチラシが出来上がった。それをもって、それぞれが広報活動に奔走した。
「今日は5名申し込みがありました!」
「今日は12名申し込みがありました!」
あれよあれよという間に、申込者は50名を超え、次の目標を100名にした。
「さすがにそこまでは行かないでしょうね」
定例ミーティングではそんな意見も出ていたが、50名まであっという間に集めることができたという成功体験は、100名でも頑張ればいけるかも、というある種の自信と余裕すら生み出していた。
そして開催3日前、申込者はついに130名を超えた。
それぞれが作成を進めている発表資料も、フォーマットを揃えたため、必ずしもデザイン能力に長けたわけではない20名がバラバラにつくったとは思えないほど統一された完成度の高いものになっていた。
明日の本番が楽しみですね! 前日に開催された定例ミーティングでもそのような声が出てくるなか、一人私は、このままではマズいなと不安でいっぱいだった。
不覚にも風邪により喉が潰れてほとんど声が出なくなっていたのだ。仮に話せたとしてもすぐに咳き込んでしまう有り様だった。
私の役回りは司会ということもあり、ドタキャンすることだけは避けたいとの思いで、知り合いのアナウンサーに連絡を取り、こういった状況に陥った時のための対処法(メープルシロップでうがいをしたり、蜂蜜とレモンで飲み薬をつくったり)を教えてもらって、なんとか当日は乗り切った。
結局、無料のイベントだったにもかかわらず参加率も高く、発表者それぞれの内容も素晴らしく、講師からは「今までで一番充実した発表会でした」との講評もいただき、大盛況で幕を閉じた。
その日の夜、打ち上げの席で今回大活躍だったデザイナーが、興奮気味に口にした。
「学生時代は、機会に恵まれず、自分たちの手で何かイベントをつくりあげるという経験ができなかったので、とても新鮮だったし、楽しかったですね。まるで大人が本気で取り組んだ学園祭のようでしたね」
これを聞いた時にハッと気が付いた。
なるほど、人がやりがいを持って能力を発揮するということはこういうことなのかもしれないと。
1分1秒をムダにしたくない忙しい人たちが、金銭的報酬がないにもかかわらず、こんなに真剣に一つのイベントに取り組んだということは、地位のあるなしにかかわらず、自分の才能を認められることは嬉しいということ、そして、それをアウトプットする機会を欲しているということ、なのではないかとも思える。
組織が一体となって価値を生み出すために必要な、とても大切なキモを身をもって体験できた貴重な機会であった。
***
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