祝! 慈愛に満ちた空間でお金のブロックは外れた
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:パナ子(ライティング実践教室)
まだ寒さ厳しい一月の下旬、思いがけない依頼が入った。
新卒で入った会社で一緒に働いた同期で、今も交流のある友人からだった。
久しぶりに電話を掛けてきた彼女は、少しの世間話のあと、こう言った。
「仕事用のチラシを作ってほしい。もちろん有償で」
驚いた。
いいの? とも思った。
仕事としてそれを請け負えるようなプロではないし、もちろんチラシ作成の実績もない。
彼女はゼミに通いながら書いている私のエッセイを、好いていてくれる貴重な人物でもある。合格になった記事を送ると丁寧な感想をくれたあと、彼女はいつもこう言ってくれた。
「新作書いたら、また読ませてね」
彼女によると、仕事でお世話になっている司法書士の先生のところでチラシを置いてもらえることになったのだが、どうやったらいいかわからないので助けてほしいという。私の文章を活かして作りたいとまで言ってくれるではないか。
嬉しかった。
と、同時に不安も襲ってきた。
果たして、彼女の思いをカタチにしてあげることが出来るだろうか。
どういったものを求めているのか詳細を聞くうちに、私には手に入れたばかりの武器があることを思い出した。それがcanva(キャンバ)だった。
canvaはオースラリア発の画像デザインソフトで、初心者でも使いやすく何でもわりかし簡単に作る事ができる。ブログ画像やYouTubeのサムネイル画像、SNSのプロフィール画像など日常でよく目にするそれらがcanvaで作られていることも多い。
昨年の秋に、周囲の浸透率が急上昇したのを見て「苦手などと言っている場合ではない」と通信受講したcanvaが、今になってこんな形で活きてくるとは思わなかった。
受話器の向こうの彼女が迷える子羊のように感じて、不思議と力が湧いてくる。
いつも明るく前向きな発言で私を応援してくれていた彼女の力になれるのなら、ぜひとも協力したい。
私は決意と覚悟を持ってこう伝えた。
「わかった。是非やらせてください。今出せるもの全てを出して作ってみる!」
数日後、彼女からプロフィールなどが送られてきた。
試合開始だ! ゴングが鳴り、私はパソコンの前で腕まくりをした。
まだ使い慣れないcanvaとにらめっこしながら、まずは使えそうなテンプレートを探した。
私にとって史上初のクライアントである彼女の事をとにかく思いながら作業を進める。彼女のことばっかり考えていたらなんだか恋してるみたいな気持ちになってきた。有り余るほどの技術はまだないけれど、熱量では負けてなかった。大好きな彼女が「いい!」と思ってくれるものを作りたい。ただそれだけだった。
試行錯誤の末、2パターンのチラシ原案が出来上がった。
ここからが問題だった。
相手の反応を見るのが、とてつもなく怖い。
ドキドキしながら原案を送る。
「初めてでご期待に添えているかわからないので、修正はもちろん、想像していたのと全然違う……など何でも遠慮なく言ってください。○○ちゃんの納得する仕上がりにしたいと思っています!」
既読、がついた。
ドキドキ! 彼女は一体これらの作品をどう受け止めてくれるのだろうか。
数分後、画像を確認してくれた様子の彼女から返信が来た。
「想像以上のクオリティに感激しました! ありがとう!」
心底安堵した。彼女の仕事の手助けが少しでもできたのかと思うと嬉しかった。
しかし、もう一つの問題がまだ残っていた。
報酬だ。
この話を受ける際、彼女は言った。
「もちろん有償で……と言っても友達同士で現金のやりとりが気まずかったら、高級ランチをごちそうさせてもらうとかでもいいのかなと思って」
作業を終えて、作品を納得してもらえていると感じた今、私には新たな気持ちが沸き起こっていた。もし、可能であるならば、報酬を現金として頂きたい。そこにはれっきとした理由があった。
「高級ランチの件、お気持ちはとてもありがたいです。ただ、今後の夢・野望として、クリエイティブな事でプロを目指したいというのがあるので、この案件を皮切りに一歩進んだと思えるよう報酬を現金で頂けるとめちゃくちゃ嬉しいです!」
ものすごく緊張しながら、でも確かに感じる素直な気持ちをメールにしたためた。
2案を見て気に入った彼女が別途注文してくれたのも合わせて全部で3案。
金額の設定がわからなすぎるので、実務労働的なことを考えると1案2,000円~2,500円で打診した。
彼女からの返信を待つ間、こんな事を言って大丈夫だったろうかとの思いが頭の中をグルグルした。
待つこと40分。彼女から返信がきた! メールを開く手が若干震える。
「こんなに本格的に作り込んで頂いたので、どうしたものかと思っていました! 今回は全て合わせて一万円でいかがですか?」
えーっ! 私の提示した金額を大幅に越えてきている!! 嬉しい……。
静かに1人歓喜していると頭の上でくす玉が割れた。
祝! 願望成就!! という垂れ幕が勢いよく飛び出した。
脳内の隅っこからは、ミニ諭吉たちがワァー! と大勢走ってきて私を胴上げし始めた。わーっしょい! わーっしょい!
なぜこんなにも嬉しいのだろう。もちろん無職の私が一万円を手にしたというのは大きい。しかし、感情の揺れはそんなことを言ってなかった。
彼女をただ思い仕上げた作品と、私を思いそれを希望以上の形で返してくれた事実が、慈愛に満ちた空間で温かく存在していた。
この出来事は、友情を再確認すると共に、更にはお金のブロックも外してくれた。
今までは「私のような者が」とか「上には上がいる」とか「自分はまだまだ」という一見謙虚にもとれる恐怖のようなものが確かにあった。
しかし、今回有償でやらせてもらえた事で、一生懸命やって、相手が喜んでくれる仕事ができたら、堂々と、ありがたく、お金を頂戴してもよいのだと体感した。
これからまだ最終の打ち合わせが残っている。彼女が誠実な人だということが伝わるよう詳細にもこだわって仕上げていきたい。
そして、チャレンジの機会と自信を与えてくれた彼女には感謝しかない。
***
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