何を言うかじゃない、誰が言うかだ
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:吉田珠翠 (ライティング・ゼミ6月コース)
人を説得するためには何を言うかじゃなく誰が言うのかが大事だ、と身に染みた、私の経験談を書く。
もう20年以上前の話だが、私が新入社員として入社した会社は研修施設があり、近所にある女性専用の寮に私は入った。寮は、一般マンションの2LDKのような部屋だ。
私は新人研修を受けその後、システム部に配属された。
システム部は研修施設と同じ建物のため私は、そのまま女性寮から通うことになった。
システム部に配属されて3か月ほどたった頃、人事部から通達があった。研修施設で開催される、定期通常研修を受けるために日本全国にいる女性社員が、女性寮の私が使っている部屋の空き部屋に随時泊まるという。
しかし、これが問題だった。いつ、誰が泊まるのか、何泊するのか? 人事部から全く連絡がないのだ。
この部屋は私と人事部が鍵を持っていて、人事部から研修受講の女性に鍵を渡す運用になっていた。
私は仕事で疲れて寮の部屋に帰宅すると、知らない人がビール片手にテレビを見て寛いでいることもあった。私はびっくりした。あなたは誰ですか?いつまでいるのですか?
女性専用の寮とはいえ、寮内の部屋はプライベートな場所である。そこに知らない人が部屋にいて寛いでいる。そんな運用では、自分が落ち着くはずがない。
また、隣の部屋に住んでいる同期の女性は、こんな経験をしていた。
「ねぇ、聞いてよ。昨日帰宅したら受講者が、勝手に冷蔵庫を開けてメロンを食べていたのよ! 実家のお母さんから送ってきてくれた大切なメロンを食べられた!」
彼女は怒り心頭で、私に不満をぶつけていた。
確かに変だ。研修で連泊する人は途中、洗濯も行う。その際の洗剤は私たちの私物なのだ。他にも、茶碗やタオル類などの生活必需品は全て自分たちの物だ。
寮の会社支給は、部屋と必要な家電、水道光熱費のみで、毎日の生活必需品は自分たちで揃えなければならなかった。
それを、会社の同僚とはいえ、知らない人が勝手に使っていいのか? 私は疑問を持った。
翌日、人事部に電話で抗議したが、満足いく回答が得られなかった。
配属された直属の上司にも改善するように話をしたが、上司も人事部に掛け合ってくれず、うやむやにされた。
この会社はもしかしてブラック企業? 私は、会社に不信感を持つようになっていた。
悶々と日々を過ごしていたある日、本部から労働組合の委員長という人が挨拶に来た。私は初対面だったが、その日の夜に委員長との懇親会があるので、私も参加した。
初めて委員長と話したがとても話しやすい人だ。お酒も軽く入ったため、私は女性寮に対する不満を委員長に話した。
委員長は、私の話を真剣に聞いてくれ、とても重要な話かのように受け止めてくれた。委員長の聞く姿勢だけで、私は救われた思いになった。
懇親会の次の日の午後1時、「女性寮に住んでいる皆様へ」というメールが人事部から届いた。
研修に来る女性を、私たちが住んでいる寮に宿泊することを即日中止する、という内容だった。
私はびっくりした。昨晩、組合の委員長に愚痴のように話した内容なのに、委員長は人事部に交渉してくれたのだ。
しかも即日中止とのことだ。人事部は今の状況に問題ありと判断してくれた。
もう、知らない人が私の部屋にいることはない。仕事で帰宅した時、誰かがテレビを見ていたり、お風呂に入っていることにびっくりする必要もないのだ。
私は、心から安心した。これで気持ちよく生活できる!
その夜、一人の空間を堪能しながら、私は考えた。
私が、人事部や上司に言っても聞いてくれなかった。しかし、労働組合の委員長が言うと、すぐに人事部は動いたのだ。
これは一体、どういう事なのだろう? 考えた末、重要なポイントはこうではないかと結論づけた。
「何を言うかじゃない、誰が言うかだ」
もちろん、言い方もとても大事だと思う。だが今回は、「誰が言うか」が重要な要素の一つである、ということだ。
例えば、仕事で悩んでいる人がいたとする。同僚から「〇〇だから大丈夫」と励ますのと、渋沢栄一が「〇〇だから大丈夫」と励ますのとではどうだろうか。
多くの人は、渋沢栄一から言われると、強く心に残るのではないだろうか。
この差は、同じ言葉だとしても重みが違うのだ。なぜ、重みが変わるのだろうか。
「誰が言うか」は、立場も踏まえたその人そのものを評価していることになる。今回の私の体験では、労働組合の委員長という、経営者と同等の強い力を持っている人物だ。
その立場が全て、と言いたい訳ではない。その人は大変な努力をし、多くの人からの評価があるからこそ、その立場を担っているのだ。
その人の背景があるから、一般人と同じセリフを言ったとしても、相手の受け止め方が変わるのである。
「誰が言うか」は、その人を表している、といっても過言ではない。言葉の背景にある、その人となりを皆は見ていて、その重みを感じているのである。
***
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